12月12日付 フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は「欧州連合(EU)と南米南部共同市場(メルコスール)の合意は批准に値する」との社説を掲げ、EUとメルコスールの貿易合意を2度目のEUプロセスに上げるに際し、これは、米国の脅しに対抗して自由貿易を護る絶好の機会で、批准すべきだと論じている。概要は次の通り。
EUとメルコスールの貿易合意交渉は、1999年に始まり2019年に最初の署名まで達した。最初の案文は、アマゾン地域を牛肉業者にとって偽装された貿易制限措置とみなすEU加盟国の反対で失敗。5年後、EUが遂に環境セーフガードに関する適切な声明を作り出した後に、全く新しいバージョンのメルコスールとの協定が原則合意されたが、その後も合意実現の最大の障害はEU自身で、メルコスール諸国政府の努力は無にされてきた。
数カ月にわたる文言交渉の後、案文は加盟国とEU議会に提出される。フォン・デァ・ライエン委員長は、自国農民に多くの問題が生じるとしているフランス、ポーランドその他諸国の反対を押し切るだけのモメンタムを加盟国間に作り出せるかを判断することになる。
国際的貿易システム重視派はフォン・デァ・ライエンの成功を期待している。しかしフランスとポーランドの反対にもかかわらず投票に付すことのリスクは膨大で、再び失敗すれば大規模合意を交渉するEUの信頼性は地に落ちる。投票に付す努力さえしないことも、深刻なコストを伴う。
この合意は、個別の商業的利益を超える象徴的世界的重要性を持つ。自由貿易には支持が必要だ。
バイデン大統領の下でさえ、米国は多数国間貿易ルールを基本的に無視し、意味のある全ての貿易合意を忌避した。ルールに基づくシステムに対しトランプはより侮蔑的態度をとるだろう。
従って、現在は、EUと台頭しつつある大市場が地域的貿易ルールを作るに最も適切な時期だ。世界貿易機関(WTO)には劣るが、何も無いよりは良い。
しかし、まずフランスに対応しなければならない。マクロンは、国内的には自由貿易に遍く反対のルペンからしつこく言われポーランドのトゥスク率いる「反対」組に入った。トゥスクの反対も真の反対だ。イタリアは立場を変え得る。メローニは支持母体の輸出志向産業セクターと口うるさい農民の板挟みだ。