「フォトハラ」にご用心 SNS無断投稿、トラブルに
他人が写った画像を無断でインターネット上の交流サイト(SNS)などに公開する行為が、「フォト(写真)」と「ハラスメント(嫌がらせ)」を組み合わせた「フォトハラスメント(フォトハラ)」として問題視されている。悪意のない投稿でも相手に不快感を与えたり、実害が生じたりする恐れがあり、専門家は慎重な投稿を呼びかけている。
「不特定多数が見られる場所に写真を公開しないでほしい」。東京都内の20代男性会社員は大学時代のサークル活動の集合写真をツイッターに投稿したところ、サークル仲間の女性から苦情を受け、慌てて削除した。「大学の卒業アルバム用に保管していた集合写真を安易な気持ちで載せてしまった」と深刻に反省する。
写っている人に断りなくツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどに写真を公開し、写った人らに迷惑を与える行為は「フォトハラ」と呼ばれる。
一部のSNSには「タグ付け」と呼ばれる機能があり、写った人の名前などの情報をひも付けることで、その人のライムラインにも同じ写真が投稿される。許可なくタグ付けすれば不都合な写真が先方のタイムラインで公開され、迷惑をかけたり実害を生じさせてしまう恐れがある。
ある弁護士が相談を受けたケースでは、20代の女性会社員が有給休暇を利用して友人と海外旅行に行った。旅行先で撮った写真を、友人がSNS上でタグ付けして投稿。女性のフェイスブックのタイムラインに写真が現れ、休暇の理由を会社に偽って申告していたことが同僚や上司に知られてしまった。
経済産業省の外郭団体「情報処理推進機構」(IPA)が男女5千人に行った意識調査によると、インターネット上で最も「問題がある」と認識されていた行為は「友人と一緒に写った写真を勝手にブログに貼り付けて公開する」ことで、回答者の54%が問題視していた。
総務省が若者の情報リテラシー教育のために毎年度発行する「インターネットトラブル事例集」は2016年度版から「写真投稿」に言及。「友人が写っているものを(SNSなどに)投稿すれば、その友人を同じ危険(つきまといなど)にさらすことになりかねない」と注意を促した。
子供たちの写真をホームページやブログに掲載することが多い小中学校などは、かなり徹底した対応を進めている。
宇都宮市立平石中央小学校は入学時、保護者に写真利用に関する承諾書にサインをもらったうえ、写真掲載時には個人が特定されないように画質を落としたり、後ろ姿の画像を使ったりしている。角田初男校長は「一度載ってしまうと消せないというネットの特性から、気を配る保護者が増えてきた」と語る。
ネットトラブルに詳しい清水卓弁護士は「フォトハラで被害を受けた人物はプライバシーの侵害を主張でき、不法行為にあたるとして損害賠償を請求できる場合もある」と指摘。悪意がなくても法律上の問題に発展する可能性があるとし「投稿する際は相手の許可を取るか、確認が取れない人がいる場合は投稿を控えるなどの配慮が必要だ」と強調している。