東レ、M&Aで1000億円 水処理膜など2社買収
東レは27日、同社が成長製品とする水処理膜と炭素繊維の海外2社を約1000億円を投じて買収すると発表した。韓国の水処理膜大手のウンジンケミカル(ソウル市)を傘下に収めることで、同製品で世界首位の米化学大手ダウ・ケミカルに販売シェアで迫る。炭素繊維世界3位の米ゾルテック(ミズーリ州)の買収も正式発表した。買収で積極攻勢に転じることで低価格品を拡充し、新興国など成長市場で事業拡大を狙う。
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東レの韓国現地法人がウンジンケミカルの株式56.2%を取得する優先交渉権を入札方式で取得。韓国の主要株主から株式を購入し、年内にも子会社化する見通し。取得金額は明らかにしていないものの、約400億円とみられる。ウンジンケミカルの12年12月期の売上高は800億円。
ウンジンケミカルは水をろ過する逆浸透膜(RO膜)や高機能繊維などを生産している。逆浸透膜は海水淡水化設備や家庭用浄水器などで幅広く使われる。東レの世界シェアは25%程度。日覚昭広社長は「(韓国社の買収で)3割弱に達する」と語った。30%強のダウに規模で対抗できるようになる。
東レは海水淡水化や排水処理など大型設備向けの高性能品に強い。一方、ウンジンケミカルは家庭用浄水器向けが主力で顧客に重複が少ない。
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東レの藤川淳一副社長は買収時期について「若干時間がかかる。中国当局による独占禁止法に違反するかの審査などを待つからだ。ただ基本的に問題ないと考えている」と指摘した。
東レの韓国子会社は現地に生産拠点があり、ウンジンケミカルの工場も近い。「(生産面でも)高いシナジー効果が見込める」(藤川副社長)
炭素繊維大手ゾルテックの買収額は5億8400万ドル(約580億円)。ゾルテックの12年9月期の売上高は186億円。世界首位の東レと3位のゾルテックを合わせた生産能力は世界全体の30%超を占め、2位の帝人を20%近く引き離す。
東レは現在の中期経営計画で、繊維を提供するだけでなく衣料品生産にも乗り出すなど、祖業の繊維事業の改革などに取り組んできた。炭素繊維では国内外で生産能力を増強してきた。同社は総額2000億円のM&A枠を設定していたが、大型買収はほとんど実施していなかった。