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三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社
データサイエンス部 リードエンジニア
山内俊志さん
2007年新卒入社。インターネットバンキングなど銀行システムの基盤開発・保守に従事。その後、海外大学院への留学を経て、21年に現部署に着任
【PR】 ITニュース
2010年代初頭のビッグデータブーム時には「21世紀で最もセクシーな職業」と称されていたデータサイエンティスト。ただ生成AIによるデータ分析の自動化が急速に進む今、「データサイエンティストの存在価値」を問う声が広がっている。
この状況を、データサイエンスの最前線で活躍する専門家はどう考えているのか。その疑問を明らかにすべく、国内有数のビッグデータを保持し、金融業界のデータ分析をリードする三菱UFJインフォメーションテクノロジー(以下、MUIT)にインタビューを実施。同社のデータ分析部門を率い、全社的なAI施策を主導する山内俊志さんは、この変化を「データサイエンティストが進化する好機」と捉えているという。
「AIが進化するほど、人間にはデータの活用法を見極める力が求められる」と語る山内さんに、生成AI時代におけるデータサイエンティストの在り方について聞いた。
三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社
データサイエンス部 リードエンジニア
山内俊志さん
2007年新卒入社。インターネットバンキングなど銀行システムの基盤開発・保守に従事。その後、海外大学院への留学を経て、21年に現部署に着任
ーー近年の急速な生成AIの進化を受けて、データサイエンティストの未来を危ぶむ声が目立ちます。この見方について、山内さんはどうお考えですか?
生成AIの登場により、一部のデータサイエンス業務が効率化されているのは事実です。例えば、データの基礎的な集計や探索的データ解析(EDA)は、これまでよりも短時間で行えるようになりましたから。
とはいえ、「データサイエンティストの全ての役割を生成AIが代替するわけではない」と考えています。
生成AIは優れたツールですが、これをどう使うかを判断するのは人間の役割です。特にデータ分析の上流工程である「課題設定」、つまり「問いを立てる」部分については、生成AIでは担いきれません。
ーーそれはなぜでしょうか?
課題設定を適切に行うには、ビジネスの全体像を理解し、本質的な問題を見極める力が必要です。この力は、現場の業務を把握し課題を抽出するプロセスを通じて磨かれるものであり、現時点ではAIでは代替できません。
例えばAIが予測リストを作成しても、それを業務プロセスに統合し、現場でどう活用するかを考えるのは人間の役割です。生成AIはあくまでアウトプットを提供するツール。データ分析を単なるPoC(概念実証)で終わらせず、業務改善にまで結びつけるプロセスを設計し実装することが重要です。
我々MUITも、PoCの計画書を作成する際には必ず「As Is」の業務全体のプロセスを整理し、何が課題で、最終的に業務プロセスのどこにAIを組み込むのか「To Be」まで整理しています。AIデータ分析に関する深い理解を持っているデータサイエンティストが、ここまで踏み込んでいくことに意味があるのです。
これらの観点から、生成AI時代におけるデータサイエンティストの価値は、むしろ高まっているとさえ感じています。
ーーでは生成AI時代のデータサイエンティストには、具体的にはどのようなスキルが必要とされるのでしょうか?
一つの考え方として、一般社団法人データサイエンス協会で定義している三つの領域が鍵になると考えています。
まず一つ目は「ビジネス力」です。これは先ほど述べた「問いを立てる」ために不可欠なスキルであり、ビジネス全体を俯瞰して本質的な問題を捉える力を指します。
AIモデルを作成するとき、ビジネスサイドからの要望に対して「言われた通りに作る」のではなく、解決すべき課題は何かを深く考え、付加価値のある提案を行う姿勢が欠かせません。ビジネスサイドと密にコミュニケーションを取り、課題設定の段階から議論を重ねることで、正しい方向に導くことが重要です。AIを活用して高度なモデルを作っても、課題設定が誤っていれば成果は出せないので。
我々も課題設定をする際には、業務の全体像を可視化して、どこに課題があるのかをビジネス部門と活発に議論しています。それこそ業務の現場に出向き、実際の業務を体感することで解像度を上げ、「何が本当の課題なのか」を突き詰めて考えるようにしています。
ーー続いて二つ目のスキルは何でしょうか?
