―[シリーズ・駅]―

 毎年3月は鉄道業界にとって節目となるダイヤ改正の時期。今年はJR越後線に上所駅(新潟市)、JR日豊本線に仙厳園駅(鹿児島市)と2つの新駅が誕生する一方、北海道のローカル線にある5駅が廃止となる。

 そこで今年1~2月、最後の別れを告げるべく各駅を巡ってみることにした。

今年3月で廃止になる北海道の駅5つを巡る。「日本最東端の駅」...の画像はこちら >>

開業101年で幕を閉じる“日本最北の秘境駅”

 日本最北端の稚内駅からJR宗谷本線の普通列車に揺られること17分。雪原と化した原野の真ん中に佇む、抜海駅(北海道稚内市)が見えてくる。

 同駅に来たのは約2年ぶり。前回訪問した時の様子は、別の記事で紹介しているが、当時は駅舎の向かいのホームも上り列車用に使用していたのに、駅廃止よりひと足早い24年4月に使用停止を発表。そのため、向かい側のホームはまったく除雪されていなかった。

今年3月で廃止になる北海道の駅5つを巡る。「日本最東端の駅」が姿を消すことに
抜海駅に到着する宗谷本線の普通列車
 抜海駅はバスも通っておらず、車以外のアクセスは上下線合わせて1日わずか7本の列車だけ。しかも、このうち日中に滞在可能なのは、10時45分着の名寄行きで下車し、11時48分発の稚内行き普通列車が出発するまでの約1時間滞在する以外の選択肢がない。

 数ある秘境駅の中でもアクセス難易度はトップレベル。にもかかわらず、筆者が訪問した日には、同じ列車で下車した者、レンタカーなど車で来た鉄道ファンを合わせると、10人以上が訪れていた。これも廃止を目前に控えた鉄道駅ではおなじみの光景だろう。

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開業100周年の記念碑
 特にこの駅は、改修しながら1924年の開業当初の駅舎をそのまま使っている駅。鉄道遺産としても希少性があるだけに廃止せざるを得なかったのは残念だ。


学校の朝礼台に例えられた板張りホームの小さな駅

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南幌延駅
 その抜海駅から宗谷本線を南に53.4㎞下った6駅隣の南幌延駅(幌延町)もこの春廃止を迎える。駅の横には道北地方の幹線道路のひとつになっている道道256号線が走っているが、地域全体が過疎地であることに加え、まだ薄暗い朝の訪問だったので車もたまにしか通らない。

 駅の周囲には牧草地帯が広がるが、雪に閉ざされた冬は例によって雪原と化している。ホームは列車1両ほどの長さしかなく、それも板張り。そのため、一部の鉄道ファンからは、親しみを込めて“朝礼台”と呼ばれている。

 同様の板張りホーム駅は、国鉄時代に仮乗降場と呼ばれた駅に見られ、かつて北海道に数多く存在したが次々と廃止。その役割をすでに終えたのかもしれないが、ローカル線らしい旅情を感じさせてくれただけにさびしい限りだ。

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南幌延駅の待合室


町公認のゴーストタウンにあった駅

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雄信内駅
 南幌延駅の隣にある雄信内駅(幌延町)も14日で営業終了を迎える。「おのっぷない」と読む難読駅で、「川尻に原野にある川」を意味するアイヌ語に由来する。

 抜海駅より1年遅れの1925年開業で、駅舎は同じ木造平屋建て。ただし、ひび割れた外壁の風合いもあって同駅のほうが年季の入った建物に見える。駅構内には昨年11月、開業99周年を記念して行われた白寿祭』の写真を展示。周辺住民0人が嘘のように大勢の人が訪れていたようだ。

