ステロイドとは? わかりやすく解説

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ステロイド

英語:steroid

ステロイドとは、ステロイドの意味

ステロイドとは、構造内にステロイド骨格有する化合物総称であり、ほとんどの生物体内生合成でき、作用違いによって、いくつか分類されている。多種多様な作用持っており、生命維持活動欠かせない物質のことを意味する医療現場におけるステロイドとは、ステロイド系抗炎症薬のことを指していることが多い。ステロイド系抗炎症薬とは、副腎合成されるステロイドホルモン配合したものであり、炎症抑えるときに使用されるわかりやすくいうと、体内合成されるホルモンを、抗炎症などの治療使用するために人工的に配合した医薬品のことである。英語ではsteroid表記されステロイド系抗炎症薬のことは、SAIDs(Steroidal Anti-Inflammatory Drugs) と表記される

ステロイド系抗炎症薬には、炎症抑える効果や、免疫抑制する効果がある。これらの作用から、アレルギー性疾患や、炎症性疾患などに使われる副作用多様であり、主な副作用として、易感染性高血糖高コレステロール筋力低下満月様顔貌(ムーンフェイス)、骨粗しょう症消化性潰瘍など、軽症のものから、重症になってしまうものまである使用している量や期間、体質など、様々な要因によって、起こる副作用異なるので、注意が必要である。投与方法内服注射外用があり、使用部位症状また、重症度などによって、用い方法異なる。内服注射投与するときには全身性の副作用起きやすいが、塗り薬などの外用使用する場合は、局所性副作用起きやすいといわれている。

ステロイドの種類と使用方法

ステロイドは、副腎皮質ホルモン元につくられ医薬品総称であり、その種類多く投与方法内服注射外用がある。内服とは、医薬品経口投与での使用方法であり、錠剤カプセル散剤など、多く剤形販売されている。症状程度や、患者年齢医薬品半減期力価などから使用されるステロイドは異なり作用出方副作用出現など、状況を見ながら減量変更が行われる。半減期とは、医薬品効果半減する時間のことをいい、この時間が短いほど体内から早く排出され長いほど体内留まる力価とは、医薬品効果十分に発揮するために必要な医薬品の量から、考えられる強さ表しているものである。ステロイドの場合ヒドロコルチゾン力価を1として他のステロイドの力価計算されている。内服用いられるステロイドは、短時間作用型であるヒドロコルチゾンをはじめ、中時間作用型のプレドニゾロン長時間作用型のデキサメタゾンなどがあり、それぞれ半減期異なる。同じ力価のステロイドであっても半減期長短により、効果現れ方などが異な場合もある。

外用剤は、皮膚科耳鼻科眼科などで処方されることが多く塗り薬吸入剤などの剤形がある。皮膚科眼科領域用いられることが多いステロイドの塗り薬は、最も強いストロンゲストから、ベリーストロング、ストロングミディアムウィークの5段階分類されており、症状程度や、使用部位によって、使われる医薬品異なる。塗り薬以外にも、点眼や点鼻、吸入剤噴霧など、さまざまなタイプのステロイドがあり、目的に応じて使用される

注射使われるステロイドは、内服外用使用するよりも作用の発現早いため、疾患急性期や、高用量投与するときに使用される

ステロイドの副作用

ステロイドは、効果が高い医薬品であるが、多く副作用存在することが知られている。内服注射使用した場合全身症状副作用が出ることが多く顔面脂肪多くなり、丸くなってしまうムーンフェイスや、筋の萎縮から筋力低下発症してしまうこともある。ほかにも、易感染症、高血糖高血圧高コレステロール骨粗しょう症などが知られている。外用剤使用した場合副作用としては、色素脱失や皮膚の萎縮感染症刺激感などがある。また、吸入剤噴霧でステロイドを用いた場合かすれ声や、口腔カンジダなどの副作用が起こることがある

副作用内容によっては、ステロイドの使用開始から副作用出現しやすい時期があり、おおよそ目安とされている。投与開始数時間後から大量に使用した場合高血糖不整脈見られ、量に関わらない副作用としては不眠やうつ症状食欲亢進見られることが多い。数日後から中等以上において、高血圧高血糖精神障害などが見られ、1~2か月後から感染症骨粗しょう症ムーンフェイス消化性潰瘍などが起こりやすい。3か月以上経つと使用している量に関わらず感染症ムーンフェイス動脈硬化白内障緑内障などが認められることがある。ただし、これはあくまで起こりやすい時期副作用目安であり、人によっては量や時期関わらず副作用出てしまう人や、逆に副作用が出にくい人もいるので、一概にステロイドを使用すると必ず副作用が出るというわけではない。