データサイエンスを「意味のある形」に使えるようにして、実装、運用できるようにする力、いわゆる「エンジニアリング力」です。AIの登場によりデータの基礎的な処理や分析は効率化されつつありますが、これを実際のビジネスプロセスに組み込むためには、依然として高度なエンジニアリングスキルが必要です。
データ分析は前処理が8割という言葉もよく耳にしますが、未だにそういったデータの前処理工程は避けて通れません。我々も日々大容量のデータと格闘している中で、それらを効率的に処理・加工する、つまりデータを分析やAIで利用可能な状態にするデータエンジニアリングの重要性を体感しています。AIモデルのデプロイメントや運用を支えるMLOpsや、最近注目されているLLMOps(MLOpsの考え方を大規模言語モデルに拡張)など、多岐にわたるエンジニアリングスキルが欠かせませんね。
生成AIの文脈でいうと、業務で活用する際にRAG(外部の情報を検索抽出し、その内容を元に生成AIに回答を生成させる技術)を用いることがありますが、検索クエリのチューニングや実運用を想定したフィードバックループの仕組みづくりなど、エンジニアリングスキルは依然として必要です。MUITもAIを活用して業務変革するために日々試行錯誤を重ねていますが、このスキルの重要性が一層高まっていることをひしひしと感じています。
ーーでは三つ目のスキルを教えてください。
情報処理や統計学などを理解しそれを活用して、データから有益な情報や知見を引き出す、いわゆる「データサイエンス力」です。
簡単な問いは生成AIが解決してくれる時代にもなりましたが、より掘り下げた課題の解決にはデータサイエンス力が必要だというのは変わりません。一見「正しそう」に見える場合でも、その内容を鵜呑みにせず、本質を理解した上で適切に評価する力が求められます。
データサイエンティストは、さまざまなデータ分析手法を実際に試し、その結果をビジネス部門に共有し、意思決定を支援する役割を担います。このプロセスを繰り返すことで、目的に応じた適切な手法を選択・活用する感覚が身に付きます。
知識のインプットだけでなく、実践を通じてスキルを磨くことが重要です。我々も業務を行う中で、日々この点を実感しています。
ーー三つのスキルを磨いていく上で、注意すべきポイントは何かありますか?
これらのスキルは「どれか一つだけあればいい」というわけではなく、そのバランスが重要です。それぞれのスキルをどの割合で磨くべきか、自分の強みをどこに置くかを考える必要があります。その上で、AIをうまく活用しながら、自分のスキルセットを成長させていくことが求められるでしょう。
また、好奇心や柔軟性を持ち、AIの進化による変化を前向きに捉えることも忘れてはいけません。新しい手法や技術を学び続け、自分のスキルを業務に活かす姿勢が、これからのデータサイエンティストには欠かせませんからね。生成AI登場後、一層変動が激しい時代になりましたが、この変化を恐れず、成長の機会と捉えるマインドセットが、長期的なキャリアの成功を支える鍵となります。
ーー今後データサイエンティストは、自身の介在価値をより意識して業務に向き合う必要がありそうです。
そうですね。これからのデータサイエンティストに求められるのは、「データをビジネス価値に変える力」を実務を通じて磨くことです。
単にデータを分析するだけでなく、課題の発見、仮説の立案、解決策の実装、成果の検証といった一連のプロセスを経験し、成果に結びつける力が重要になります。このサイクルを回すことで、スキルが“実践力”として身に付き、ビジネスの現場で求められる価値を生み出せるようになるのです。
ーーリアルな課題に向き合い、実践的な経験を積むことが必要だと。
はい。MUITでは、市場分析、融資、不正防止、マーケティングなど、多岐にわたる金融業務のテーマに取り組むことができます。一つの領域に限定されることなく、業務ごとの課題やデータの特徴を理解し、最適な解決策を提案するサイクルを経験できる点が大きな魅力です。
また三菱UFJフィナンシャル・グループでは、約3,400万口座の個人データと約100万社の法人データを保有しています。これほどの規模と質を兼ね備えたデータに触れながら、仮説検証を行い、現場に実装するプロセスを一貫して経験できる環境は、そう多くはありません。私たちの業務が社会的に大きなインパクトを与えられることは、大きなモチベーションになります。
ーー「データの質と量」という点で、日本最大級のフィールドが広がっていると。
生成AIが普及していく中で、各社が差別化を図る鍵は「データの質と量」にあると感じています。MUITでは、豊富なデータと多様な業務ドメインに触れながら、単なるデータ分析に留まらず、ビジネスにインパクトを与えるまでの過程を経験できます。ビジネス部門からのニーズも旺盛で、取り組むテーマには事欠きません。
また、それらを支える充実した研修制度やオンボーディングプロセス、そしていわゆるモダンなデータ分析基盤も整備されており、データサイエンティストが活躍するための環境が整っています。
多様な業務経験、強力なデータ基盤、そして現場での運用までを一貫して担える環境。AI時代を生き抜くために必要な「ビジネス力」「エンジニアリング力」「サイエンス力」をバランス良く鍛え、成長できる場所がMUITにはあるのです。
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撮影/赤松洋太 取材・文・編集/今中康達(編集部)
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