リスキリング支援「5年で1兆円」 岸田首相が所信表明
臨時国会召集 旧統一教会問題「説明責任果たす」
第210臨時国会が3日召集された。岸田文雄首相は衆院本会議で所信表明演説し、個人のリスキリング(学び直し)の支援に5年で1兆円を投じると表明した。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題について「国民の声を正面から受け止め説明責任を果たす」と強調した。
経済対策の説明に時間を割いた。政権が重点的に取り組む3分野に「物価高・円安への対応」「構造的な賃上げ」「成長のための投資と改革」を掲げた。
物価高への対応に関し「なんとしても国民生活と事業活動を守り抜く」と唱えた。来春にかけての懸念に電気代の上昇を挙げ「電力料金負担の増加を直接的に緩和する前例のない思い切った対策を講じる」と言明した。
円安を意識した政策も列挙した。11日に海外からの個人旅行を解禁することを紹介し「訪日外国人の旅行消費額で年間5兆円超をめざす」と意気込んだ。海外からの半導体や蓄電池の工場誘致や、企業の国内回帰、農林水産物の輸出拡大をはかる考えを示した。
持続的な成長のため科学技術・イノベーションやスタートアップ、脱炭素、デジタル化に重点を置くと提示した。
エネルギー安定供給の確保に向け「原子力発電の問題に正面から取り組む」と話した。十数基の原発再稼働や次世代革新炉の開発・建設に関して年末にかけて専門家による議論を重ねる方針だ。
構造的な賃上げの実現に向け「賃上げと労働移動の円滑化、人への投資という3つの課題の一体的改革を進める」と強調した。
賃上げで企業が高度人材を呼び込み、生産性を高めてさらなる賃上げが生じる好循環につなげると提起した。
年功序列的な職能給からジョブ型の職務給への移行、リスキリングへの支援を打ち出した。「企業間、産業間での労働移動の円滑化に向けた指針を来年6月までに取りまとめる」と表明した。
旧統一教会と閣僚や自民党議員との接点への批判を意識し、信頼回復に努める姿勢を示した。「消費者契約に関する法令などの見直しを検討する」と明らかにした。宗教団体への高額の寄付が現行制度での救済対象になりにくいとの指摘を踏まえた。
安倍晋三元首相の国葬に関して「国民からいただいた意見を重く受け止め今後に生かす」と言及した。
新型コロナウイルスへの対処については「科学的知見に基づきながらできるだけ平時に近い社会経済活動が可能になるようにする」と言明した。マスクの着用について「引き続き屋外は原則不要だ」と説いた。
変異型「オミクロン型」に対応したワクチンの接種を促す。「10~11月に1日100万回を超えるペースの体制を整備する」と語った。
静岡県の認定こども園で起きた通園バスの女児置き去り死事件への対処を掲げた。「送迎バスの安全装置の義務化と支援措置を含む緊急対応策を講ずる」と訴えた。
ウクライナ情勢への警戒を強める。東・南部4州のロシアへの編入に向けた動きや同国の部分動員令に触れ「新局面に入ることが懸念される事態となっている」と危機感を表した。
9月30日には防衛費増を議論する有識者会議の初会合を開いた。必要な防衛力の検討や予算規模の把握、財源の確保を進める。「(年末までの)予算編成過程で結論を出す」と説いた。
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