現示
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/09 07:14 UTC 版)
計量学における現示(げんじ、realisation)とは、定義された測定単位の量の大きさを技術的に実現することである[1]。
計量関連ガイドに関する合同委員会による「国際計量計測用語」(VIM)では、現示という用語が指す行為として以下の3つが挙げられている[2][3]。
- その定義に基づいて測定単位を物理的に実現する行為であり、厳密な意味(sensu stricto)での現示である。
- 物理現象を用いて再現性の高い計量標準を構成する行為であり、これは再現(reproduction)と呼ばれている。
- 例えばメートルは光速度に基づいて定義されているが、周波数安定化レーザーなどによって確立(establish)される。
- 特定の人工物を測定標準として採用(adopting)する。
- 例えば日本において質量の特定標準器として標準分銅群が指定されている。
国際度量衡局では、国際単位系(SI)の基本単位を現示するための方法を維持している[4]。
現示の方法
時間
歴史的に、時間の現示法には3つの段階がある。第1段階と第2段階は太陽時の観測によるものである。第1段階では、日時計やアストロラーベなどの道具を用いて地球の自転を観測していた。第2段階では、砂時計や機械式時計などの、時間を計るための機械が使われるようになった。第3段階では、原子時計などの精度の高い時計が使われるようになり、それまで基準としていた地球の自転が変動するものであることが判明したことから、そのような計時装置により置き換えられることになった。
長さ
長さは、人間が最も早く測定した量の一つである。当初は体の部分の長さや特定の種の種子の大きさによって現示されたが、後に、特定の人工物の長さによって現示されるようになり、その人工物はコミュニティのリーダーが所持していた。
現代では、光周波数標準によってメートルが現示されている[5]。
体積
当初は特定の容器の大きさによって現示されていたが、現在は長さの単位に基づいて定義されている。
質量
- 一定量の穀物の重さ
- 国際キログラム原器などの人工物
- ワット天秤
電荷
温度
脚注
- ^ 臼田孝. “国際単位系(SI)の体系紹介と最新動向(概論)” (PDF). 計測と制御 Vol.53 No.1 2014年1月号. 計測自動制御学会. 2022年12月14日閲覧。
- ^ VIM (3rd ed.) 5.1 NOTE 3
- ^ JIS Z 8103.
- ^ International Bureau of Weights and Measures (2012年). “Practical realization of the definitions of some important units”. p. 46. 2013年4月23日閲覧。
- ^ Quinn, T. J. (2003). “Practical realisation of the definition of the metre, including recommended radiations of other optical frequency standards (2001)”. Metrologia 40: 103–133. Bibcode: 2003Metro..40..103Q. doi:10.1088/0026-1394/40/2/316 2013年12月6日閲覧。.
外部リンク
- “JCGM 200:2012 International vocabulary of metrology - Basic and general concepts and associated terms (VIM) 3rd edition”. JCGM. 2022年12月18日閲覧。
- JIS Z 8103:2019「計測用語」(日本産業標準調査会、経済産業省)
現示
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/31 15:18 UTC 版)
TTは理論上の理想であり、特定の現示に依存しない。実用的な目的のためには、TTは地球系内の実際の時計によって現示されなければならない。TTの主な現示はTAIによって提供される。1958年から運用されているTAIは、世界中に設置された数百個の原子時計の荷重平均を使い、ジオイド上での固有時の進みに一致させようとする。TAIは、原子時計群が示した読みを定期的な比較により較正し、遡及的に定義されている。TAIの評価値は、参加する時計を運営する機関によってリアルタイムでも提供される。TTが導入されたときのTAIとETの歴史的な違いのため、TTのTAIによる現示は次のように定義される。 TT(TAI) = TAI + 7001321840000000000♠32.184 s TAIは一度公開されると決して改訂されないので、その中のエラーが判明しても未修正のままである可能性がある。従って、過去のTAIのデータの再解析に基づいてTTのより良い現示を生成することが可能である。国際度量衡局(BIPM)は、1992年以来これをほぼ毎年行っている。これらのTTの現示は、発行年を示す数字をつけて「TT(BIPM08)」という形式で命名されている。それらはTT(TAI)との違いの表の形で公表されている。2016年2月現在の最新はTT(BIPM15)である。 精密計時、天文学、ラジオ放送の国際コミュニティーは、パルサーの観測に基づく新しい正確な時間尺度を作ることを検討してきた。この新しいパルサー時間尺度は、TTを計算するための独立した手段として役立ち、最終的にTAIの欠陥を特定するのに有用である。
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