ヘーシオドスとは? わかりやすく解説

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ヘシオドス【Hēsiodos】


ヘーシオドス

名前 Hesiodos; Hēsiodos

ヘーシオドス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/24 23:16 UTC 版)

ヘーシオドス
誕生 紀元前700年頃
死没 ロクリス、オルコメノス
職業 吟遊詩人
言語 ギリシア語
ジャンル 叙事詩
代表作神統記』、『仕事と日』(仕事と日々)
親族 ペルセース(弟)
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ヘーシオドス: Ἡσίοδος, Hēsíodos)は、古代ギリシアの叙事詩人。紀元前700年頃に活動したと推定される。『神統記』や『仕事と日』(仕事と日々)の作者として知られる。

現在のギリシアでは綴りは同じだが彼の名前はイシオドスのように発音され、1939年からギリシャで発行されていた旧50ドラクマ紙幣にその肖像が使用された。

生涯

父親は元はレスボス島の南東、小アジアの町キュメ英語版の商人であったが破産してボイオーティアの寒村アスクラに移り住み、開拓農家として父や弟と農耕に励んだ。アスクラの東にはムーサ崇拝の地であるヘリコーン山があり、ヘーシオドスはしばしばそこを訪れた。『神統記』によれば、ヘーシオドスが羊を飼っているとき、突然にムーサが詩人としての才能をヘーシオドスに与えたという。

『仕事と日』によれば、弟ペルセースとの遺産相続をめぐる裁判に巻き込まれた。地元の領主はペルセースからの賄賂を受けて、ヘーシオドスが自分に忠実でないと難じて遺産である筈の土地を没収してペルセースに与えてしまった。このため、憤懣やるかたなかった彼は旅に出て詩人として生活するようになったのだと言う。

いずれの伝承が伝えるところが真実であるにしろ、ヘーシオドスが吟遊詩人としての訓練を積んでいたことは確かである。なぜなら当時の詩吟には高度に発達した専門的な様式が存在し、ヘーシオドスの作品もその様式に則ったものであるためである。[1]

哲学者ゴルギアスの弟子アルキダマース英語版に由来するとされる短編『ホメーロスとヘーシオドスの歌競べ英語版』によれば、カルキスにおいてホメーロスと詩を競ったとされる。このときヘーシオドスは、戦争と武勇を讃える『イーリアス[2]を歌い聞き手の胸を熱くさせるホメーロスに対し、牧歌的な『仕事と日』[3]を歌った為に平和な詩を愛する時の王の裁定によって勝利を与えられた。

彼の最期については、古代にすでに異伝があり、トゥキュディデスの伝えるロクリスに没したとする説と、上記の『歌競べ』や7世紀の資料の伝えるオルコメノスに没したとする説がある。

業績

今日、ヘーシオドスの真正な作品と一致して認められるのは『仕事と日』のみである。『神統記』の作者には論争があるものの、ヘーシオドスの様式に極めて近いことは間違いがない。他にヘーシオドスの作品として伝えられるもので有名なものに『名婦列伝』がある。

仕事と日』は勤勉な労働を称え、怠惰と不正な裁判を非難する作品である。同書には世界最初の農事暦であると考えられる部分のほかに、パンドーラーと五時代の説話、航海術、日々の吉兆などについて書かれた部分がある。農事暦については、同書で書かれる程度のことは当時の聴衆にとっては常識であり、指南用のものではなく農業を題材に取ったことそのものに意味があるとも考えられている。[4]

神統記』は神々の誕生と戦いを描きゼウスの王権の正当性を主張している。ここに表れる王権の交替神話にはメソポタミア神話の影響が色濃く見られる。[5]

日本語訳

Hesiodi Ascraei quaecumque exstant, 1701

出典

  1. ^ 久保 1973, pp. 78f
  2. ^ 13巻126行-133行及び同巻339行-344行
  3. ^ 383行以下
  4. ^ 久保 1973, I章
  5. ^ 久保 1973, III章

