毎年3月は鉄道業界にとって節目となるダイヤ改正の時期。今年はJR越後線に上所駅(新潟市)、JR日豊本線に仙厳園駅(鹿児島市)と2つの新駅が誕生する一方、北海道のローカル線にある5駅が廃止となる。
そこで今年1~2月、最後の別れを告げるべく各駅を巡ってみることにした。
開業101年で幕を閉じる“日本最北の秘境駅”
日本最北端の稚内駅からJR宗谷本線の普通列車に揺られること17分。雪原と化した原野の真ん中に佇む、抜海駅(北海道稚内市)が見えてくる。同駅に来たのは約2年ぶり。前回訪問した時の様子は、別の記事で紹介しているが、当時は駅舎の向かいのホームも上り列車用に使用していたのに、駅廃止よりひと足早い24年4月に使用停止を発表。そのため、向かい側のホームはまったく除雪されていなかった。

数ある秘境駅の中でもアクセス難易度はトップレベル。にもかかわらず、筆者が訪問した日には、同じ列車で下車した者、レンタカーなど車で来た鉄道ファンを合わせると、10人以上が訪れていた。これも廃止を目前に控えた鉄道駅ではおなじみの光景だろう。

学校の朝礼台に例えられた板張りホームの小さな駅

駅の周囲には牧草地帯が広がるが、雪に閉ざされた冬は例によって雪原と化している。ホームは列車1両ほどの長さしかなく、それも板張り。そのため、一部の鉄道ファンからは、親しみを込めて“朝礼台”と呼ばれている。
同様の板張りホーム駅は、国鉄時代に仮乗降場と呼ばれた駅に見られ、かつて北海道に数多く存在したが次々と廃止。その役割をすでに終えたのかもしれないが、ローカル線らしい旅情を感じさせてくれただけにさびしい限りだ。

町公認のゴーストタウンにあった駅

抜海駅より1年遅れの1925年開業で、駅舎は同じ木造平屋建て。ただし、ひび割れた外壁の風合いもあって同駅のほうが年季の入った建物に見える。駅構内には昨年11月、開業99周年を記念して行われた白寿祭』の写真を展示。周辺住民0人が嘘のように大勢の人が訪れていたようだ。
だが、雄信内駅のある雄興地区の最盛期の人口は200人以上。
町のホームページに《今はゴーストタウンとなっています》と紹介されていたのは知っていたが、誇張ではなく紛れもない事実。

できれば今年7月に迎えるはずだった開業100年を祝ってあげたかったが……。
駅周辺地域の人口は多いのに駅利用者が皆無

市の1月末時点の『町別世帯数及び人口』を調べると、東滝川地区の住民数は約827人。駅周辺は住宅街で、少し歩くとコンビニもあった。ところが、それほどの規模なのにJR北海道が公表する『駅別乗車人員』を見ると、19~23年の5年間の平均は1日1.8人しかいない。

それでも駅には跨線橋もあり、利用客が少ない割には立派だ。さらに筆者が訪れた日は、除雪用のラッセル車が駅構内に待機中。駅舎の屋根に大量の雪が積もっており、多数の氷柱が垂れ下がっている。今回訪れたどの駅よりも雪が多く、豪雪地帯の駅という雰囲気が印象的だった。
鉄道ファン以外にも有名だった“日本最東端の駅”も廃止に

以前はここから少し離れた場所にある高校の一部の生徒が通学のために利用していたが、路線バスの利便性が良くなったことで利用者が減少。根室駅とも1.5㎞しか離れておらず、路線バスのほうが本数も多いことから存在意義を失ったようだ。
そんな東根室駅には駅舎や待合所はなく、駅前の《日本最東端の駅 ひがしねむろ》と書かれた木のオブジェの横にベンチがあるだけ。駅の反対側と結ぶ、地下道以外に雨露をしのぐ場所はなく、雨や雪の日は列車を待つ辛そうだ。

なお、例年だと駅の廃止については前年の秋以降に発表されることが多いが、すでにJR留萌本線が廃止に伴い、北一已―石狩沼田間の4駅が26年3月末に廃止となることが確定済み。
利用客の少ない駅、路線はまだまだ多いだけにこの流れを止めるのはやはり難しいのかもしれない。
<TEXT/高島昌俊>
―[シリーズ・駅]―
【高島昌俊】
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。