クイックアクセスは、無限にある3D Touch利用の1形態に過ぎない。実はiPhone 6sシリーズを使い始めると、このクイックアクセス以上に多用する操作がある。
「Peek」&「Pop」だ。Peekはのぞき見る、Popは飛び出させるの意味だ。
例えば、書店にたくさん並んだ本。背表紙のタイトルを見て、自分には関係ない本は簡単にふるい落とすことができるが、いくつか気になったタイトルの本を見つけると、とりあえず手にとってページを開いてみる。これがPeekの状態。
パっと見て「あ、やっぱり違う」と思ったら、そのまま本棚に戻すが、「これはかなり求めているものに近いかも」と思うと、本棚には戻さず、とりあえず手元に置いておく。これがPopの状態で、我々はこうした動作を日常の中でも頻繁に行っている。
Peek&Popは、メールでも一覧表示の状態で「これは取引先からのメールだし大事かも」と思ったら、一度、そのメールをプレス(強押し)する。するとそれまでの一覧表示は残したまま、その上に重なるように開いたメールの一部が表示される。
つまりiPhoneの操作状態としてはメール一覧表示状態なのだが、その上にテレビのスーパーインポーズ的にメールの中身が一時表示されている状態だ。
このPeek中のメールを読んで仕事とは何の関係もないメールだと分かったら、その場でプレスしていた指を離す。するとメールの未読のステータスもそのまま、今の操作はまるまるなかったことになり、Peek画面が消え、一覧表示に戻る。
一方で「あ、やっぱり大事なメールだった」と分かったら、そのままメールを上にスライドする。すると返信や転送、マーク、通知、移動といった操作ができる。
ちなみにPopの操作では長いメールの全文は表示されない。「一度きちんとメールを開いて、最後まで読み込みたい」となったら、すでにプレス状態で保っているメールを、もう1度強く押し込んでみる。すると操作状態が一覧表示からそのメールを開いている状態に切り替わる(一覧表示に戻るには左上の受信箱のボタンを押して戻る操作が必要になる)。
このようにメール機能だけでもかなり便利なPeek&Popは、今後、さまざまなアプリで使われるようになる。
iOS 9標準アプリでも「メッセージ」「カレンダー」「写真」「カメラ」「天気」(登録している都市の一覧からPeekできる)、「マップ」(ピンで表示されている施設の詳細を表示)、「ビデオ」「メモ」「リマインダー」「iBooks」「電話」「Safari」「メール」「ミュージック」「Podcast」から「Find My iPhone」まで、全部列挙しているときりがないので省略するが、一覧表示を利用するほとんどのアプリといっていい。
このことから、この機能がiOSの基本の部分でサポートされているもので、アップルのルールに従って一覧表示機能を実装しているアプリであれば比較的簡単に対応できることが予想できる。
ちなみに対応していなかった「時計」「株価」「ヘルスケア」「設定」「計算機」「コンパス」といったものは、そもそもPeek&Popする必要を感じない。ただ、パスブック機能を統合した「Wallet」や「Game Center」「ボイスメモ」「iTunes Store」「App Store」はいずれ対応してほしいところだ。
このほか、アプリに関係なく、住所として認識されたリンクや、Webページへのリンクとして認識されたURLをプレスすると、それぞれマップやSafariによるPop表示が行われる。
このPeek&Popの機能に慣れると、日々の生活の中で、実はここまでチラ見(Peek)の需要があったのかと驚かされる。
Webのカタログを見ていて、いくつか用意された商品ページへのリンクの中から「あれ、自分が欲しいのはこれだっけ?」と思ったら、そのリンクをプレス。するとページを移動することなくチラ見できるので、間違っていたら指を離して、次の商品、また次の商品とリンクをプレスしていく。ページを行ったり来たりするわずらわしさもなければ、タブを開き過ぎてしまう面倒さもない。
調べ物をしているときには、関係ありそうなWebページのURLをメモにかたっぱしからコピー&ペーストしておく。個々のリンクをプレスすればSafariのアプリに切り替えず、メモアプリから中身をのぞくことができる。
ほかにも、iPhone 6sのカメラモードで取材写真を撮っているときに、「あれ? このアングルからの写真は撮ったっけ?」と思ったら左下のサムネイルをプレスすると直前に撮った写真をチラ見できる。
このPeek&Popで、どれだけ操作が楽になったかを考えると、この機能のためだけにiPhone 6sシリーズを買っても損はないのではないかと思えてくる。
だが、クイックアクセスとPeek&Popですら、3D Touchの可能性の表面をほんのちょっと触っただけに過ぎない。今後、アップルや公開されたAPIを使って対応アプリを作る開発者らが、3D Touchでどんな可能性の扉を開いてくれるのかと考えるとゾクゾクしてくる。
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