参考文献

関連文献

  • 饗庭千代子 著「ヘシオドスに現在を読む--暴力・争い・正義・ジェンダー」、上村くにこ 編『暴力の発生と連鎖』人文書院〈心の危機と臨床の知 11〉、2008年2月。ISBN 978-4-409-34038-7https://www.jimbunshoin.co.jp/book/b66668.html  - 文献あり。
  • 井上増次郎 著「ヘシオドス」、プラトンアリストテレス学会 編『ギリシア=ラテン講座』 第1部 第2巻、鉄塔書院、1932年。NDLJP:1236532 
  • 太田秀通『ギリシア世界の黎明』吉川弘文館〈ユーラシア文化史選書 第1〉、1965年。  - 参考文献:275-277頁。
  • 『ギリシア・ローマ神話の宗教性と文芸性の研究』岡道男京都大学、1990-1991。  - 文部省科学研究費補助金研究成果報告書。
  • 呉茂一『ぎりしあの詩人たち』筑摩書房〈鑑賞世界名詩選〉、1956年、74-93頁。NDLJP:1694650 
  • R・S・コールドウエル 編著『神々の誕生と深層心理 ヘシオドスの『神統記』とその周辺』小笠原正薫 訳、北樹出版、2013年2月。ISBN 978-4-7793-0363-0  - 原タイトル:Hesiod's Theogony
  • 小峰元『ヘシオドスが種蒔きゃ鴉がほじくる』講談社、1981年3月。 
  • 『古典期アテナイ文化の総合的把握――哲学と文学、及びその歴史的背景』田中利光北海道大学、1992-1993。  - 文部省科学研究費補助金研究成果報告書。
  • 広川洋一、山崎賞選考委員会 編著『ギリシャ思想の生誕 第5回「哲学奨励山崎賞」授賞記念シンポジウム』河出書房新社、1979年12月。 
  • 『ヘシオドス全断片の文献学的研究』廣川洋一東海大学、1979年。  - 文部省科学研究費補助金研究成果報告書。
  • 三浦要、金沢大学『ソクラテス以前の哲学の展開における神話の意義に関する研究』2002-2003。  - 文部科学省科学研究費補助金研究成果報告書。
  • 村川堅太郎「貴族と農民--ヘシオドスを中心に」『世界の歴史』 第4、筑摩書房、1961年、252-266頁。NDLJP:3034702 
  • 村治能就 著「ホメロス,ヘシオドス的世界像」、津田, 左右吉宇井, 伯寿; 務台理作 ほか 編『世界哲学史』 第1巻、コギト社、1948年、73-85頁。NDLJP:1037808 

外部リンク


ヘーシオドス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/19 14:23 UTC 版)

エリュシクトーン」の記事における「ヘーシオドス」の解説

この物語古く、ヘーシオドスの作と伝えられる名婦列伝でも、エリュシクトーンデーメーテールの聖の木を切ったために、女神によって激し飢えを起されたと語られていた。さらに、現存する断片によると、エリュシクトーン狡猾知られるシーシュポスから莫大な婚資騙し取ることさえした。すなわち、シーシュポス彼のメーストラー息子グラウコス花嫁にしようと考え、牛、羊、山羊群れ引き換えに彼女を得たが、メーストラー別の動物変身して逃げ帰った。すぐにエリュシクトーンシーシュポスの間でメーストラーをめぐる争い起きたが、女神アテーナー以外に彼らを裁くことができる者はいなかった。その後メーストラーポセイドーンによってコス島に連れ去られコス島の王エウリュピュロス生んだのち、エリュシクトーン助けるために祖国帰った。 ヘーシオドスによると、エリュシクトーンは火のように激しく燃えさかる飢えから、アイトーン(燃えさかるの意)とも呼ばれた。そのためメーストラー父親はしばしばアイトーンと呼ばれたアントーニーヌス・リーベラーリスでは、同様の物語がアイトーンとヒュペルメーストラー父娘のものとして言及されている。 なお、アイリアーノスエリュシクトーン大食漢1人として数えている。

※この「ヘーシオドス」の解説は、「エリュシクトーン」の解説の一部です。
「ヘーシオドス」を含む「エリュシクトーン」の記事については、「エリュシクトーン」の概要を参照ください。

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