シャーガス病
英語:Chagas' disease
カメムシ目の昆虫・サシガメが媒介することで知られる感染症。中南米で多く見られる。感染者の規模は700万人を超えるとされ、その申告後はマラリアやデング熱に匹敵するレベルとされる。
サシガメは人の皮膚を咬むんで吸血し、その最中に糞をする。この糞に含まれる病原虫クルーズトリパノゾーマが傷口などから体内に入り込むことでシャーガス病に感染する。主な症状は肝臓や脾臓の腫大、心臓の肥大などである。感染直後は目立った症状があらわれず、数年から10数年を経て心臓肥大による機能不全で死に至るケースもある。慢性化した段階での有効な治療方法は確立されていない。
シャーガス病は中南米の貧困層が暮らす不衛生な地域を中心に見られる。日本国内に病原虫を宿したサシガメは生息していないため感染の危険は低い。ただし血液感染するため、感染者の血液を輸血されるなどの経路で感染する可能性がある。
2013年8月に、日本国内でシャーガス病の抗体が陽性を示す男性が過去に複数回、献血を行っており、すでに輸血に使用された可能性のあることが報道された。献血を行った男性は消息がつかめていないという。
シャーガス‐びょう〔‐ビヤウ〕【シャーガス病】
シャーガス病
主に中南米において広く蔓延している寄生虫疾患で、貧困層家屋の土壁に多く生息するサシガメが媒介している.サシガメは吸血すると糞をするが、その中にトリパノソーマという寄生虫が生息し.刺口部の痒さから手でこすることにより寄生虫は傷口や眼より感染する.心臓の筋肉に寄生虫が入り込むと心機能(しんきのう)が低下し、消化官に侵入した場合はが、腸 や食道が袋状に巨大化し機能障害を起こすが、病状が進行した場合の効果的治療法は未だ確立されていない。これらのことから、感染予防と家屋内の殺虫剤散布によるサシガメの駆除、初期診断治療を徹底することが重要な戦略となっている。
1990年代には中南米全体では約1,000万人が感染し、毎年約20万人が新たに感染していた。このようななか1998年第51回国連世界保健総会において、「2010年までにシャーガス病の感染中断を達成させる」こと が決議された。これを基にWHOパン・アメリカ地区事務局(PAHO)ではJICAのほかカナダなどの国際機関やMSFなどのNGOとのパートナーシップ形成を進め、大規模な対策がリージョンで進んだ。この結果、現在では制圧の一歩手前の最終段階まできていると各ドナーは報告している。
また世界的には近年、Chagas' diseaseはNTD:Neglected Tropical Diseaseの一つとして位置づけられ対策が進められることになった。(小林潤)
参考URL:PAHOホームページ http://www.paho.org/english/hcp/hct/dch/chagas.htm
シャーガス病
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/02 07:54 UTC 版)
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シャーガス病 | |
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ギムザ染色によって赤く染まった Trypanosoma cruzi の顕微鏡写真 (CDC) | |
概要 | |
診療科 | 感染症内科学, 寄生虫学 |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | B57 |
ICD-9-CM | 086 |
DiseasesDB | 13415 |
MedlinePlus | 001372 |
eMedicine | med/327 |
Patient UK | シャーガス病 |
MeSH | D014355 |
シャーガス病(シャーガスびょう、英: Chagas' disease)は、原虫 Trypanosoma cruzi トリパノソーマ・クルージ の感染を原因とする人獣共通感染症。「アメリカトリパノソーマ病」、「刺し亀病(サシガメ病)」とも呼ばれる。
病原体
Trypanosoma cruziトリパノソーマ・クルージ はユーグレノゾアキネトプラスト類に属する鞭毛虫で、哺乳類に広く感染する。
疫学
中南米において発生する。哺乳類吸血性であるオオサシガメ亜科のサシガメをベクター(媒介)とする。この感染症にかかりうる動物(感受性動物)はヒト、イヌ、ネコ、サルなど150種以上の哺乳類。
中南米の田舎などでは家屋の土壁にサシガメが棲んでおり、そのサシガメが家屋の住人を刺し血を吸う。それだけでは感染しないが、そのサシガメがする糞の中にトリパノソーマ・クルージが多数潜んでおり、サシガメが血を吸った前後に糞をし、その傷口から糞に含まれるトリパノソーマ・クルージが体内に侵入する。シャーガス病はすぐには発病せず、長いときは十数年の潜伏期間がある。潜伏期間は当人は感染にまったく気付かない[1]。
日本でもシャーガス病陽性者が見つかり、調査の結果、その人物が日本で献血を行っていたが、その血液を輸血された患者のうち、追跡調査が可能であった5人の血液を検査した結果、全員が陰性であり、日本では輸血によりシャーガス病に感染した事例は報告されていない。[2][3]
中南米諸国出身の人または母親が中南米諸国出身の人、中南米諸国に通算4週間以上滞在した人は、無症候性キャリアの可能性を否定できないので、予防的措置を講じるために、献血時に申告するよう日本赤十字社は呼びかけている(該当者の献血血液を、血漿分画製剤の原料血漿のみに使用するためであり、献血を拒否するためではない)。[4]
症状
診断
原虫検出。急性期の発熱時以外では血液からの原虫の検出は難しいため、体外診断法として無感染サシガメに患者を吸血させ、サシガメ体内で増殖したエピマスティゴート型原虫を検査する方法がある。血清学的診断法として、間接血球凝集反応、間接蛍光抗体法、酵素抗体法などがある。通常、血清診断で本病が疑われた場合は上記の原虫検出による確定診断を行う。
治療
ニフルチモックスとベンズニダゾール等が用いられるが、トリパノソーマ・クルージ殺傷効果しかなく、これらの薬剤に感染臓器の回復効果はまったくない。
予防
ベクター(媒介者)であるサシガメの駆除。サシガメに刺されないようにすること(刺咬防止)。また、極稀にサシガメから果物にシャーガス原虫が付着することがあるため、シャーガス病流行地では生のジュースを飲むのを控えた方がいい。なお、この病気は母子感染する。輸血でも感染する可能性があるため、献血された血液の検査や、フィルターによる濾過や冷凍などで原虫を除去する必要がある。
脚注
- ^ 南米・アフリカの「顧みられぬ病」 寄生虫大国だった日本が制圧支援(朝日新聞、2023年3月9日)
- ^ 【報告】シャーガス病の輸血感染は確認されませんでした http://www.jrc.or.jp/blood/news/l4/Vcms4_00003937.html[リンク切れ]
- ^ シャーガス病の安全対策に係る現状と課題 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002g8qu-att/2r9852000002g904.pdf
- ^ シャーガス病に係る安全対策について http://www.jrc.or.jp/blood/news/l4/Vcms4_00003218.html[リンク切れ]
参考文献
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- 石井俊雄 『獣医寄生虫学・寄生虫病学1』 講談社サイエンティフィク 154頁 1998年 ISBN 4061537156
- 板垣博、大石勇監修 今井壮一、板垣匡、藤崎幸藏編集 『最新家畜寄生虫病学』 朝倉書店 2007年 ISBN 9784254460278
関連項目
固有名詞の分類
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