[社説]日清におごりはなかったか
カップ麺の販売価格を不当に引き上げるよう小売業者に求めたとして、日清食品が独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会から警告を受けた。消費者が不利益を被る悪質な行為であり、日清は猛省すべきだ。
同社は2022年と23年の2回にわたり、「カップヌードル」など主力5商品の希望小売価格を引き上げた。この際にスーパーなど全国の小売業者に対し、指定した水準まで販売価格を上げるよう要求していた。
他の小売業者に対しても同様の要求をしていると説明したり、要求を受け入れるまでセール時の卸価格の値引きには応じられないと示唆したりしていた。担当者が店舗を回り、約束した価格で売っているか確認までしていたという。
日清は値崩れでブランドイメージが低下することを懸念したもようだ。だが、店頭価格を決める権利は原則、小売り側にある。公取委は同社の行為が自由な競争を阻害し、独禁法で禁じている「再販売価格の拘束」にあたる恐れがあると判断した。
物価高が続き、相次ぐ食品の値上げはとくに家計の負担となっている。少しでも安く買おうと複数の店舗を比較して回る人も多い。こうした節約の努力を裏切るような行為は消費者の不信を招く。
高い商品シェアを持っていれば、小売店に対するメーカーの交渉力も大きくなる。一線を越えた行為の根幹にはトップ企業としてのおごりがあったのではないか。
日清は積極的な広告展開などマーケティングに力を入れているが、消費者の信頼を失えばブランドが大きく毀損することを改めて肝に銘ずべきだ。同社は警告を受け、営業活動と教育体制などの改善を進めるという。経営トップ主導で確実な実行を求めたい。
公取委によると、食品業界では類似した行為も見られるという。不当な値上げは消費者に不信感を広げ、適正な価格転嫁の機運に水を差す。日清への警告を各社は他山の石とする必要がある。