ステロイドによるあせもやニキビへの効果

ステロイドをあせもやニキビなどに使用する際は、抗炎症作用期待して使われることが多い。ステロイドは根本的な治療には向かないため、炎症抑えて、かゆみや赤み抑えるために使われるあかぎれ場合にも、抗炎症作用期待して使われるが、あかぎれには、悪化する前のステロイドが効果的とされている。

ステロイド配合塗り薬などを使用した場合副作用は、局所的なものであり、全身的な副作用起こりにくいとされているが、皮膚の脱色ニキビなどが起こるとされており、ニキビ治療しているのに新しニキビ出来てしまう、などといったことも起こりかねない市販製剤にもステロイドが配合されているものが販売されているが、正確な知識のもと、適切な使用求められる

ケロイド治療する際にはステロイドの注射用いられることが多い。ケロイドとは傷あとのことであり、かゆみ、痛み強く見た目悪いこと特徴である。ケロイドのかゆみや痛みは、ケロイド中にある様々な炎症細胞から発せられるものであり、これを止めるためにステロイドの注射用いられる。ほかにも、ステロイドが配合されているテープ剤使用されることも多くケロイド治療にはステロイドの使用基本である。

口内炎にもステロイドが用いられることがある軟膏貼付剤噴霧剤などの剤形があり、痛み緩和用いられることが多い。こちらも根本的治療を行うものではないうえ、ステロイドの性質上、口内常在菌バランス崩してしまう恐れがあり、違う疾患引き起こしてしまう可能性もある。また、口内炎原因によっては、ウイルス性のものなど、ステロイドが禁忌となってしまうこともあるため、注意が必要である。

ステロイド【steroid】


ステロイド


ステロイド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/07 00:47 UTC 版)

ステロイド核のA-D環及びステロイドの炭素番号
ステロイドの一種、コレステロール

ステロイド (steroid) は、天然に存在するトリテルペノイドの一種である[1]

概要

シクロペンタノペルヒドロフェナントレン(ステラン)を基本骨格とし、それに官能基が付随したものを指す。通常はC-10とC-13にメチル基を、また多くの場合C-17にアルキル基を有する。共通して、ステロイド骨格(ステラン核)は、3つのイス型六員環と1つの五員環がつながった4縮合環構造を持っている。ステロイド骨格そのものは脂溶性(疎水性)で水に不溶であるが、C-3位がヒドロキシル化されあるいはカルボニル基となったステロール類やステロイドホルモンなどは水溶性である。ステロールはステロイドのサブグループであり、C-3にヒドロキシ基を有するステロイド化合物である[2]。動物が普遍的に合成するコレステロールは最もよく知られるステロールのひとつである。

何百もの異なるステロイドが真核生物(植物動物菌類など)で見つかっているが、全てのステロイドはラノステロール(動物および菌類)またはシクロアルテノール(それ以外の真核生物)と呼ばれる出発物質(プロトステロールとも呼ばれる)から生成される。プロトステロールは、トリテルペンの一種であるスクアレンエポキシ化ののち環化されてステロイド骨格を形成したものである[3]

ステロイドは、ほとんどの真核生物に存在しており、自身の生体内にて生合成される。中性脂質タンパク質糖類とともに細胞膜の重要な構成成分となっているほか、胆汁に含まれる胆汁酸や生体維持に重要なホルモン類(副腎皮質ホルモンや昆虫の変態ホルモンなど)として、幅広く利用されている。一部の真核生物では自身でステロイドの合成ができず、環境中からステロイドを摂取する(昆虫繊毛虫など)。

構造

ステロイドは側鎖などによって、コレスタン (cholestane)、コラン (cholane)、プレグナン (pregnane)、アンドロスタン (androstane)、エストラン (estrane) の5つに分類される。

