米国務長官、中東関与継続を表明 イランは敵視
【ワシントン=中村亮】ポンペオ米国務長官は10日、訪問先のエジプトの首都カイロで、トランプ米政権の中東政策について演説した。シリアからの米軍撤退の方針を堅持する一方で「強力で安全な中東は米国の国益だ」と語り、地域の安定に向けた関与を続ける考えを表明した。イランを強く非難した上で、同国の封じ込めに向けた協力を中東諸国に呼びかけた。
米政府高官が中東政策を包括的に説明するのはトランプ氏が2018年12月にシリアからの米軍撤退を表明した後では初めて。米軍のシリア撤退方針を受け、中東諸国は米国の関与低下を懸念しており、こうした不安の払拭を狙った。
ポンペオ氏は「シリアの米軍は撤退するときだ」と強調しつつ「米国はテロ組織の戦闘員がいなくなるまで退去することはないと明確にしておきたい」とも語った。過激派組織「イスラム国」(IS)壊滅に向けた有志国連合の空爆作戦への参加も継続する考えを示した。シリアの安定に向けて「パートナー国はもっと力を注ぐべきだ」と協力を訴えた。
11年に始まったシリア内戦はアサド大統領の政府軍がロシア、イランの支援を受け、優位を固めた。この状況で米軍が撤退すればイランへの圧力が弱まり、地域の安定を損なうとイスラエルなどは懸念する。ポンペオ氏は「イランの軍事的な冒険主義に対する自衛権の行使を完全に支持する」と強調した。イスラエルとの軍事協力を加速すると説明した。
シリア駐留の米軍はIS掃討を名目に、トルコがテロ組織とみなすクルド人武装勢力を支援している。トルコが米軍とクルド人勢力の協力を強く非難しているが、演説ではこの問題への言及はなかった。
イランをめぐっては対抗姿勢を改めて示した。イランは中東のイエメンとレバノンでそれぞれシーア派武装勢力を支援していると非難。「イランが現在の行動を変えない限り地域の発展はない」と指摘した。18年11月に完全復活したイランへの経済制裁への協力を各国に求めた。
トランプ政権は18年5月にイランに対し、ウラン濃縮の完全停止や弾道ミサイル開発停止など12項目を要求しており、ポンペオ氏は演説で引き続き12項目の実行を求めると強調した。
イスラエルとパレスチナの和平の実現にも注力する考えを強調した。
演説は、09年に同じカイロで演説したオバマ前大統領の中東政策からの転換を印象づけた。ポンペオ氏は、オバマ氏が化学兵器を使用したシリアのアサド政権への軍事攻撃に踏み切らず、内戦の激化に拍車をかけたと指摘し「(米国の)後退の後には無秩序状態がやってくる」と批判した。トランプ政権はアサド政権の関連施設を2回攻撃しており「我々は傍観しているだけではない」と強調した。
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