STAP問題、小保方氏に決着委ねる 批判回避狙う理研
生物学の大発見として話題を呼びながら存在が揺らいでいたSTAP細胞を巡る論争は、小保方晴子研究ユニットリーダー自らが決着をつけることになった。理化学研究所が取り組む検証実験に参加して、STAP細胞の作製に改めて挑む。存在を否定する指摘が相次ぐなか、小保方氏自らが主張する存在を証明できるかは不透明だ。
理研が小保方氏に対して検証実験として与えた時間は5カ月間。4月の会見では「200回以上作製した」と語っており、STAP細胞を再現するには十分な時間だと判断した。
検証実験は理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市、CDB)の丹羽仁史プロジェクトリーダーが主導している。小保方氏は丹羽氏の指示を受けながら再現に取り組む。
実験では英科学誌ネイチャー誌で公表したSTAP細胞の作製手順を進める。生まれたばかりのマウスの細胞から、刺激を加えるだけで新しい万能細胞が本当にできるのかを確認する。小保方氏以外の研究者は再現できていない方法だが、論文に載った手順を忠実に進めることで小保方氏自らが証明する機会を与えることになる。
STAP細胞の論争を巡っては、「理研対小保方氏」という図式が続いていた。理研にとっては小保方氏だけに研究不正の責任を負わせることに対して批判が高まっており、小保方氏の実験参加にはこうした批判をかわす狙いもある。
検証実験に意欲をみせていた小保方氏側も理研と対立した態度を一変させ、実験参加との引き換えに論文取り下げに合意した。関係者によると、理研側が撤回を条件に、検証実験の参加を持ちかけ、小保方氏が同意したという。
しかし、4月に始まった理研の検証実験はうまくいっていない。CDBの丹羽氏が主導しているが、STAP細胞どころか、似た細胞もできていないという。
さらにSTAP細胞の論文では、新たな疑いの指摘も後が絶たない。同じ万能細胞であるES細胞(胚性幹細胞)と見間違えたのではないかという疑いもある。こうした疑問を払拭することができるかは未知数だ。理研側も検証実験に参加させても、STAP細胞が証明できる確率は低いとみている。それでも、もし再現できれば理研としても新たな研究成果として論文を公表できることになる。
また理研は一度は調査しないと決定した補足的な論文に関する疑義について、予備調査を実施する。主論文についても研究不正とされた2点とは別の疑義についても調べ直す可能性もある。その間、小保方氏の懲戒委員会の審議は停止する。事実上、検証実験の結果が出るまでは処分は保留するという「これまでに例がない」(理研広報室)判断をした。