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[社説]マイクロソフト復活の教訓

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米巨大IT企業のなかで、マイクロソフトの存在感が高まっている。時価総額はグーグル持ち株会社のアルファベットを上回り、世界最大のアップルに迫る。今月13日にはゲーム大手のアクティビジョン・ブリザードを円換算にして10兆円規模で買収した。

パソコンからスマートフォンへの変化の機を逃して一度は衰退したものの、いまや完全復活を果たした感がある。その軌跡は日本企業にとっても示唆に富む。

マイクロソフトは基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」でパソコン市場を制した。だが2007年の「iPhone」発売で急成長したスマホ市場ではアップルやグーグルに主導権を奪われた。

再成長に導いたのは14年に3代目の最高経営責任者(CEO)に就任したサティア・ナデラ氏だ。ビル・ゲイツ氏ら創業世代の経営トップが執着したウィンドウズを格下げし、市場が拡大するクラウドコンピューティングに事業の基軸を転換した。

企業文化の改革も進めた。独占批判にさらされたOS事業とは異なり、クラウドではグローバル企業と広く提携して各社のデジタル化を支援する戦略に切り替えた。欧米の独禁当局が反発したアクティビジョン買収では、ライバル企業にもコンテンツを提供することなどを確約して批判をかわした。

文章や画像を自動で作る生成AI(人工知能)も自前主義にこだわらず、スタートアップへの出資を通じてグーグルなどに先行した事業化を進めている。過去に大きな成功を収めた巨大企業でも「イノベーションのジレンマ」から脱せることを証明したといえる。

パソコン用OSを巡ってマイクロソフトは1990年代末に米司法省に独占禁止法違反で訴えられ、一時は会社分割命令も出された。最終的に和解したものの、同社が市場を支配する構図は変わらず競争政策に教訓を残した。各国の独禁当局は、クラウドや生成AIでの新たな独占や競争阻害に対する監視を忘れてはならない。

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