球春到来。いよいよプロ野球が2月1日にキャンプインする。「球界のお正月」を前に選手や首脳陣、球団関係者らも準備に余念がない。そんななか、巨人・桑田真澄ファーム総監督(54)が、名古屋にある行きつけの理髪店まで赴くという情報をキャッチ。整髪現場の取材に成功した。桑田氏といえば「365日、1ミリも変わらない」と言われる謎の髪形で知られているが…。そこにはどんな秘密があったのか。
今季からファーム総監督に就任した桑田氏。29日にジャイアンツ球場での荷物出しを済ませ、その足で向かった先は、名古屋市内にある理髪店「ヘアサロン坂本智の店」だった。「パンチパーマを生み出した男」として知られ、その技術力と功績から黄綬褒章も授与された店主・坂本智さん(78)が営む知る人ぞ知る名店で、壁一面には著名人のサインがびっしりと残されていた。桑田氏は2週間に一度のペースで同店に30年以上も通い続け、今では互いに強い信頼関係を構築。今回は特別に取材許可が出た。
――桑田さんにとってこのお店はどんな場所か
桑田氏 とにかくすっきりするんですよね。おさまりがいいというか。マスター(坂本さん)は野球のことあんまり詳しくないので、いろんな世間話しながら、いろんな世界の話を聞いたりね。そういう話を聞いて勉強になりますよね。
――30年間ずっと同じ髪形
桑田氏 そうですね。ずっと変わらないから「あれはヅラなんじゃないか」と言われたこともあったけど、こんな髪の短いヅラがあるかよって話(笑い)。
――違う髪形に変えようと思ったことは
桑田氏 ないですねえ。運動するので汗かくから、さっと拭けるのがいい。ドライヤーもいらないし、するとしてもここ(お店)でさっと乾かしてもらうだけで、普段使ったことがない。体調管理の面でも、頭も乾くし、帽子かぶるし、ちょうどいいかなって。(息子でタレントの)Mattと違ってビジュアル系ではないから。超体育会系だから(笑い)。この髪形を変えようと思ったことはないですね。
――現役時代はどんなタイミングで散髪に訪れていたのか
桑田氏(髪が整ってると)気分が違うんですよね。それが2週間くらいすると(伸びてきて)「散髪行くか」ってなる。ただ現役時代だと、連勝している時とかは「もう1試合投げてから行くか」とか。連敗してるときは「ちょっと早めに行って流れを変えよう」とかもありましたね。
――キャンプなど長期遠征の際はどうするのか
桑田氏 キャンプの時などは現地まで来てもらって切ってもらっているんですよ。
――強い信頼関係
桑田氏 そうなんですよね。代わりがいないんです。最初はマスターが「65歳になったら(現役を)やめる」と言っていて「それまでに代わりの新しい人を探さないとなぁ~」なんて思ってたら、マスターが65歳になって「大丈夫です、70歳までやります」と。そんなやりとりを続けてたら、75歳になって、今度は80歳(笑い)。
坂本さん 僕がやめると、ありがたいことに困る人が多いもんで(笑い)。
桑田氏 ずっと現役でいてもらいたいですね。
坂本さん こんな年寄りを呼んでもらえて、桑田君には感謝感謝ですよ。
――髪形をスッキリさせて、いよいよ春季キャンプへ臨む。ファーム総監督としての目標は
桑田氏 二軍、三軍、監督、コーチ、選手を統括する立場。二軍としては一人でも多く一軍に上げていく、三軍は同じように二軍に上げていく、そういうミッションがあるので。あとは3年後、5年後を見据えて、計画をやっていきたいなと思います。
20歳のころから坂本さんのお店に通い続けているという桑田氏。PL学園時代の後輩で中日の立浪監督から紹介を受けたのがきっかけだという。
「タツに紹介されて来るようになったけど、気づいたら今では自分の方が長く通っている。少しでも髪が耳に触ると気になっちゃうので、そのたびに来てます」
基本料金はカット4000円程度だが、桑田氏は「カット代より往復の交通費の方がかかってますよ」と笑う。
そこまでして通い続けるワケはどこにあるのか。それは坂本さんの洗練された技術と、独自に開発されたという「桑田真澄専用ハサミ」にある。
坂本さんによると「桑田さんのややクセのある毛髪は一般的なハサミでカットすると完成形が角ばった形になってしまう。丸みを帯びた自然な色彩の髪形にするため、専用の特殊なハサミを作ったんです」。一般的なハサミとは違い、毛髪を残しながらふんわりとした仕上がりに切ることができるという。
「顔が絵とすれば髪は額縁。いい額縁だと顔が引き立つ。大事な仕事。いい加減な仕事はできない」が坂本さんの哲学だ。