買ってはいけない中古住宅とは?土地や建物など確認すべきポイントを専門家が解説

公開日 2024年10月07日

買ってはいけない中古住宅とは?土地や建物など確認すべきポイントを専門家が解説

中古の一戸建て住宅(以降、中古住宅)は、立地や築年数はもちろんのこと、建物の状態や土地の状況などスペックはさまざま。見た目がキレイで造りもしっかりしているようだからと簡単には判断できません。

そこで本記事では、中古住宅を購入する前に確認しておきたい「買ってはいけない」ポイントを項目別に解説。

ホームインスペクター(住宅診断士)で災害リスクに詳しい田村啓さんと、不動産仲介エージェントでマンション管理コンサルタントも務める佐藤健斗さんの知見やアドバイスを交えながら紹介します。

この土地は大丈夫? 買ってはいけない中古住宅の特徴

不動産の取り引きのイメージ
買ってはいけない中古住宅の特徴とは(画像/PIXTA)

中古住宅を購入する際の決め手となる条件の1つが土地の状況です。いくら立地条件がよくても、その土地が問題を抱えている場合があるので、事前にしっかりと確認しておくことが必要です。
では、どのようなことに注意すればよいのかいくつかの事例で紹介しましょう。

災害リスクが高い土地の中古住宅

自然災害が発生したときの土地や地域のリスクを事前に知ることは必須事項です。

国土交通省「ハザードマップポータルサイト」で購入候補地の住所を入力すれば、洪水・土砂災害、高波、津波の災害リスクや危険度、対策について確認できます。

「災害リスクを大きく分けると水害と土砂災害の2種類になります。
台風による洪水や地震による津波で建物が浸水することはないかと水害に注目が集まりますが、土砂崩れや地滑りなど土砂災害の警戒区域に指定されていないかの確認も重要です。
都道府県や市区町村のハザードマップ、災害リスクだけではなく不動産に関連する情報も確認できる『不動産情報ライブラリ』、防災アプリなどもあるので、複数の情報でチェックすることがおすすめです」(佐藤さん)

「高低差がある土地や傾斜地に立つ住宅には擁壁がありますが、耐用年数があり経年劣化するので古いものはつくり替える必要がありコストがかかることを覚えておきましょう」(田村さん)

2020年8月から不動産取引の契約前に行う「重要事項説明」の対象に、これまでの土砂災害や津波災害に加えて洪水や高潮などの水害リスクも入りましたが、契約間際のギリギリになってから伝えられる場合もあるので、自己防衛策として事前に調べておきましょう。

また、土地の歴史「地歴」を確認することも大切だと田村さんは教えてくれました。

「耐震性に大きく影響する地盤は重要です。田んぼや沼、川を埋めた跡地に家が建てられたケースもあるので、『今昔マップ』で昔と現在の状況を比較して確認しておきたいですね」(田村さん)

再建築不可の土地の中古住宅

「わけあり物件」という言葉を時折聞きますが、再建築不可物件もその1つです。

都市計画区域と準都市計画区域内で適用される建築基準法では「接道義務」が設けられ、幅員4m以上の道路に2m以上接していないと建物の建て替えができません。

再建築不可物件は、一般的に相場より購入費用を抑えられますが、建て替えができない大きなデメリットがあるので慎重に検討しましょう。

「再建築不可はその原因を排除することで、再建築が可能となるケースもありますが、その原因の排除は難しいことが多く、資産性や流通性が低くなりがちなので注意が必要です」(佐藤さん)

境界線があやふやな土地の中古住宅

建物を囲むようなブロック塀や外壁が隣地との境界線だとは限りません。
隣家とのトラブルを避けるためにも境界線を不動産会社に確認。必要に応じて地積測量図などを入手しましょう。

ただし、境界線が明確ではない場合もあるので、その際は売買契約の前に土地家屋調査士に調査を依頼して、正確な境界線を把握することが望ましい場合もあります。

「境界線に加えて、私道接道の物件である場合は私道の権利関係の確認も併せて行いましょう。
例えば、建て替えなどで上下水道の入れ替え工事を行う際、私道に配管を通すために掘削を行う必要に駆られることがあります。
私道の所有者に通行・掘削承諾を得る必要がありますが、権利関係によっては得られないケースもあるので、私道の持分や権利関係は事前にしっかりと把握しておくことが重要です」(佐藤さん)

