大飯断層判断、10カ月の教訓 専門家頼みに限界
規制委の動き鈍く
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関西電力大飯原子力発電所(福井県)の敷地内を活断層が通るかどうかの評価はなかなか定まらなかった。昨年11月に現地調査が始まってから、関電は追加で巨大な試掘溝を掘るなどの対応を迫られ、活断層ではないとの結論が出るまでに10カ月を要した。少人数の専門家の意見に頼り、集約に悩む原子力規制委員会の限界も浮かんできた。
4人だけの議論
昨年9月に発足した規制委が活断層の認定で初めて手掛けた案件が大飯原発だった。現地調査団を構成した学者は4人。原子炉の北側の海岸付近で見つかった地層のずれに、活断層ではないかとの疑いが浮上する半面、当初から活断層ではなく地滑りの跡とみる専門家もいた。
活断層の疑いを深める議論を主導していたのは渡辺満久・東洋大教授。変動地形学の専門家で、活断層が原発に及ぼすリスクについて警告を続け、今回の調査を通じても「沖合の活断層に連動した可能性がある」などと主張してきた。
これに対し岡田篤正・立命館大教授は専門に偏りがあるとして「別の専門家も入れてほしい」と体制の拡充を要望。しかし規制委は動かず、4人の専門家で判断する構図は変わらないできた。
2日に出た「活断層ではない」とする判断の決め手となったのは、調査団でただ一人の地質学者である重松紀生・産業技術総合研究所主任研究員の発言だった。鉱物の分析結果などから断層が40万年前より大幅に古いことを認定し「(関電の言い分は)おおむね妥当」と表明。調査団の判断を方向付けた。広内大助・信州大准教授は「原発立地時に認定した断層と今回の結果との関係をきちんと整理してほしい」と訴えた。
正式な評価書をまとめるには、調査団以外の専門家の審議を経る必要があり、さらに数回の会合を開くことになる。
規制委は大飯原発の案件が昨年9月の発足前に持ち上がったこともあり、過渡的な対応として専門家の判断に委ねる構えを示してきた。今後はより独自性の高い判断が問われるが、専門家の意見をどう取り入れるかは固まっていない。
東通も確証なく
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決着していない案件は多い。日本原子力発電敦賀原発(福井県)では2号機直下の活断層を5月にいったん認定した後、日本原電が異議を唱え、活断層を否定する追加調査報告を出した。
敦賀原発に対しては規制委の判断が固いとみられるのに対し、東北電力東通原発(青森県)への見方は揺らぎつつある。昨年12月の現地調査だけで結論が出ず、今月3~4日に2回目の調査に入るが、確証が得られるメドはついていない。
旧経済産業省原子力安全・保安院では活断層の調査期限はなかった。専門家から活断層の疑いが浮上しても、電力各社は運転を優先して調査を後回しにするなど、審査が長引く傾向にあった。
昨年9月に発足した規制委は事業者の都合に配慮してきた方式を転換し、専門家の指摘があった6原子力施設には調査団の結論が出るまで再稼働の審査に入らないことにした。今回の大飯のように、少数の専門家の判断に揺さぶられる構図もそこから生まれている。
原子炉直下に活断層が認定されれば運転できなくなる電力各社にとって規制委の認定は経営に直結する死活問題だ。追加調査の要請にも最優先で対応している。