「夜の金糸雀」森明日香著
「夜の金糸雀」森明日香著
12歳で天涯孤独の身となったおふゆは、師匠の歌川国藤の工房で、絵師見習として修業中。嘉永7(1854)年晩秋、独立して工房を出た兄弟子の国銀が両親とともに国藤を訪ねてきた。薬種問屋を営む父親・金右衛門が次男の国銀に同業への婿入り話を持って来たらしい。金右衛門は商売のために縁談をまとめたいようだが、国銀は絵師の仕事以外は考えられないと話し合いは決裂。
数日後、おふゆが深川の地本問屋を訪ねると、店頭に金右衛門が立っていた。そこは国銀が得意とする妖怪絵を扱っている店だ。突然、金右衛門が胸を押さえ、その場にうずくまる。(「初しぐれ」)
亡き人と残された人をつなぐ「死絵」を手掛けるおふゆを主人公にした人情時代小説「おくり絵師」シリーズ最新刊。
(角川春樹事務所 836円)