腐敗行為は経済と社会制度,民主主義の構造を傷つける。贈収賄に接すること自体が,本質的に堕落を生じうる。道義にもとる行為が社会全体に広がるのは,これが一因になっていると考えられる。社会規範は倫理的行動に影響する。だが意外なことに,世界の国々で腐敗の度合いが様々に違うのに,人を欺く生来の傾向はどの国でも同じだ。何が贈収賄に駆り立て,腐敗がどのように広がり,どうしたらそれを食い止められるのか,さらなる研究が必要とされている。
再録:別冊日経サイエンス249「科学がとらえた格差と分断 持続可能な社会への処方箋」
再録:別冊日経サイエンス236「心と行動の科学」
著者
Dan Ariely / Ximena Garcia-Rada
アリエリーはデューク大学の心理学と行動経済学のジェームズ・B・デューク記念教授で,同大学・先進後知恵研究センターの創設者。腐敗行為に関するドキュメンタリー番組を共同制作,多くのベストセラーを著している。ガルシア=ラダはハーバード大学ビジネススクールでマーケティングを専攻する博士課程の大学院生。社会的要因が消費者の意思決定にどう影響するかを研究している。
原題名
Contagious Dishonesty(SCIENTIFIC AMERICAN September 2019)