千歳烏山駅を降りたところで、蹲(うずくま)っている若い女性を見つけた。声をかけてみるが、歩けそうにない。一緒にいる友人と相談し、取り敢えず病院に連れて行くことにした。
その夜、我々は車で軽井沢に行く予定だった。女性のことは友人に任せ、先に他のメンバーが待ついつもの喫茶店に向かった。
遅いなと思った頃、友人が戻ってきた。女性は妊娠していた。無事出産したそうだ。
もう30年も前のことになる。今なら、ただ助けただけの赤の他人に出産のことなど明かさないだろう。
その時の赤ん坊はもう30歳になるはずだ。久しぶりに千歳烏山のホームに降りたからか、急に当時のことを思い出した。
その夜、我々は予定より遅く出発した。件の友人は激しくショックを受けており、環八かどこかの大きな交差点で赤信号に気づかず、そのままつっこんだ。夜遅かったこともあり、奇跡的に事故にはならなかったが、肝を冷やした我々は強制的にドライバーを交代させた。
確か、この時の軽井沢行きは別荘に放置されていたチェリーを取りに行くためだった。当時の中古価格でも、数万円で買えるくらいボロボロのチェリー。車の中で、「このチェリー、俺たちが今聴いている聖子ちゃんのレコード代合計より安いんだぜ」と何度も笑いあった。
(2016年2月24日のFacebook投稿から転載)