コーラの原料って何だろう?
清涼飲料水と言えば、真っ先に思い浮かぶのがコーラ。
みなさんは、コーラの原料って何か、考えたことはありますか?
有名な某社のコーラのレシピは門外不出のトップ・シークレットなんだそうですが、その内容を解明しようとする書籍なども出版されており、メディアでたびたび話題になっています。
それによると、コーラがはじめて考案されたときのレシピの中心は「7x」と呼ばれるミックスフレーバー。すなわち、アルコール、オレンジ香油、レモン香油、ナツメグ香油、コリアンダー香油、ネロリ香油(ダイダイの花から取れる油)、シナモン香油からなる7種の原料。
これに加えて、コカ抽出物、クエン酸、カフェイン、砂糖、水、ライムジュース、バニラ、カラメルからなるシロップを合わせたものがコーラなのだそうです。
コカ抽出液とは、コカインの原料となるコカ葉由来だと言われており、もちろん現在は不使用のはずですが、その他の素材は一般人でも十分入手できそうなものばかりですね。
案の定、このレシピを元に自宅キッチンで某社コーラを再現しようと試みるマニアが存在するようで、ネットを検索すると、再現実験の結果を報告する記事や動画がヒットします。
これらの素材は、どれもスパイスやハーブ、果物などで、本来コーラは「スパイス&ハーブドリンク」なのだと気づかせてくれます。オーガニックな素材で作れば、体にも良いナチュラルドリンクになりそう。
そんなコーラの本質に気づいた人たちが多いのか、手作りの「クラフトコーラ」が流行し始めており、オリジナルクラフトコーラを販売するメーカーも登場。自宅でのコーラの自作も静かなブームを呼びつつあるようです。
独自のスパイス調合で作る 「俺カレー」はもはや一般的ですが、これと同じく、独自のスパイス&ハーブの調合で「俺コーラ」を自作してみてるのも楽しそう。
というわけで、さっそく材料を入手して、自分だけのクラフトコーラづくりにチャレンジしてみることにしました!
ダークコーラの決め手はカラメル
まず、今回取り揃えてみた材料を紹介。
上の写真、上段より左から右へ、オレンジ、レモン、生姜、砂糖、コリアンダーシード、カルダモン、八角、黒胡椒、ナツメグホール、クローブ、バニラビーンズ、シナモン(ホール)の12種。
スパイスやハーブは、通販を利用すると集めやすいです。
今回は、この材料を組み合わせて、筆者考案のコーラを2種類作ってみます。
一般的なコーラのイメージに近い「ダークコーラ」と、柑橘類の爽やかさを強調した味わいの「シトラスコーラ」です。
では、ダークコーラの材料から解説していきますね。
【ダークコーラのシロップ 材料 約6杯分】
- シナモン(ホール) 5g
- クローブ 5g
- 八角 5個
- バニラビーンズ 1本
- 黒胡椒 1g
- ナツメグ(パウダー) 小さじ1/2
- レモン 半個
- 砂糖 150g
- 水 330ml
上記材料で作ったシロップを、飲む直前に炭酸水で割ることで完成とします。
では、各スパイスの解説です。
シナモン(ホール)
コーラのフレーバーのベースになります。シナモンはアップルパイと相性のよいスパイスで、インドのチャイにも使われます。ほぼ同じものであるニッキが京都の八つ橋に使われていたり、甘いものに温かみのある奥行きを与えるような感覚。
クローブ
ダークコーラのスパイスは、このクローブをはじめ、八角や黒胡椒など、見た目の色合いも黒っぽいものを中心にチョイスしてみました。クローブは煙草のガラムにも使われており、つややかで濃厚な甘味を感じさせる香りが特徴。
八角
スターアニスとも呼ばれるスパイス。中華に使われるイメージですが、やはり甘味を感じさせる香りで、クローブと共にダークコーラの味わいのキーとなります。
バニラビーンズ
アイスクリームに使われたり、デザートなど甘いものに多用されます。手に入れやすい液体のバニラエッセンスでも可。
黒胡椒
ホールのブラックペッパー。ピリッとした辛味を隠し味に。
ナツメグ
ハンバーグなどに入れるナツメグパウダーは、このホール状のナツメグを削ったもの。黒胡椒と同様、隠し味に使用します。手に入りやすいパウダー状のものでもOK。
レモン
コーラに酸味と爽やかさを与えます。皮と、絞った果汁の両方を使用します。
砂糖
