シニア需要飲み込むウィルコム 「詐欺撃退機」発売
詐欺犯の番号一覧を配信、着信をブロック
ウィルコムは4日、「振り込め詐欺」や「オレオレ詐欺」などの迷惑電話を自動判別し着信させない「迷惑電話チェッカー」を発売した。固定電話につないで用いる。以前は中高生が主体だった利用者層が「ここ1年ほどでシニア層が急激に増えた」(宮内謙社長)ことを受けて開発に踏み切った。振り込め詐欺対策のアダプターでシニア層の需要を喚起する。通常のPHS対応の電話機やスマートフォン(スマホ)とのセット契約で割引を実施し、契約回線数増加に結びつける。3年契約が必要で、料金は月額700円。アダプターの価格は1万1760円だが、2年以上の継続利用で実質無料になる。
利用者の撃退履歴を集約、全員で共有
特徴は、利用者から詐欺犯と思われる電話番号を提供してもらいそれを利用者全員で共有する点。固定電話回線で「ナンバーディスプレイ」などの番号通知サービスを使用している必要がある。ウィルコムのPHS回線を内蔵しており、後述する「拒否」情報の送信や迷惑番号リストの受信ができる仕組みだ。
同アダプターには「許可」「拒否」というボタンが付いており、着信した電話が詐欺犯からのものと思われるときは利用者に「拒否」ボタンを押してもらう。この情報を随時サーバーで集めており、短時間に多数の「拒否」情報が集まったり警察当局から番号の連絡があったり一定の条件を満たすと、その電話番号をサーバー側で自動的に「迷惑電話番号リスト」に登録する。
この迷惑電話番号リストを「1日数回」(ウィルコム)の頻度で更新分を全利用者の同アダプターに配信。以降、詐欺犯が同じ番号を使って電話をかけても、迷惑電話番号リストに登録されている番号であれば自動的に着信拒否し、固定電話機の着信音も鳴らさない仕組みだ。着信拒否している旨は、利用者側には赤いランプと音声ガイダンスで通知するが、詐欺犯側には通知しない。「詐欺犯側はトゥルル……という呼び出し音が鳴り続けている状態」(ウィルコム)になるという。
振り込め詐欺を防止しようと警察庁などはシニア層に対し、自宅にかかってきた怪しい電話に注意するよう呼びかけてきた。しかしながらいっこうに減っていない。警察庁によると、振り込め詐欺やオレオレ詐欺などを合わせた「特殊詐欺」の認知件数は、2013年1~5月の累計で前年同期比54%増の4564件。うち金銭をだまし取られるなど実害があったのは4222件(同52%増)、被害総額は176億円(同45%増)と、件数・金額とも増加傾向にある。
ウィルコムは最新の迷惑電話番号リストを使って詐欺犯からの電話を自動拒否できる仕組みが詐欺防止に効果的だと判断。製品化を決めた。
ただ課題もある。詐欺活動が始まった直後や詐欺が小規模なケース、詐欺犯が使用する電話番号を変えた場合には着信を拒否できない。また詐欺と無関係な一般企業などの電話番号が誤って迷惑番号リストに登録されてしまうと、重要な電話がつながらなくなるリスクもある。「リストから外すには、個別に問い合わせいただくことになる」(ウィルコム)とするが、具体的な問い合わせ先などはウェブサイトなどで案内されていない。
(電子報道部 金子寛人)