太平洋クロマグロ「絶滅危惧」に引き上げ 国際機関
【ジュネーブ=原克彦】国際自然保護連合(IUCN)は17日、絶滅の恐れがある野生生物を指定する最新版の「レッドリスト」で、太平洋クロマグロを「軽度の懸念」から「絶滅危惧」に引き上げた。アメリカウナギもニホンウナギが減った余波で密漁が増えたとして絶滅危惧に新たに加えた。いずれも日本の大量消費が影響しており、世界に保護対策の強化を求められる可能性がある。
IUCNは世界の科学者で構成する組織。レッドリストに法的拘束力はないが、野生動物の国際取引を規制するワシントン条約が保護対策の参考にしている。2年後に開く同条約の締約国会議に向け参加国が保護を提案すれば、6月にレッドリスト入りしたニホンウナギと合わせて規制対象になる公算が大きくなる。
太平洋クロマグロは「絶滅危惧種2類」に分類された。絶滅危惧種の3分類では、危険度は最も低い。IUCNは「主にアジア市場に提供するスシや刺し身のために漁業者に狙われている」とし、「大半は産卵する前の未成魚のうちに漁獲されている」ことが減少の原因だと指摘した。
大西洋クロマグロは2010年のワシントン条約締約国会議で禁輸には至らなかったが、結果として漁獲枠が大幅に減った。未成魚の漁獲は原則禁止となり、資源回復の効果も出た。太平洋クロマグロも関係国が規制強化に動いており、中長期的には飲食店や食卓に影響するとみられている。
一方、アメリカウナギは「絶滅危惧種1B類」になった。ニホンウナギと同じで、危険度では2番目に該当する。「ニホンウナギの減少を受け、東アジアのウナギ業者が稚魚をアメリカウナギなど他の種類で補おうとしている」ことが、米国で密漁の原因になっているとしている。
日本で消費されるウナギは大半がニホンウナギだが、一部のスーパーや飲食店はアメリカウナギも調達している。ヨーロッパウナギは既に絶滅の危険度が最も高い「絶滅危惧種1A類」に指定され、ワシントン条約でも規制対象になっている。