『都市伝説解体センター』のレビュー行くぜ!
パブリッシャー:集英社ゲームズ
機種:PS5/Switch/PC
ジャンル:ミステリーアドベンチャー
発売日:2025/2/13
価格:1980円
Steamで体験版配信中
集英社ゲームズが送る完全新作のミステリーアドベンチャーだ。手掛けたのは『和階堂真の事件簿』を手掛けた墓場文庫。
怪異、呪物、異界の調査・解体を行う都市伝説解体センターの一員となり、様々な怪事件に挑んでいく内容だ。すべての事件を解体した後に残る物は……!?
集英社ゲームズが集英社パワーをフルに使って販促を行っており、東京ゲームショウでは体験台が仕込まれた巨大ピラミッドを建立し、ジャンプ+での読み切り外伝マンガの公開に、書店とのコラボ、凝りに凝った発売記念イベントの数々にと、都市伝説を流布する期待がハンパじゃなかった。
この巨大センター長が我らを見下ろす巨大ピラミッド、今見るとまたどっかに立てて欲しくなるな、
スタッフの過去作である『和階堂真の事件簿』が面白かったし、ビジュアルも題材も好みなので発表時から期待していたが大満足。これが2000円以下で買えるのとんでもねぇよ!
主人公は見えないものが見える「念視」の力を持つ福来あざみ(通称あざみー)。
自信の能力を相談しに都市伝説解体センターへと足を運ぶが、センター長である廻屋渉に丸め込まれ、そこの新人調査員として働くことになってしまう。
先輩である止木休美ことジャスミンさんと共に、センターに寄せられた様々な事件を解決していくストーリーだ。
ゲームシステムは単純。
調査場所である2Dのマップをあちこち調べ、キャラに聞き込みをし、手掛かりをすべて集めれば物語が進行する。マップは狭いので迷うことは無く、手掛かりを使った推理パートもあるが難易度は低い。
依頼される超常的な事件は謎の襲撃者、不気味な呪い、怪しげな施設、事故物件などバラエティ豊か。それが何の「都市伝説」に関連しているのかを調べて「特定」し、その背景や原因となるものを「解体」していくストーリー展開だ。
「ムムッ!集めた手掛かりを総合すると、それは都市伝説『ベッドの下の男』ですな!」みたいな感じで事件を追っていく。
上のセリフ喋ってるの誰だよ。
あざみーは眼鏡をかけることで「念視」を発動し、そこに残っている過去の痕跡を見ることが出来る。幽霊かな?とビビってたら残留思念だった。でも幽霊より怖い残留思念もあったりする。
一見何もないように見えても「念視」を発動させるとハチャメチャに物騒な痕跡が浮かび上がったり。調査が単純でも、単調になってないシステムだ。
様々な都市伝説が登場するので、昔からインターネットやってると「あったあった!」とワクワクさせられるし、豊富に用意されたドットのカットシーンやムービーも圧巻。
色数を押さえたドットによる表情の変化や陰影表現、質感は見応えバツグン。レトロ表現としてのドットではなく、現代のアート表現としてのドットを突き詰めている。
このドットで丹念に描かれるメインキャラも非常に魅力的で、「千里眼」の力ですべてを見通す安楽椅子探偵のセンター長、「念視」で現地調査を頑張る天然で世間知らずのあざみー、車の運転と暴力担当で頼れる先輩ジャスミンさんのバランスが良すぎる。この3人で都市伝説を追う話をいつまでも見ていたいと思わせてくれるね。
あざみーは怖がったりドヤったりの仕草が可愛すぎるし、センター長はキメ顔がセクシー過ぎて死人が出るレベル。
脇役も忘れられないクセモノ揃い。やっぱりこういうADVはクセの強い脇役が出てナンボなとこある。個人的にはこのツアーガイドさんがお気に入りで、人気投票やったら6位くらいには入ると思う。5位以上に入りそうな脇役はネタバレになるから出せない……!
本作を語る上で掘り下げないわけにはいかないのがSNS調査。
SNSで都市伝説にまつわる様々な噂や、調査中の案件に関する情報を集めていくんだが、「SNSの嫌な空気感」がリアル過ぎる!こいつら「嘘松」とか普通に使うからな!
「うわ炎上しそう」感のあるツイートと、それに対してクソリプや誹謗中傷が徐々に増えていく流れとか……。ありふれたネットの闇があざみーとプレイヤーに襲い掛かる!こんなカスみたいなSNS実在するんですか!?やってる人はやめた方がいいですよ!
このゲームに関することをTwitterで呟くと公式から恐ろしい速度でいいねが付くので、描写のリアルさに説得力が生まれてるのいいね。よくない。怖い……。
現代で都市伝説を扱うなら外せない描写だし、投稿を調べた時のリアクションもキャラの掘り下げになっていて面白い。
ジャスミンさんが黄泉国訪問をめちゃくちゃざっくりまとめるの大好き。
悲鳴を上げるあざみー。
これ『ダンジョン飯』なのか『ちいかわ』なのか意見別れそうな描写だな……。
ネットやゲームに関する小ネタも色々。水に入ると別の場所に出てくるゲーム……『OU』じゃねーか!本作を手掛けたハフハフ・おでーん氏が前に関わったゲームだよ!
SNS調査ではストーリーに関係ない都市伝説を集める要素もあり、1個1個にビジュアルと解説文が付いてる。種類が豊富でここも作り込んであるね。
こうして現地やSNSで情報を集める各エピソードの山場では、センター長が都市伝説の特定や解体を行う。ここのキレッキレのポーズと派手な背景エフェクトを一発かましてプレイヤーのテンションをブチ上げ、そこからテンポ良くクライマックスまで駆け抜けるスピード感がたまらない!
各エピソードの最後では事件解決後の会話に主題歌である『奇々解体』が被さり、強烈な引きで次回に続く連続ドラマ的な構成だ。この話の締め方も上手く、『奇々解体』のイントロが流れた瞬間に毎回ゾクゾクさせられる。
『逆転裁判』しかり『ダンガンロンパ』しかり。こういうお約束の演出がバチッとキマってるADVは物凄く強い。
かなり満足度高いゲームだったが、難点はチャプターセレクトも無ければセーブデータを分けることも出来ない点と、調査メモや集めた都市伝説テータなど後から見返せない点。調査メモは内容が細かくて事件を振り返るのにピッタリなので、クリア後に全部読み返したかったなぁ。普通のゲームだとタイトル画面にデータやギャラリーがあって見れたりするんだが……。
チャプターセレクトに関してはアプデでの追加を考えているそうなので、気長に待ちたい。
クリアまでは12~15時間くらい。都市伝説を扱っているが、ホラーよりはミステリー要素が強めかな。
1本道で悩むところはほとんど無く、情報の出し方が丁寧なので先の展開が読みやすい。しかし、ここぞという場面ではしっかり驚かせてくれて、キャラの魅力と演出の力でグイグイ引っ張る構成が巧み。集めた証拠と推理で真相が浮かびがる気持ち良さが上手い。
やや勢い任せに見えて丁寧に作られており「これおかしくね!?いや……そういうことだったのか?」と考察しながらの2週目もやりたくなるし、SNSを軸に現代社会と都市伝説を描いたシナリオとして見事だった。
完全新作のADVとして物凄くパワーのある作品で、終盤の展開は怒涛過ぎて「解体されたのは都市伝説ではなく俺の情緒と感情だった」と放心状態になってしまったわ。やってくれたなぁ!やり切ってくれたなぁ!
ADV好きならば是非遊んで欲しいオススメの1本です!みんなもやろう!そしてお前も解体されるのだ……!