甘味付けの役割はもちろん、ダークコーラの見た目と味わいの要となるカラメルの材料でもあります。今回使用したのは精製度の低い茶色い砂糖ですが、普通の白砂糖やグラニュー糖など、どんなものでも構いません。
以上、材料の解説でした。
次は、下ごしらえについて説明しますね。
「ダークコーラ」のシロップをつくる
シナモン(ホール)は手で折って細かくしておきます。
黒胡椒はミルか、包丁などを使って、粗く砕いておきます。
ナツメグはおろし金などを使用して削り……
パウダー状に。
バニラビーンズはさやを2つに割いて、中にあるシードのつぶつぶをこそげるように取り出します。使用するのは、さやとシードの両方です。
レモンはピーラーや包丁で皮をむいてから、
皮を、このように千切りにしておきます。
皮をむいた後のレモンは果汁を絞ります。
以上の下ごしらえができたら、水300mlを入れた鍋に、砂糖とレモン果汁以外のすべての材料を加え、火にかけます。
煮立ったら数分間ほど材料を煮出し、砂糖100gを入れて溶かします。
最後にレモン果汁を加え、火を止めます。
次に、別の鍋に砂糖50gと水30mlを入れ、煮立たせます。
煮詰めていくと、だんだん飴色になって、色合いが濃くなってきます。
ちょっと焦げたように香りが立ち、このくらいの色合いになったら火を止めます。カラメルの完成です。
ダークコーラの要となるのが、このカラメルの香りとダークな色合い。
このカラメルの鍋に、さきほど煮出したスパイスの鍋の中身を全部加えます。
弱火で温めながら、飴状に固まったカラメルを、スパイスを煮出した液体で溶かして混ぜていきます。
カラメルとスパイス液が完全に混ざったら、消毒した容器に入れて粗熱をとり、冷蔵庫で一晩寝かせます。
以上で、ダークコーラのシロップが完成しました。
次に、シトラスコーラの材料と作り方を解説しましょう。
「シトラスコーラ」はカラメルを加えず柑橘を強調してみる
これがシトラスコーラの材料。
【シトラスコーラのシロップ 材料 約8杯分】
- シナモン(ホール) 5g
- カルダモン 10g
- コリアンダーシード 10g
- 生姜 20g
- レモン 1個
- オレンジ 1個
- 砂糖 150g
- 水 300ml
個別の材料を解説しましょう。
ダークコーラと重なる材料は砂糖と水、そしてシナモンとレモンです。それ以外のものを見ていきます。
カルダモン
ダークコーラは黒っぽいスパイスが中心でしたが、シトラスコーラには見た目が白っぽいものを選んでみました。このカルダモンと、コリアンダーがそうです。
シナモン同様、インドのチャイに使われることが多いカルダモン。このまま使ってもよいですが、包丁などで粗く砕いておくとフレーバーを抽出しやすくなります。
コリアンダーシード
シトラスコーラの爽やかな味わいを下支えするイメージで使用。カレーのスパイス配合においては、コリアンダーがすべての基本と言われることもあります。
生姜
ダークコーラの黒胡椒に対して、シトラスコーラのピリッとしたアクセントには生姜を。ジンジャーエールに、レモンジュースやオレンジジュースを混ぜるとおいしいので、シトラスフレーバーの飲みものに生姜は合うはずです。
オレンジ
柑橘類は、レモンに加えてオレンジも。ともに1個ずつ、たっぷり使用します。
下ごしらえは、下記の通りに。
「シトラスコーラ」のシロップ
まず、生姜は写真のようにスライス。
レモン同様、オレンジの皮もピーラーや包丁でむきます。
むいた皮は千切りに。
果汁も絞っておきます。
こちらもダークコーラの時と同じような処理をして、下ごしらえ完了。
水300mlを入れた鍋に、レモン果汁、オレンジ果汁、砂糖以外の材料をすべて加え、火にかけます。
沸いたら、砂糖を加えて溶かし、数分間ほど材料を煮出していきます。
レモンとオレンジの果汁を加えたら、火を止めます。
シトラスコーラには、カラメルを加えません。
ペルーでよく飲まれている清涼飲料水に「インカコーラ」がありますが、別名ゴールデンコーラとも呼ばれており、まったく黒くなく、黄色っぽい見た目です。
インカコーラのように、コーラは必ずしも黒くなくてもよいのです。柑橘の爽やかさを味わうシトラスコーラは、黒い見た目とカラメル香をつけないことにしましょう。
できたシロップを消毒した保存容器に移し、粗熱をとってから冷蔵庫で一晩寝かせます。
2日目のカレーはうまい、と同じ?