周辺環境に課題がありそうな中古住宅

土地や建物だけでなく、日常生活を快適に過ごすためには周辺環境の確認も欠かせません。
家族構成やライフスタイルなどで中古住宅に求める内容はさまざまですが、自分たちが安心して暮らすために必要な要素を考えて、周辺に課題がないか確認しましょう。

「繁華街に近いと騒音やゴミなど問題が起こることもありますが、一方で繁華街は駅に近い場合が多く、資産性の観点だけで見ると有利である場合もありますので、不動産を購入する目的に応じて、エリアなども検討することが大切です」(佐藤さん)

「お子さんがいらっしゃる世帯では、周辺の安全性を確認することが重要です。しかし、事故が発生していなから道路が安全とは決めつけられません。実際に時間帯を変えながら歩いて本当に暮らしやすい場所なのか身をもって確認する必要があります」(田村さん)

この建物は大丈夫? 買ってはいけない中古住宅の特徴

不動産売却のイメージ
買ってはいけない中古住宅の特徴(画像/PIXTA)

「購入した後に家の傾きに気づいた」というような、見た目はではわからない建物の問題が潜んでいることがあります。

そこで、建物の状態を把握して購入時のリスクを軽減するために必要不可欠な項目をまとめてみました。

構造の問題やメンテナンスをしていない中古住宅

基礎のひび割れや傾き、屋根や外壁の損傷や雨漏り、床下や水まわりのシロアリ被害などがあると、建物の強度や安全性を著しく低下させて日常生活に支障を来たす可能性があります。

また、構造上に問題がある中古住宅は住宅ローンの審査が通りにくい場合も。さらに、購入後に高額な修繕費用が必要になってしまうこともあるので詳細な事前確認が重要です。

「事前の確認で重要なのが、傾きなどの構造と雨漏りや漏水などの水まわり、シロアリ被害の3点です。なかでも弊社が行ったホームインスペクションの例で言うと、おおよそ20~25%の確率で雨漏りと思われる雨染みが見つかっています」(田村さん)

「シロアリと雨漏りは密接な関係があります。在来種のシロアリは湿った木を食べるので、家の中の雨漏りに気づかないまま放置しているとシロアリの発生リスクが上がり、建物の構造そのものに大きな被害を与えてしまいます」(佐藤さん)

「中古住宅であっても増改築やリフォームを行って建物の安全性を高めている場合があるので、新築時の図面やリフォームの履歴が残っていないか確認してください。

売主が買主に中古住宅の状況を説明する告知書(物件状況報告書)を契約前に提示することがありますが、売主が気づいていないこともありすべての情報が記載されているとは限りません。
ホームインスペクターに相談してみるのもおすすめです」(田村さん)

「築15~20年の中古住宅は、多くの設備機器や外壁の耐用年数が切れているタイミング。リフォームの履歴で設備機器の更新や改修が行われていない場合は、購入後に想像以上の費用が必要になる場合があるので注意が必要です」(佐藤さん)

旧耐震基準の中古住宅

自然災害の中で予測が難しい地震に対する耐震性能は、中古住宅を選ぶ際の重要事項です。
そこで、建物の耐震基準の変遷と改訂内容を押さえておきましょう。

  • 旧耐震基準(1950年~1981年5月31日)
    震度5程度の中規模地震で倒壊しないことを目標した基準で、大規模地震に対する基準は設けられていない。
  • 新耐震基準(1981年6月1日~2000年5月31日)
    震度5程度の中規模地震で損傷せず、震度6強~7程度の大規模地震で倒壊・崩壊しないことを目標した基準。必要壁量が旧耐震基準の約1.5倍に増加した。
  • 現行の耐震基準(2000年6月1日~現在)
    阪神・淡路大震災を受けて、木造住宅の耐震基準がさらに強化。
    2000年基準とも呼ばれ、地盤に応じた基礎設計、接合部や床の剛性を強化、耐力壁のバランス改善など、多くの項目で耐震性を高めた基準に改定された。

