「新人研修です。名刺交換を」 渡したら…迷惑勧誘
不動産購入しつこく迫る 職場に電話、訪問も
「新人研修で名刺交換をお願いしています」と路上で声をかけられ、応じた人が投資用マンションの購入などをしつこく勧誘されるトラブルが相次いでいる。電話での勧誘にとどまらず、「名刺交換のお礼」と称し、いきなり職場を訪ねてくるケースも。研修に協力しようという"親心"につけ込んだ手口で、国民生活センターは注意を呼びかけている。
30代の男性会社員は今年5月、首都圏の駅前で「新人研修中」という営業マンに声をかけられ、名刺を交換した。すると職場に執拗(しつよう)に電話がかかってくるようになり、「名刺交換のお礼」だった内容は、徐々に投資用マンションの勧誘話に。断り切れずに2200万円で契約を結んでしまい、解約を考え消費生活センターに駆け込んだ。
東北南部の40代の男性会社員は同月、同じように名刺交換した若いOL風の女性から、さらに「商品説明の研修に協力してほしい」との電話を受けた。会ってみると賃貸マンション経営の勧誘。断ったが「資料を返してほしい」と言われて翌日も会うと、別の男も加わってしつこく勧められたうえ、帰宅時に最寄り駅までつきまとわれた。
こうした相談は数年前から、全国の消費生活センターに寄せられ始めた。首都圏では東京駅や新宿駅、池袋駅といったターミナル駅や、大規模なイベント会場の周辺などで、若いスーツ姿の男女が研修と称して名刺交換をもちかける姿が確認されている。
相談事例には「電話で勧誘を断ったら『話も聞かずに断るのは失礼だ、常識がない』と怒鳴られた」(今年7月、近畿地方の40代男性会社員)、「名刺を渡した当日、上司と職場を訪問されて勧誘を受けた」(5月、首都圏の30代男性会社員)といったケースも。
国民生活センターは「いきなり電話勧誘されるより、研修と言われて会うと冷たくしづらい。応援してあげようという気持ちを逆手に取る狙いもあるのでは」と指摘。「実際に企業研修の一環として行われている場合もあるかもしれないが、名刺は社名や電話番号など個人情報の固まりでもあるので、渡すのは慎重に」と呼びかけている。