 だが、雄信内駅のある雄興地区の最盛期の人口は200人以上。
当時は小学校もあったそうで、ほかにも廃墟化している民家や商店、農業倉庫なども確認できた。

 町のホームページに《今はゴーストタウンとなっています》と紹介されていたのは知っていたが、誇張ではなく紛れもない事実。

今年3月で廃止になる北海道の駅5つを巡る。「日本最東端の駅」が姿を消すことに
ゴーストタウン化した雄信内駅周辺の廃墟
 ちなみに雄信内駅と南幌延駅の維持管理費を負担していたのは、地元の幌延町。でも、これとは別に雄信内駅では駅舎の修繕、南幌延駅では劣化した板張りホームの改修が必要となり、その額は合わせて750万円。人口約2000人の町にとってはあまりに大きい負担のため、やむを得ないだろう。

 できれば今年7月に迎えるはずだった開業100年を祝ってあげたかったが……。

駅周辺地域の人口は多いのに駅利用者が皆無

今年3月で廃止になる北海道の駅5つを巡る。「日本最東端の駅」が姿を消すことに
東滝川駅
 廃止になる駅は、必ずしも秘境駅ばかりではない。JR根室本線の起点駅・滝川駅の次に位置する東滝川駅(滝川市)がまさにそのケースだ。

 市の1月末時点の『町別世帯数及び人口』を調べると、東滝川地区の住民数は約827人。駅周辺は住宅街で、少し歩くとコンビニもあった。ところが、それほどの規模なのにJR北海道が公表する『駅別乗車人員』を見ると、19~23年の5年間の平均は1日1.8人しかいない。

今年3月で廃止になる北海道の駅5つを巡る。「日本最東端の駅」が姿を消すことに
住宅が連なっている東滝川駅前
 車社会であることが大きいが、理由はそれだけではない。バスが滝川市内を通って駅に向かうため、車を運転しない高齢者や通学の高校生にはこちらのほうが便利なのだ。
しかも、運賃はバスが240円でJRより50円も安く、その辺も影響しているのだろう。

 それでも駅には跨線橋もあり、利用客が少ない割には立派だ。さらに筆者が訪れた日は、除雪用のラッセル車が駅構内に待機中。駅舎の屋根に大量の雪が積もっており、多数の氷柱が垂れ下がっている。今回訪れたどの駅よりも雪が多く、豪雪地帯の駅という雰囲気が印象的だった。

鉄道ファン以外にも有名だった“日本最東端の駅”も廃止に

今年3月で廃止になる北海道の駅5つを巡る。「日本最東端の駅」が姿を消すことに
東根室駅
 そして、日本最東端にあるJR根室本線の東根室駅(根室駅)もこの春でその歴に幕を下ろす。ここも東滝川駅同様、住宅街にある駅で、南幌延駅のようにホームは板張りだ。

 以前はここから少し離れた場所にある高校の一部の生徒が通学のために利用していたが、路線バスの利便性が良くなったことで利用者が減少。根室駅とも1.5㎞しか離れておらず、路線バスのほうが本数も多いことから存在意義を失ったようだ。

 そんな東根室駅には駅舎や待合所はなく、駅前の《日本最東端の駅 ひがしねむろ》と書かれた木のオブジェの横にベンチがあるだけ。駅の反対側と結ぶ、地下道以外に雨露をしのぐ場所はなく、雨や雪の日は列車を待つ辛そうだ。

今年3月で廃止になる北海道の駅5つを巡る。「日本最東端の駅」が姿を消すことに
市街地にある東根室駅は、周囲に住宅街が広がっている
 ダイヤ改正後、新たな日本最東端の駅は根室駅に。
終点なのでアクセスは便利になるが、できれば廃止という形で変更になってほしくなかった。

 なお、例年だと駅の廃止については前年の秋以降に発表されることが多いが、すでにJR留萌本線が廃止に伴い、北一已―石狩沼田間の4駅が26年3月末に廃止となることが確定済み。

 利用客の少ない駅、路線はまだまだ多いだけにこの流れを止めるのはやはり難しいのかもしれない。

<TEXT/高島昌俊>

―[シリーズ・駅]―

【高島昌俊】
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。
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