KADOKAWA、サイバー攻撃で特損36億円 補償・復旧に
KADOKAWAは14日、大規模なサイバー攻撃の影響により2025年3月期に36億円の特別損失を計上する見通しだと発表した。傘下のドワンゴが提供する動画共有サービス「ニコニコ動画」の停止などでクリエーターへの補償費用やサーバーなどの復旧費用に充てる。これに伴い連結純利益の見通しを前期比15%減の97億円と、従来予想の134億円から下方修正した。
サイバー攻撃は売上高で84億円、営業利益で64億円の減少要因となる見込み。身代金支払いの有無は明らかにしていない。25年3月期の営業利益は15%減の156億円と従来予想を9億円下回る見通し。ゲーム事業が好調なため売上高は5%増の2713億円とする従来予想を据え置いた。
特に影響が大きいのが、ニコニコ動画などのウェブサービスだ。営業利益ベースで48億円の減益要因となる。サイバー攻撃でサービスを利用できなくなってから8月5日に復旧するまで約2カ月を要した。数百ものシステムが連携するサービスをほぼ一から作り直す必要に迫られたためだ。
出版事業では書籍の製造・物流システムの障害により既刊本の出荷部数が一時は平常時の3分の1程度に落ち込んだ。サイバー攻撃が16億円の営業減益要因となる。8月から出荷部数を段階的に増やしている。
KADOKAWAへのサイバー攻撃を巡っては6月8日に大規模なランサムウエア(身代金要求型ウイルス)攻撃を含むサイバー攻撃を受けたことが明らかになった。グループの多くのサービスが使えなくなった。
同社は8月5日、合計25万人の個人情報が漏洩したと発表した。通信制の「N高等学校」などを運営する角川ドワンゴ学園の在校生や卒業生らの個人情報が含まれている。
サイバー攻撃の原因については、現時点で経路や方法は不明としたが、大手セキュリティー専門企業の調査では、フィッシングなどの攻撃でドワンゴの従業員のアカウント情報が窃取されたと推察されるという。
14日発表した4〜6月期の決算は、売上高が前年同期比12%増の658億円だった。電子書籍が国内外で好調だったほか、アニメ「ダンジョン飯」や映画「首」の国内外の動画配信サービスでのライセンス収入などが好調だった。ただ、サイバー攻撃関連の特別損失20億円を計上し、純利益は10%減の34億円だった。
KADOKAWAは今回のサイバー攻撃について記者会見の場で説明していない。この日も同社が公開した動画を通じて業績への影響などを説明した。夏野剛社長は「関係するすべての皆様に多大なる心配と迷惑をおかけしていることを深くおわびする」と陳謝した。
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