しかし、旧耐震基準であってもリフォームなどにより耐震性を高めている場合もある一方で、新耐震基準や現行の耐震基準の期間に新築されたものであっても、建物の状況を明確に把握することが大切です。

「能登半島地震(最大震度7、マグニチュード7.6)のときに注目を集めましたが、新耐震基準の建物でも倒壊など多くの被害が出ました。
新耐震基準の期間に新築された建物であっても、耐震性能が低い建物の可能性もあるのです」(田村さん)

専門家によるホームインスペクションで中古住宅を検討する

建物の状況を把握することは重要ですが、より正確に知るためにはホームインスペクター(住宅診断士)に調査を依頼することがおすすめです。

専門家の目線で劣化状況などの問題点や修繕カ所について適切なアドバイスをもらうことで安心した中古住宅の購入につながります。

では、ホームインスペクションを行うと、どのようなことが明確になるのでしょうか。ホームインスペクター(住宅診断士)の田村さんに聞いてみました。

「基本的な調査は、宅地建物取引業法に規定された建物状況調査(約40程度の調査項目)に加えて、全室での傾斜確認、水漏れなどの設備確認を行います。

また瑕疵保険の適合検査や【フラット35】の適合検査(要事前相談)についても実施可能です。

調査結果に基づいて、補修やリフォームが必要な箇所についてのアドバイスもさせていただきます。

また、オプションで床下や屋根裏の詳細な調査も行っています。予算は基本調査が6万円、詳細な調査を行うと10~12万円程度(いずれも税抜)が目安になります」(田村さん)

「厳密には売買の決済が済むまでは売主が所有者なので、ホームインスペクションを行うには許可が必要です。許可が出れば契約前でも調査が可能ですが、あくまでも売主の判断になります。

しかし、買主が所有者になった後でもホームインスペクションは重要です。
もし、契約内容に適合しない床の傾きや雨漏りシロアリの害などが見つかった場合は、売主が買主に対して負う責任である、契約不適合責任が認められることがあるからです」(佐藤さん)

ほかにも注意が必要! 中古住宅を購入する際に見るべきポイント

虫眼鏡と不動産の模型
中古住宅を購入する際に見るべきポイントとは(画像/PIXTA)

では、土地や建物以外で中古住宅を購入する前にチェックしておくべきポイントはなにか。視野を広げて周囲の環境についてまとめてみました。

交通のアクセス

通勤や通学で利用する最寄り駅までの距離や交通手段の利便性は重要なポイントです。

ただし、いくら駅に近くてもラッシュ時の電車が満員状態で、次の電車を待つようなことがあると疲労やストレスが溜まります。

最寄駅までの距離や時間、朝夕の混雑状況は実際に歩いて、駅のホームに立って事前に確認しておきましょう。

また、駅までの距離に関係なく車の運転はしないからと、駐車場のない中古住宅を選んでしまうと後で問題が起こる場合があるようです。

「駐車場の有無は資産価値や競合性に影響を与える可能性があります。
特に最寄り駅から15分以上離れている郊外の住宅で駐車場がないと需要が減り、売却する際に困ることがあります」(佐藤さん)

「道路の話でいえば、昭和の時代に国や自治体が決めた都市計画道路が年月を経て動き出すことがあります。
都市計画道路に該当している場合は建物を後退させるセットバックが求められ、近くの住宅であれば大きな道路ができることで生活に支障が起きる場合があるので、念のために調べておくと安心できます」(田村さん)

生活環境

コンビニやスーパー、学校、病院、金融機関など、生活に必要な施設が近くにあると安心して過ごすことができます。

歩いて移動するか、車を利用するかによりますが、周辺の生活環境を確認するときは実際の生活をイメージしながら行うのがおすすめです。

「生活の利便性はとても大切ですが、どのような家並みが続く地域なのかも確認が必要です。

例えば、木造の住宅密集地(木造住宅密集地域)は地震が起きたときに火災に巻き込まれる可能性が高く、建物が倒壊すると避難が難しくなります。買い物のルートと併せて、避難路もチェックしておきましょう」(田村さん)

