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ソフトバンク、成長維持へ大きな賭け 2兆円買収

(更新)
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孫正義社長率いるソフトバンクが勝負に出た。米携帯電話3位のスプリント・ネクステルを買収する。5位のメトロPCSコミュニケーションズの買収も検討している。2兆円超の巨額投資に成算はあるのか。

12日の東京株式市場では、ソフトバンク株の売買代金が前日の約6倍に膨らみ、東証1部の首位に浮上した。株価は17%安と急落したが、「もっと下落する」「長期的な成長力を確保できる」と思惑は交錯した。

今回の買収には明と暗がちらついている。

明るい面は金融環境だ。「安いお金と魔法の円を持つ日本企業は、外国企業を買う機会を迎えた」。米シティグループ副会長、スティーブン・ボルク氏は強調する。

金融緩和が演出した0.7%台の低い長期金利は、巨額の資金調達を容易にする。今回も早速、3メガ銀行が融資の検討に入った。1ドル=80円を超える円高も、円建ての買収金額を抑える。

6年前、同社は約2兆円で英ボーダフォンから日本法人を買収して携帯電話に参入した。当時は長期金利が1.7%台で円相場は1ドル=116円台。格付けも上昇し、環境は激変した。

米通信の競争激化でスプリントの株価は2006年末から7割も下落。円高とあわせて「お買い得感」も増した。

暗部は事業リスクだ。まず相乗効果。統合で通信設備の調達費用を抑制できる期待もあるが、UBS証券の梶本浩平アナリストは「日米で使っている周波数帯が異なり、効果を出すには時間がかかる」と指摘する。

外国企業と融合できるかどうかも未知数だ。解消に追い込まれたNTTドコモと米AT&Tワイヤレスとの資本提携に見られるように、人気端末や通信規格が異なる通信業界の国境を越えた再編には成功例が少ない。

失敗すれば屋台骨が揺らぐ。米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は12日、投資負担を理由にソフトバンクの格付けを引き下げる検討に入った。

だが、長期的な成長に賭ける強い意志は創業者ならでは。2社を一挙に買収して世界的な統合を主導する大胆な発想は、鉄鋼世界最大手、アルセロール・ミタルを率いるラクシュミ・ミタル氏とも重なる。

インドの貧困地帯生まれ。創業後はおびただしい数の海外不振企業を買収し、再建して1代で世界の頂点に立った。

内需の成熟などを背景に「日本市場だけで生き残れるというのは幻想」(西田厚聡・東芝会長)との声は強まる一方だ。孫社長の決断の行方は、グローバル化に活路を求める日本企業全体の成長戦略にも影響する。(編集委員 梶原誠)

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