下図のように構造式を書いた場合に、それぞれの環を左下から順にA環、B環、C環、D環と呼ぶ。また環上の置換基の立体表示法として、紙面下側方向をα、上側方向をβで表す。隣り合う環同士の間にαとβの両方を含む場合はトランス配置、いずれもα(またはβ)の場合はシス配置と呼ばれる。A/B環の配置は両方を取りうる(そのため下図の例では5位水素の立体が明示されていない)が、B/C環は常にトランス配置であり、C/D環も多くがトランス配置である。

a配座/e配座、α配座/β配座と表現される場合もある。

生合成

HMG-CoAリダクターゼ経路(メバロン酸経路)。画像クリックで拡大と解説
ステロイド骨格形成反応。画像クリックで拡大と解説

高等脊椎動物では、肝臓の肝細胞の滑面小胞体などで酢酸からアセチルCoAなどを経てメバロン酸経路に入り、テルペノイドの一つ、スクアレンとなる。スクアレンの2,3-位がエポキシ化されたのち、閉環反応によって4つの環が同時に形成され、ラノステロールとなる。エポキシ酸素が水素化されるのをきっかけに、4つの二重結合のπ電子ドミノ倒しのように倒れこんでσ結合となりステロイドのA, B, C, D環が一度に形成される。それだけでなく、ステロイドの20位炭素上に発生したカルボカチオンを埋めるように、2つの水素(ヒドリド)とメチル基がそれぞれステロイド環平面を横切ることなく1つずつ隣りの炭素に転位することで、熱力学的安定配座となりラノステロールが生成する。植物では、ラノステロールではなくシクロアルテノールを形成し、そこからステロイドが誘導される。さらに他の生物種では、エポキシ化されたスクアレン(オキシドスクアレン)から別のテルペノイドであるβ-アミリンを生成する生合成経路も知られている。同様に一部の細菌では、スクアレンをエポキシ化せずに環化して5つの六員環からなるホパノイドを生成する経路も存在する。

ラノステロールから更に先はリダクターゼとP450酵素によるメチル基の酸化が繰り返されて適用される。その結果、C-4およびC-14の3つのメチル基が二酸化炭素として切断され、さらにB環内にある2重結合の位置を微調整したのち、(ラノステロールから17段階で)コレステロールが生成する[4]。全てのステロイドホルモンは、ホルモン分泌器官に運ばれたコレステロールからプレグネノロンという中間体を経由して生合成され、このプレグネノロンへの変換がステロイドホルモン合成の律速段階となる。このため、多くのステロイドホルモン刺激ホルモンはこの過程を促進する。

ステロール

ステロール類の共通骨格

コレステロールなど、3位にヒドロキシ基を持つステロイドは特にステロールと呼ばれ、ひとつの化合物群を形成している。

胆汁酸

胆汁酸の一種、コール酸の構造式

ステロイド骨格は疎水性であり、ヒドロキシ基やカルボキシル基のような親水基を加えると両親媒性が現れる。胆汁酸はその性質を消化吸収に役立てている。詳細は 胆汁酸 を参照のこと。

ステロイドホルモン

ホルモン作用を持つステロイドはステロイドホルモンと呼ばれる。ステロイドホルモンは大部分が副腎皮質から分泌されるが、一部の性ホルモンは、精巣卵巣から分泌される。

代表的な生体内ステロイド

膜脂質の構成成分

細胞膜を構成する脂質

ホルモン作用を持つもの(ステロイドホルモン)

その他

2023年4月に、「健康茶」を謳う製品から、医薬品成分のステロイドが相次いで確認されたとして、国民生活センターは同年5月17日、注意を呼び掛けた[5]

参考文献

  1. ^ IUPAC Gold Book - steroids
  2. ^ G. P. Moss (1989). “Nomenclature of Steroids (Recommendations 1989)”. Pure & Appl. Chem. 61 (10): 1783–1822. doi:10.1351/pac198961101783.  PDF
  3. ^ Lanosterol biosynthesis
  4. ^ Mann, J. Chemical Aspects of Biosynthesis; Oxford University Press: Oxford, 1994; pp 40–52. ISBN 0-19-855676-4.
  5. ^ https://www.facebook.com/wwwjijicom.+“「健康茶」からステロイド 国民生活センターが注意呼び掛け:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2023年5月17日閲覧。

外部リンク


ステロイド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/12/10 13:42 UTC 版)

結核性髄膜炎」の記事における「ステロイド」の解説

ステロイドはくも膜下腔炎症鎮静化中枢神経免疫反応増悪防止水頭症脳梗塞予防効果があるとされている。デキサメサゾン0.3~0.4mg/kg/dayの投与を3週間行い以降3~6週間漸減する。

※この「ステロイド」の解説は、「結核性髄膜炎」の解説の一部です。
「ステロイド」を含む「結核性髄膜炎」の記事については、「結核性髄膜炎」の概要を参照ください。

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