時間帯別の交通量

人の流れや交通量は時間帯で大きく変わります。
近くの道路で渋滞が起きていないか、通学路にどの程度の車が走っているのか、夜に歩いて帰る道の人通りや街灯は明るいか。

事故や事件につながる可能性もあるので、曜日や時間帯を変えての確認が必要です。交通事故や犯罪情報は、警視庁や各都道府県警察の「事件事故発生マップ」でチェックできます。

騒音

ご近所との騒音トラブルはニュースなどで紹介されますが、周囲の施設から日常的に発生する騒音にも注意が必要です。

中古住宅がある地域に幹線道路や線路、工場などがないか。地図上でも調べられますが、騒音はわからないので実際に現地で確認しましょう。

「不動産チラシに書かれていますが、周辺にどのような施設があるのかは住宅がある場所の用途地域を確認すればある程度わかります。

しかし、今現在閑静な住宅街である第一種低層住居専用地域でも、十数年後に人口が減りお店が建てられないと生活の利便性が損なわれ、資産価値が下がって売却しづらくなることもあり得ます。

ライフスタイルやライフプランを踏まえた上で購入する場所を考えたいですね」(田村さん)

田村さんが教えてくれた主な用途地域と注意するポイントは以下のとおりです。

  • 第一種低層住居専用地域:都会の賑やかさから距離を置いた閑静な住宅街
  • 第二種低層住居専用地域:店舗や飲食店があり、静かさと便利さのバランスがよい地域
  • 準工業地域:工場と住宅が混在するため、騒音などに注意が必要
  • 近隣商業地域・商業地域:賑やかで便利ですが、騒音や人通りが多い可能性があります

買って後悔した!中古住宅の購入事例

不動産の契約のイメージ
不動産の購入は後悔しないようにしたい(画像/PIXTA)

最後は、購入後に後悔しないために聞いておきたい、実際に買って後悔した事例を田村さんと佐藤さんに教えてもらいました。

事例1. 少しだけ後悔したけど、我慢・改善して住み続けている

「後悔するレベルはさまざまですが、住みはじめてわかる想定外な出来事が多くあります。
例えば、考えていたリフォームができなかった。思った以上に虫が出る。想像以上に暑い・寒いなどです。

ただ、これらは我慢の限度を超えるものではないので、改善することで住み続けている方が多いですね」(田村さん)

事例2. メンテナンスコストがかかりすぎて後悔している

「建物のメンテナンスコストを度外視して購入された方からの相談を何度か受けたことがあります。
どれをどこまでメンテナンスすべきかといった相談内容ですが、外壁修繕や給湯器の入れ替えなど思った以上の高額出費で後悔先に立たずの結果になりました」(佐藤さん)

事例3. お隣さんが大迷惑を引き起こす人だった

「嫌気が差して売りたいと考えている方は、日常生活に関連することが多いと思います。

例えば、隣家の人が頻繁に大きな騒音を出して迷惑しているなど、騒音トラブルはよく耳にします。
こうしたトラブルは住んでみないとわからない問題ですが、建物の防音性能や夜間や休日に騒音を確認するなど、事前のチェックが必要かもしれません」(田村さん)

事例4. シロアリの発生で裁判に発展

「購入した後に、従前からシロアリが発生していることを発見しました。契約不適合責任の対象範囲であるものの、買主からの修補請求を売主が不服として、裁判を起こした事例もありました。
シロアリの駆除は非常に困難であるため、とても苦労されていました」(佐藤さん)

買ってはいけない中古住宅の特徴について、土地や建物に分けて解説をしてきました。
今回紹介した内容を基に、後悔のない中古住宅の購入を目指すようにしましょう。

まとめ

中古住宅の土地の確認は、災害リスクや建て替えに関する規制、立地条件の確認が必須

中古住宅の建物の確認は、構造の問題やメンテナンスコスト、耐震基準を詳細にチェック

その他に確認すべきポイントは、アクセス、生活環境、騒音など日常生活に影響する課題の有無を確認

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