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公的年金GPIF、23年度運用45兆円プラス 最高を更新

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公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2023年度の収益は45兆4153億円のプラスとなり、過去最高を更新した。株高を追い風に直近5年間の年金積立金の運用収益は19年時点の想定の約6倍となった。運用に求められる想定利回りは今後引き上がる可能性があり、GPIFへの期待は高まる。

資産ごとの収益は外国株式が19兆円、国内株式が19兆円、外国債券が7兆円のプラスだった。内外の株高が収益を押し上げた。円安の進行で外貨建て資産の円ベースの評価額も増えた。一方国内金利が上昇(債券価格は下落)し、国内債券は1兆円のマイナスとなった。

年金積立金は将来世代の年金給付を補うのが目的だ。運用で継続的に収益をあげられれば年金財政の安定につながる。厚生労働省によると19〜23年度の5年間に積立金の収益は106兆円程度となり、19年の想定の約6倍になった。24年3月末時点の積立金の残高も291兆円に達し、想定より70兆円上振れしている。

好調な積立金の運用は年金の財政状況にもプラスに働く。

厚労省は3日、年金財政を点検する財政検証の結果を公表した。年金の受給額が現役世代男性の平均的な手取り収入の何%にあたるかを示す「所得代替率」は中長期的に一定の経済成長が続く成長ケースで37年度に57.6%と示した。

19年時点の検証では2040年以降に50〜52%としていた。積立金が当初想定より膨らみ、所得代替率の低下が抑えられる見通しとなった。GPIFの宮園雅敬理事長は5日に開いた記者会見で「年金財政に貢献している」と述べた。

GPIFに求められる目標運用利回りは今後、引き上がる可能性が高い。現在の運用目標は年間で「賃金上昇率を1.7%上回る水準」と設定されている。24年度の春季労使交渉(春闘)賃上げ率は5%を上回る高水準だった。今後も賃金上昇が続けば、GPIFに期待される運用利回り水準が高まることになる。

厚労省は今回の財政検証で4つの経済シナリオを策定した。各シナリオ別に予想賃金上昇率も盛り込んでいる。その前提に基づき今後の想定運用利回りを計算すると1.8〜5.4%となる。前回(19年)の財政検証では1.3〜5.0%だった。

賃金が伸びないデフレ時代において、賃金上昇率を上回る運用利回り達成は比較的容易だった。株高の追い風も吹いた。今後、政府・日銀が目指す賃金と物価の好循環が広がれば、目標達成の難度は上がる。GPIFの宮園理事長は「山高ければ谷深しという言葉もある」と述べ、不安定な市場環境に備える考えを示した。

GPIFは資産構成の見直しを含む新たな運用指針の策定に向けて議論を始めている。今回の財政検証で想定利回りが上昇したことを受けて、リスク資産への配分を増やすかどうかが焦点の一つとなっている。245兆円を運用する世界最大規模の年金基金だけに、国内外の市場関係者の間で注目度は高い。新指針は24年度末までに公表され、25年度から5年間の運用に反映される見通しだ。

(犬嶋瑛)

年金積立金の運用好調、当面の給付には影響なし


年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用する公的年金の積立金が増えても、高齢者がいま受け取っている年金がすぐに増えることはない。他方、今後も好調な運用が続けば、年金財政が安定し、抑制措置が想定より早く終わる可能性がある。

国民全員が加入する国民年金(基礎年金)と会社員らが入る厚生年金は、毎年の年金額の伸びを賃金・物価の伸びよりも低く抑える「マクロ経済スライド」という仕組みがある。少子高齢化で保険料を納める現役世代が減り、年金を受け取る世代が増えることへの対策だ。この抑制措置は、年金財政が将来にわたって安定する見通しが立つまで続く。

厚労省が3日公表した公的年金の将来見通し「財政検証」によると、基礎年金の抑制措置は最も終了が早いケースでも2037年度まで続く。基礎年金の積立金が想定よりも増えれば、人口動態や労働参加などとの総合判断で、37年度よりも早く抑制措置が終わる可能性がある。

厚生年金の抑制措置は財政検証では早ければ24年度で終了する見通しだ。その場合は積立金が増えても抑制期間の短縮にはつながらないため、年金水準を押し上げる効果はない。

(中川竹美)

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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