株での資金調達、ピーク比半減 企業に「資本コスト」浸透
上場企業のエクイティファイナンス(新株発行を伴う資金調達)が低調だ。2019年1月は7年ぶりに、月間ベースでの件数がゼロになった。18年度(18年4月~19年3月)の総額も直近のピークだった13年度の半分以下に減りそうだ。株価が調整局面に転じて発行条件が不利になったうえ、「資本コスト」の概念が浸透し「株式での資金調達は高いコストが伴う」との認識が企業に広がったのが背景だ。

エクイティファイナンスは、増資や新規株式公開(IPO)、将来株式に転換する可能性がある新株予約権付社債(転換社債=CB)などの方法がある。
日本証券業協会のまとめによると、18年度は1月までで1兆585億円と、13年度(2兆7957億円)の約4割の水準にとどまる。1件あたりの調達額も65億円とピークの6割弱になっており、案件の小粒化も進んでいる。
エクイティファイナンスが減少している背景には「株式発行で調達した資金には高いコストがかかっていることを理解する企業経営者が増えてきた」(ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏)ことがある。
18年に改定されたコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)は、資本コストを経営指標に取り入れるよう促した。投資家の期待リターンを示す資本コストは企業によっても異なるが、社債発行や銀行借り入れより高い。これが「企業に安易な新株発行を思いとどまらせるけん制になっている」(井出氏)。株価が下落基調になったことで、足元ではこの傾向に拍車がかかっている。
企業の手元資金が潤沢で資金需要が減っていることや、低金利の長期化で社債や借り入れによる資金調達コストが下がっているのも影響している。