技術的要求
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 06:29 UTC 版)
地球から太陽系の他の惑星への飛行には、大量のエネルギーを必要とする。地球の軌道から木星に到達するのと、最初の軌道に投入するのとでほぼ同程度のエネルギーを必要とする。軌道力学では、このエネルギー支出は、宇宙船の速度の正味変化、すなわちデルタVで規定される。地球の軌道から木星に到達するまでに必要なエネルギーは、地表から低軌道に到達するのに必要なデルタVが9.0-9.5km/sであるのに対し、約9km/sである。しかし、地球や金星でのフライバイによって、打上げ時に必要なエネルギー(即ち燃料量)を減らすことができる。一方で、直接木星へ向かう軌道に比べてかなり長い飛行時間が必要になるという問題もある。10km/s以上のデルタVが可能なイオンエンジンがドーンの打上げに用いられた。これはフライバイを使わずに地球の公転半径と同じ軌道上から木星へ到達するのに十分なデルタVである。 また、木星では大気圏から液体で構成された内部に滑らかに遷移しており、着陸可能な固体の地表がないという点である。さらに木星の大気圏を降下するプローブは、最終的には木星の巨大な圧力に破壊されることになる。 別の主要な問題点は、木星の周囲の激しい荷電粒子環境に由来する放射線量である。例えば、パイオニア11号が木星に最接近した時、放射線レベルはパイオニア計画の設計者が予測していたより10倍も強力で、探査機が生き残れないことが心配されたが、いくつかの小規模な故障だけで、探査機はヴァン・アレン帯を通り抜けることができた。しかし、放射線により誤ったコマンドを画像旋光計が受信したことで、イオの画像の多くが失われた。後続機でより技術的にも進歩したボイジャーでは、高レベルの放射線に耐えられるように再設計された。木星の軌道に8年間以上滞在したガリレオでは、プローブの浴びた放射線量は設計値を大きく超え、機器が何度か故障した。探査機のジャイロスコープのエラーは増え、回転部と非回転部の間で時々放電が起こってセーフモードに入った。そのため、16周目、18周目、33周目の軌道データは欠損している。また、放射により、ガリレオの超安定水晶振動子の位相シフトが起こっている。
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