写真:竹内 あや
地図を見るグリム童話の有名な物語のひとつ『ラプンツェル』。隣の家(実は魔女の家)のラプンツェル(サラダ菜の一種)を見た妊婦が、それをどうしても食べたくなって夫に盗って来てもらいます。ところが、強固な城壁を乗り越えて畑に降り立つと、そこには魔女が……。訳を話して許しを請い、代わりに生まれた赤ん坊を渡すという約束をしてしまいます。
魔女に引き取られた少女は、美しく成長。そして12歳になると、魔女に塔に閉じ込められてしまいます。その塔は階段も扉もなく、塔のてっぺんに小窓が付いているのみ。魔女が塔に入る際には、少女の長い髪の毛を窓から垂らしてもらい、それをつたって塔へと上がっていくのでした……。
写真:竹内 あや
地図を見るそのモデルとなったといわれるのが、ドイツ北部の町カッセルから北へ約38q、ローカル列車とバスを乗り継いで約45分ほどの小さな町トレンデルブルクにあるトレンデルブルク城。もともとは13世紀後半、シェーネベルク伯コンラッド3世がカッセルからブレーメンへと続く道沿いにあるこの町を侵略から守るため、小高い丘の上に建設したものです。
その後、ドイツ北西部のパーダーボルンの主教などによって住居として利用されていましたが、17世紀に勃発した三十年戦争によって町が破壊されて以降は廃墟状態になっていました。
17世紀後半になってヘッセン方伯カールが修復し、しばらくの間は狩り場の拠点として使用されていましたが、再び廃墟状態に。19世紀のプロイセンによるドイツ統一以降は、監獄として用いられていた時期もあったのだといいます。
1901年になって、由緒ある家柄のシュトックハウゼン家によって買い取られます。そしてしばらくの間、住居として使われていましたが、1949年に改築され、ドイツ初の古城ホテル「ホテル ブルク トレンデルブルク」が誕生しました。
写真:竹内 あや
地図を見るさて、『ラプンツェル』ですが、もともとは17世紀のイタリア人詩人ジャンバティスタ・バジーレが古くから伝わる話を編纂して作り上げた『ペンタメローネ』に収められている『ペトロシネッラ』に由来するといわれています。それをもとにフランスの宮廷女官が書いたものを18世紀の小説家フリードリフ・シュルツが翻訳。それをグリム兄弟が取り上げ、新たにグリム童話として世の中へ送り出したといわれています。
町のどこからも一望の古めかしい高塔が、グリム兄弟たちにおとぎ話の世界を彷彿とさせたのでしょう。「ラプンツェルや、ラプンツェルや。私におまえの髪を垂らしておくれ」このフレーズはグリム兄弟によって作り出され、古くからの伝承物語に新たな息を吹き込みました。
写真:竹内 あや
地図を見る現在、塔内は博物館のようになっていて、宿泊者であれば無料で見学することができます。上階の小窓からは三つ編みにした金色の髪の毛が垂れ下がっていて、まさにおとぎの世界。塔の頂上近くには、ラプンツェルの髪の毛をつたって小窓から顔を出す魔女の人形なども飾ってあります。
写真:竹内 あや
地図を見るおとぎ話そのものの外観ですが、内部は以外にも不気味な雰囲気。監獄として利用されていた時代を思わせる牢獄、拷問に使った道具なども展示されています。
一人で塔の中にいるとちょっと心細くなってきますが、狭いらせん階段を130段ほど上がると、明るく開けた頂上へ。そこからの景色は壮大で、周囲の町を360度見渡すことができます。
写真:竹内 あや
地図を見る塔のすぐ隣に建つ城のレストラン部分を増築した以外は、すべて昔のままとのこと。メインの塔と離れ(写真)に計22室ある客室は、どれも内装がさまざま。シングルからスイートルームまで6タイプの部屋があり、ロマンチックな天蓋ベッドが置かれた部屋や趣あるアンティークに彩られた部屋など、いずれも個性豊かです。
写真:竹内 あや
地図を見る「ホテル ブルク トレンデルブルク」は全室バスルーム付きですが、一見それとはわからない部屋も(写真)。なんと、重厚なクローゼットの扉を開けると片方は半地下になっていて、その先にバスルームが……。空いている時期であれば、何室が見せてもらって気に入った部屋に泊まってみるのもいいかもしれません。
なかでもおすすめは、その名も“ラプンツェルの塔”。離れの塔の最高層にあり、窓からの眺めは抜群です。ほかにも絵画や歴史を感じる調度品で飾られたスイートルームはロマンチックなムードたっぷりで、ハネムーナーやカップルに人気があります。
写真:竹内 あや
地図を見る好きな料理をアラカルト(写真は3種類の肉を剣に刺して焼いた「騎士のグリル」)から選ぶこともできますが、セットメニューもおすすめ。3品、5品から選べ、ラプンツェルの髪の毛を飾り付けたデザートも付いてきます。
写真:竹内 あや
地図を見るほかにもロマンチックディナーやデコレーションサービスなど、お姫様、王子様気分にしてくれるさまざまな滞在プランがあるので、興味がある人は予約する際にじっくり吟味してみるといいでしょう。人数が集まれば、「騎士の地下室」(写真)と呼ばれる地下のレストランで食事もすることも可能です。
写真:竹内 あや
地図を見る朝食はビュッフェスタイルで、テーブルにつくとスタッフが穏やかな笑顔でコーヒーを持ってきてくれます。暖かい時期であれば、町を見渡す開放的なテラス席がおすすめ。ゆったりとした気分で、1日をスタートできます。
写真:竹内 あや
地図を見る見た目は古めかしいホテルですが、なんとスパ施設まで揃っています。中庭の一角にある小さな建物の奥にはサウナや水風呂も。個室で、マッサージやトリートメントを受けることもできます。
お姫様、王子様気分にさせてくれるセットメニューも各種揃っているので、ぜひ試してみるといいでしょう。
ここでは時間を忘れ、のんびりとメルヘンの世界を堪能するのがいちばんです。
日が暮れるとあたりは暗闇と静けさに包まれ、いつしか宿泊者たちをおとぎ話の世界へと誘う「ホテル ブルク トレンデルブルク」。
「ラプンツェル、ラプンツェル。僕にあなたの髪の毛を垂らしてください」
皆が寝静まったころ、窓の下から聞こえてくるのは、そんな穏やかな王子の声かもしれません。
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(2025/2/10更新)
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