(社説)辺野古移設 地盤調査なぜ尽くさぬ

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 技術的に問題が指摘されるなかで工事を強行する。これでは無責任ではないか。

 米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市から名護市辺野古に移設するため、防衛省は昨年末、地盤改良工事を始めた。前例のない難工事となるのは必至で、本当に実現が可能なのか、疑念がぬぐえない。

 同省が昨年末に明らかにした資料によると、大浦湾側の地盤は「非常に硬い粘性土」から「中くらいの粘性土」に分類され、海面下70メートルまで「砂杭」を打ちこんで「構造物等の安定性を十分に確保できる」としている。だが、必要な調査が尽くされていないとの指摘は再三、出ている。

 軟弱地盤の最深部「B27」地点で、防衛省は強度を調べる本格的なボーリング調査をしていない。地質学の専門家有志らの調査団は20年、同省の公表資料を分析。軟弱部分が同省の見込みより深くまで達している疑いを示し、「護岸が崩落する危険性がある」として追加調査を求めた。

 地盤が不安定だと地面や構造物の想定外のゆがみが起こりえ、この地が建設地にふさわしいのか、根本的な問題に発展する可能性もある。

 追加調査しない理由を同省に改めて尋ねても、「14~18年に行った土質調査の結果から強度等を詳細に把握できている」「国土交通省が監修する技術基準に基づいており、有識者の検討会でも確認を得た」との回答だった。羽田空港関西空港での施工実績があることも強調した。

 調査団の立石雅昭・新潟大名誉教授(地質学)は「大浦湾の海底は起伏に富んでいる上、場所によっては空港の埋め立て現場より深い。安全のためにも正確なデータを得ることは不可欠だ」と話す。

 埋め立てに必要な土砂は約2020万立方メートルという。その調達のめどもついていない。県内での採取には反対の声がある上、県外からの搬入には外来生物の混入などを規制する県の条例もある。

 大浦湾にはジュゴンなど絶滅危惧種が多数生息し、サンゴ礁をはじめとする生態系が保護できるのかにも疑問が残る。多くの問題を置き去りにし、既成事実づくりを急ぐような姿勢は看過できない。

 移設は、「辺野古が唯一の解決策」とする国側が強引に進めてきた。移設計画をめぐって県と国で争われた14件の訴訟は和解と取り下げを除き全て県の敗訴で終わったが、工事が行き詰まれば設計変更が再び必要な局面もありうる。その際は、公有水面埋立法の要件に照らし、工事の妥当性について県の審査を受けるのは当然のことだろう。

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