レーダー対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 17:57 UTC 版)
「F-117 (航空機)」の記事における「レーダー対策」の解説
敵レーダー波を照射源方向に反射させないために、いくつかの工夫が行なわれている。 形状制御 敵レーダーに発見されにくくするために多面体の形状をしている。機体全体は平たいエイのような形で機体下面はほぼ1枚の平面で構成されている。操縦席やエンジンを含めた機体中央部は多角形状に上方に膨らんでいる。これはステルス技術の形状制御から生まれた形であり、レーダー入射波を散乱及び後方背面波とすることによってレーダー反射断面積(RCS)を下げる機体形状となっている。機体表面から突起物を可能な限り減らしたり、エンジンの吸入効率を下げてまでエアインテークに電波の侵入を防ぐ金属製グリッドを装着して内部の多様な反射面の露出を抑えている。 兵装の機内搭載 形状制御の一環として、兵装は機体下部2箇所の兵器倉に収納する。搭載可能な兵器はMk.84 2,000lbの通常爆弾、もしくはGBU-27またはGBU-10の二種類のレーザー誘導爆弾を各兵器倉に1発ずつ搭載できるが、GBU-29,30,31,32JDAMやAGM-154 JSOWなど他の爆弾の搭載も可能。他、AGM-65空対地ミサイルやAGM-158巡航ミサイル、AGM-88対レーダーミサイルやAIM-9L空対空ミサイルなども運用出来るとされる。 RAM 機体表面はRAM(Radar Absorbent Material)と呼ばれるレーダー波を吸収する材料であるグラファイト/エポキシ複合材で覆われており、機体内部にも電波反射の少ない非金属素材が使用されている。 キャノピー いかにステルスを重視した形状であってもパイロットが乗り込み様々な機器が配置されているコックピットは、レーダー波が飛び込むと乱反射を繰り返した挙句に不用意な方向へそれを返してしまいかねない。たとえばパイロットが装着するヘルメットは球体に近く、あらゆる方向にレーダー波を反射しうる。 そこでF-117では機体の延長線に沿った(曲面ではない)板状のキャノピーパネルを採用し意図した方向へとレーダー波を逸らすように設計され、また、金を蒸着することでコックピット内部にレーダー波が入り込むことを防いでいる。しかし、この形状のために視界前方に四本の太いピラー(柱)が設けられているため、前方視界は他の戦闘機と比べて劣悪を極める。後方視界は全く無い。 これらの工夫によって高いステルス性能を獲得できた一方で、ステルス性を最重視した機体形状は空力学的に優れた形状とは言えず、最高巡航速度もF-4などの主力戦闘機と比べて劣る。1997年9月14日にアメリカのメリーランド州のボルチモア航空ショーでのデモ飛行の際、アクロバティックな旋回や機動を繰り返したために主翼に過負荷が掛かり、飛行中に突然左主翼が取り付け部分で大破し機体は近隣の住宅地に墜落、パイロットは脱出したものの住宅二棟が全焼するという被害を起こしている。これをカバーするため、四重のデジタル・フライ・バイ・ワイヤ技術により安定した飛行を可能としている。また特殊な形状の機体であるがゆえに、他の戦闘機に設けられている格納式のラダー(梯子)を機体に組み込むことができず、導入に当たってはパイロットの乗降や整備のために専用のタラップを運用する基地で調達する必要に迫られるなどの弊害も生じた。
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