交流直流切り替え、見納めへ JR黒磯駅「地上式」
鉄道の電化路線には、電気が直流の区間と交流の区間があり、両区間にまたがって列車が運行するJR路線は全国に7つある。このうち東北線は唯一、境界の黒磯駅(栃木県那須塩原市)で列車をいったん停止させて切り替え作業をする「地上式」を採用する。その光景は鉄道ファンに長く愛されてきたが、来年1月に方式が変更され、ついに見納めとなる。
日本の鉄道は、首都圏や関西圏は直流が多い一方、東北や北海道などは変電所が少なくて済み、初期投資を抑えられる交流で電化されていった。
東京と盛岡を結ぶ東北線は、黒磯駅の南側は直流、北側は交流。この境界を列車が往来できるよう、1959年に地上式が導入された。
手順はこうだ。まず停止した車両のパンタグラフを下げ、架線から離す。その後、架線に流す電流を変更するとともに、車両側でも違う電流に対応できるよう回路を切り替え、パンタグラフを再び上げて出発する。
ミスはダイヤの乱れにつながるため、担当者は「作業にはとても気を使う」と話す。
かつてはもっと作業が大変だった。直流、交流とも走れる車両が少なく、貨物列車や寝台列車を引っ張ってきた車両(電気機関車)を切り離し、別の車両を連結し直す必要があったからだ。
現在、旅客列車は黒磯駅ですべて折り返す運用をしており、切り替えで停止するのは1日約40往復の貨物列車だけ。珍しい場所のため、遠方から訪れ、カメラを向けるファンも多い。
地上式から代わるのは、境界に設けたデッドセクション(電気を流さない区間)を、車両が惰性で走行する間に切り替える「車上式」だ。1月初めに導入工事を実施することが決まった。
栃木県の鉄道サークル「なすてつ」代表の小島好己さん(46)は「鉄道ファンにとっては貴重な場所。残念な気持ちはあるが、時代の流れなのでやむを得ない」と話す。〔共同〕
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