日銀・田村直樹委員、25年度後半に「最低1%まで利上げ」
日銀の田村直樹審議委員は6日午前、2025年度後半には「少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げておくことが、物価上振れリスクを抑え、物価目標達成のうえで必要」との考えを示した。
政策金利を現状の0.5%から0.75%へ引き上げたとしても「引き続き(物価上昇を考慮した)実質金利は大幅にマイナスであり、経済を引き締める水準にはまだ距離がある」とも強調した。
松本市で開いた金融経済懇談会で講演した。田村氏は、日銀が金利据え置きを決めた24年12月の決定会合でも、据え置きに反対して利上げを提案しており、金融正常化に積極的な「タカ派」の委員とみられている。
日銀は1月の金融政策決定会合で追加利上げを決め、政策金利を17年ぶりの水準である0.5%へと引き上げた。政策金利が0.75%になれば1995年以来の高さとなる。田村委員は追加利上げが必要と考える時期については「適切に判断したい」として、明示しなかった。
田村氏は24年9月の講演で、26年度までの見通し期間の後半に「少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げていく」ことが必要と述べており、今回の講演では自身の利上げ想定時期を前倒しした形となる。25年度後半には、政府・日銀が掲げる2%物価目標について「実現したと判断できる状況に至る」とも語った。
物価の動きについては、人手不足にともなう人件費の上昇や価格転嫁の動きを踏まえると「上振れリスクが膨らんできている」と説明した。2%超のインフレが「3年近く続いている」うえに、コメの価格上昇が「消費者マインドにダメージを与え、個人消費に悪影響を与えないか懸念している」と指摘した。
田村氏は家計や企業が予想する将来の物価の変動率を示す「予想物価上昇率」が「しっかり高まっており、おおむね2%程度に達している」とも言及した。
予想物価上昇率は、一時的な変動を除いた物価の基調を判断するうえで重要な材料となっている。日銀が1月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で示した複数の集計結果では、多くが1%台半ばを示しており「緩やかに上昇している」と記述した。
日銀の24年12月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、企業の5年後の物価見通しは2.2%とすでに2%を超えている。
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