シロップを一晩寝かせると、味がなじんできます。
作りたてのとき、例えば「少しレモンの味が立ちすぎているかな」とか「胡椒が辛すぎたかな」と思っても、一晩おくと突出した味わいも全体に溶け込んで、よい具合になること多し。
冒頭で「カレーのようにコーラのオリジナルスパイスを調合しよう」と提案しましたが、一晩おいたコーラのシロップの味わいがおちつくのは「2日目のカレーがうまい」という現象と似ているかもしれません。
さて、試飲してみましょう。
まず、グラスに氷を入れます。
冷蔵庫から出したシロップを茶こしなどで濾しつつグラスに移します。分量は50mlほど。
炭酸水を加えます。なるべく強炭酸のものがよさそう。
炭酸水の分量は100mlほど。
グラスの容量にもよりますが、シロップ1に対して炭酸水2の割合が、ちょうどよい濃度になるようです。
ダークコーラの完成!
飲んでみます……。
大成功! かなりウマい!
市販されている大手メーカーのコーラとも、そんなに遠くない「コーラらしい」ドリンクになりました。
ただ、実際に市販のコーラと飲み比べてみると、全然違いますね。自作のコーラはスパイスの味わいが豊かな「スパイシーソーダ」という感覚。まさにクラフトコーラです。
味わいの中心はカラメルフレーバーとクローブ、次いで八角、さらに黒胡椒とナツメグが香ります。
黒胡椒については、シロップを一晩おくと、けっこう香りが引っ込んでしまうので、あらかじめ多めに使ってスパイシーな大人風味に仕上げるのも面白いかも。
同じようにして、シトラスコーラも試飲してみます。
こちらも狙ったとおりの爽やかなコーラになりました!
一晩おくと柑橘の味わいが落ち着き、シナモンの風味が目立ってきます。これはこれでおいしいのですが、きりっとした柑橘の爽やかさを強調したいなら、レモンとオレンジの量を増やすか、あるいは飲む直前に果汁を加えるなどするとよさそう。
柑橘、シナモンを、生姜の風味が下支えしており、風邪のときに飲むとよさげです。
まだ実験していませんが、シロップを炭酸で割らずに、お湯で割ってホットドリンクにしてもおいしいかも。
課題は、シロップを炭酸水で割る方法だと、すこし炭酸が弱く感じること。
コーラはやはり強い炭酸の刺激を味わいたいものです。
その場合は「ソーダメーカー」を使ってみるのも手です。
ソーダメーカーとは、どんな飲み物も炭酸飲料にしてしまう器具。ネットで検索すると、いろんな商品が見つかるでしょう。
価格については、最低でも1万円ほどするので気軽には購入できないかもしれませんが、炭酸にこだわりのあるクラフトコーラ好きは、試してみてもよさそう。
海外では、クラフトコーラを密閉した瓶内で発酵させることによって自然発泡させるレシピもあるようです。さまざまなレシピが存在するのも、クラフトコーラの面白いところですね。
また、できたシロップは冷蔵庫で保存して、2週間以内くらいに使い切るようにしましょう。
みなさんも、オリジナルクラフトコーラのレシピを編み出して、楽しんでみてください!
書いた人:(よ)
「ferment books」の編集者、ライター。「ワダヨシ」名義でも活動中。『発酵はおいしい!』(パイ インターナショナル)、『サンダー・キャッツの発酵教室』『味の形 迫川尚子インタビュー』(ferment books)、『台湾レトロ氷菓店』(グラフィック社)など、食に関する本を中心に手がける。