「アミ(AMI)」の好調が続いている。東京・表参道に2024年11月に期間限定で開いた“ル カフェ アミ(LE CAFE AMI)”は連日の行列で、その顔ぶれの多くを若年層が占めている。日本の他に、アジアやヨーロッパでもZ世代からの人気が高く、世界のどの都市を歩いても同ブランドのアイコニックなハート型モチーフ“アミ ドゥ クール(AMI DE COEUR)”を目にする機会が多くなった。若者がキャッチーなモチーフを身に着ける理由は、アレクサンドル・マテュッシ(Alexandre Mattiussi)=創設者兼クリエイティブ・ディレクターによるクリエイションと、ニコラス・サンティ・ウェイルCEOによるビジネスのバランスがとれているからだろう。“親しみやすいラグジュアリーブランド”として進化を続けるブランドのビジネスについて、サンティ・ウェイルCEOに聞いた。
「アミ」は“生きた”ブランドである
WWD:近年は売上高が連続で倍増に近い急成長を続けている。ビジネスの現状は?
ニコラス・サンティ・ウェイル=「アミ」CEO(以下、サンティ・ウェイル):コロナや戦争の影響があったにも関わらず、2019年から23年までの5年間で世界での売り上げは約10倍になり、23年の売上高は3億ユーロ(約487億円)を超えた。世界での店舗数も73に増え、従業員も700人以上になっている。これは、グローバルなラグジュアリーブランドとして確立するために、長期的な視点で「アミ」らしいストーリーを積み重ねてきた結果だろう。“ラグジュアリーブランド”というと親近感がないように感じることもあるが、私たちはラグジュアリーとフレンドリーは両立できると信じている。ティーンエイジャーだろうと、65歳だろうと、今を生きるあらゆる人を歓迎するブランド、そして楽しく、ライフスタイルを感じられるようなブランドでありたい。みんなに「アミ」ファミリーに加わってほしいし、私たちが取り組んでいることや、大切にしているものを知ってほしい。そして、「アミ」は雑誌やメディアの中だけで目にするブランドではなく、実際に着て、友人と体験を共有するような“生きた”ブランドだ。
WWD:特に、若い世代から支持されている印象だ。実際に表参道のポップアップストアには、若者が行列を作っている姿を目にする。若年層の心を掴めた理由をどのように分析しているか?
サンティ・ウェイル:若い世代にとって、ブランドを選ぶことは自分の“第二の皮膚”となるものを選ぶことであり、意思表明のようなもの。自分が身に着けるものに対して、知らないふりはできないだろう。だから、日本であっても、フランスやイギリスであっても、若い顧客は手掛けているデザイナーのことも含めブランドについてより深く知っている。また、私たち自身も彼らにたくさん伝える努力をしてきたから、リーチできたのだと思う。彼らが大切にしているのは、楽しい生活を送ること。美しい服を求めてはいるが、それだけではなく、「アミ」ファミリーの一員になりたいと思ってくれているし、私たちが提案する価値に共鳴している。Z世代にとって服を購入することはストーリーの一部にすぎず、ブランドが提供する生き生きした体験を欲しているのだと思う。例えば、コーヒーを飲んだり、アイススケートを楽しんだりといったようにね。
服と体験を通して
人々をハッピーにしたい
1 / 6
WWD:ブランド設立からは14年目になる。さらなる発展を目指していくための次のステップは?
サンティ・ウェイル:ウィメンズウエアとアクセサリーの強化で、互いにリンクしていると考えている。もともと「アミ」は設立から約10年間、メンズウエアのみを手掛けてきた。ただ、当時から顧客は女性が40〜50 %を占めていたこともあり、ウィメンズウエアをゆっくりと段階的に始めてからは素晴らしい結果を出している。アクセサリーも私たちにとっては新たなカテゴリーであり、まだ売り上げ全体の10%に満たない。しかし、バッグやレザーグッズが充実したギンザ シックスの素晴らしい店舗がある日本をはじめ、急速に成長中だ。実際、新作バッグを発売すると、結果がしっかりと数字に表れる。ウィメンズウエアとレザーバッグを中心としたアクセサリーはどちらもまだスタートしたばかりではあるが、大きなポテンシャルを秘めていると考えている。
WWD:現在開催中のポップアップストアも盛況だが、日本で好調を維持している理由をどう捉えているか?
サンティ・ウェイル:日本では、小さなショップ・イン・ショップからブランド体験のためのより大きな店舗へと進化してきた。また、コロナ禍直前の19年にはナイトクラブで仲間との集いのようなパーティーを開いたり、今回のポップアップではコーヒーを販売したりと、特別な体験を提供することもある。その全てが成功に貢献していると思う。というのも、フランス人である私からすると、日本の顧客はディテールにこだわりがあり、服でも食べ物でもクオリティーを大切にしている。なので、私たちも今回のようなポップアップストアを作る時には、店内に設置する郵便受けのデザインや、訪れた人を幸せな気分にする小さな要素にまで日本人レベルの注意深さを持って取り組んでいる。大切なのは、まず自分たちをハッピーにすること。そうすることで、私たちの顧客をハッピーにできる可能性が高まると思う。
日本の出店計画と今後の展望
WWD:それは「アミ」全体の考え方や戦略にも通じるものか?
サンティ・ウェイル:グローバルで考え方や戦略は同じだ。私たちは常に一生懸命に取り組んでいるが、ファッションに革命を起こそうとは考えていないし、ファッションの未来を根本的に変えたいという野心はない。私たちが目指しているのは、私たちがデザインし、販売する服で人々をハッピーにすること。人々を迎え入れ、服を通して、そして私たちが提案できる体験を通して、幸せにしたい。文化や国の違いがあっても、ハッピーでありたいという思いは誰もが持っているもの。例えば、身なりを整え、自分の着ている服を気に入った朝、鏡に映る自分やオフィスに向かう自分を見て、笑顔がこぼれる。そして、自信と笑顔を持って出社すれば、その幸せは周りの人にも広がっていく。そんな伝播が私たちの目標であり、ミッションだ。
WWD:表参道のポップアップストアは、期間限定とは思えないほどの作り込みでインパクトがある。今後、表参道エリアへの旗艦店オープンを計画しているか?
サンティ・ウェイル:もちろん今後の計画の一つではあるが、急ぎたくはない。日本は私たちにとってトップ市場であり、最優先で考えている。オプションはいくつかあるが、今回のポップアップを見ても分かるように、私たちはこだわりが強い。大きな投資であり、日本の顧客やパートナーへのメッセージ発信という点でも重要な旗艦店となれば、なおさらだ。だからこそ、大家と直接話し合い、公正な取引のもと、驚きに満ちた美しく居心地の良い店を作り上げたい。そのため、しっかりと物事を進めるための時間をとり、ふさわしい場所を選び、適切なストーリーテリングの方法を考え、完璧なチームを作らなければいけない。何か一つでも欠けたら、いいプロジェクトにはならないだろうからね。
表参道ポップアップは期限延長
1 / 4
表参道の“ル カフェ アミ”は、連日の好評につき出店期間を3月2日まで延長している。約135平方メートルの店内は細部まで作り込んだパリのカフェのような空間で、1階と2階の2フロアで営業している。カフェスペースではアメリカーノやカフェラテを提供しており、フレンチトーストなどのパンも並ぶ。
アイテムはメンズとウィメンズ、アクセサリーを含む限定コレクションをラインアップするほか、“アミ ドゥ クール”のカップやマグカップも数量限定で販売中だ。
アミ パリス ジャパン
03-3470-0505