スパコン、富岳4位に後退 米国勢が世界トップ3独占
世界のスーパーコンピューターの計算速度を競う最新のランキングで、米国の「フロンティア」が4期連続で首位だった。生成AI(人工知能)の開発競争が激しさを増すなか、上位3位までを米国勢が占めた。理化学研究所と富士通が開発した「富岳(ふがく)」は前回の2位から4位に後退した。
専門家の国際会議が米国時間13日、半年ごとに集計するランキングの最新版を公表した。スパコンは先端技術研究のインフラの役割を担っており、国の科学技術力を示す象徴として注目を集めている。
米オークリッジ国立研究所が運営するフロンティアは1秒間に119京回(京は1兆の1万倍)の計算性能を示し、2022年5月から4期連続で首位を維持した。今回のランキングでは唯一、毎秒100京回以上の計算が可能な「エクサ級」スパコンだった。4位に退いた日本の富岳(1秒間の計算性能は44京回)とは2倍以上の差がある。
新たに米アルゴンヌ国立研究所の「オーロラ」(同58京回)が2位に入った。現在は試運転中で、完成すれば計算能力はフロンティアを上回ると見込まれている。初登場となった米マイクロソフトの「イーグル」(同56京回)も富岳を上回り3位に付けた。トップテンのうち、6つを米国勢が占めた。
スパコンは核実験や自然災害、気候などのシミュレーションに使われ、国の安全保障にも影響を及ぼす。最近は大量のデータの並列処理を得意とする画像処理半導体(GPU)を使ってAIの計算性能を高めたスパコンが目立ち、生成AIの開発においても重要性が増している。
米国は50億ドル(約7500億円)以上を投じて複数台のエクサ級スパコンの開発を進めてきた。能力でフロンティアを超えるオーロラが本格稼働を控えるほか、今回のランキングにはまだ登場していない米ローレンス・リバモア国立研究所の「エル・キャピタン」も設置が始まっている。
一方、ランキングの意味は変容している。今回上位10位の顔ぶれから外れた中国も多額を投じてスパコン開発を進めている。過去に世界一となった「神威太湖之光」の後継機も開発しているが、米中摩擦の影響などからランキングには申請していない可能性がある。
日本も富岳の後継機開発に向けた基盤技術の研究を進める。稼働開始は20年代後半以降となる見通し。長期的な技術動向を見極めながら、目標とする性能や用途を決めていく必要がある。
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