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メンタルの不調を誰に相談する?友だちでなく専門家にすべき理由

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「メンタルやばい!」を回避するために役立つライフハックあれこれ という記事のなかで、「毎日を幸せに過ごすためにできること」について書きました。「日光浴をする」「日記をつける」など、「どうすれば自分が元気でいられるか」という方法を探ることは大事ですが、もしもうまくいかずに精神的な不調が長く続いたら――。

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「自分では手に負えない」と割り切って、専門家に相談した方がよいでしょう。今回は、海外とも比べながら、「専門家の門を (たた) くこと」について考えたいと思います。

「友だちに相談」は泥沼化?

精神的に落ち込んだ時、「身近な人に相談する」のも一つの方法です。でも、友だちだからといって、相手の都合を想像せず次から次へとネガティブな話をするというのは、やはり考えものです。

発言小町には、「 (うつ) の友人との付き合い方 」といった、相談を「受けた側」のトピックが定期的に立っていますが、困惑している様子が伝わってきます。精神的な不調を抱えると、自分のことで「いっぱいいっぱい」になり、相手のことまで気づかう余裕がないのかもしれませんが、重すぎる内容はやはり、相手の負担になってしまう可能性が高いです。

そう考えると、自分の周りのいろんな人を巻き込んで人間関係をこじらせるよりも、人の悩み事を聞く「プロ」に相談したほうが良いかもしれません。当たり前ですが、精神科医やカウンセラーは「仕事」ですので、当事者が思い詰めていても状況を客観的に分析してくれます。

精神科医に気軽にアクセスするドイツ

写真はイメージです
写真はイメージです

筆者は、ドイツに住んでいた学生時代、失恋し不調が続いた時期がありました。そんな時に、友だちが「私も失恋して落ち込んだことがあって、どこそこの精神科医に行ったら調子が良くなったから、どう?」とクリニックの連絡先を教えてくれました。

予約を入れたものの、あまり期待はしておらず、友だちが教えてくれたのだから、と「ダメ元」で門を叩いたことを覚えています。「元気になるとは思えないけど、精神科医のところに行くことで、今より悪くなることはないだろう」という意味での「ダメ元」。正直、諦めモードだったのです。

ところが、今の状況や自分の気持ちについて、実際に先生と何回か話すうち、気持ちを整理することができました。徐々に立ち直るきっかけになったのです。筆者が1年以上交際をしたのちフラれた男性とは、共通の友だちや知人が多かったので、もし彼らに相談をしていたら……きっと泥沼化していたことでしょう。精神科医に頼るのは、ちょっと時期尚早かなとも思っていたのですが、プロに相談して良かったです。それができたのは、ドイツには当時から、気軽に精神科医に相談できる雰囲気があったからです。

ディープな悩みや精神的な不調を友達に相談するなかで、ネガティブな発言が続くと、打ち明けられた「相手」の負担になりがちなのは、先に書いた通りです。筆者が「友だちに相談する」のに二の足を踏むもう一つの理由は、「自分」です。

たとえば、数か月に一度会う友達に悩みを話したとしましょう。相手は心配し、次に会った際に、「あの時のあの件は大丈夫だった?」と確認の質問をしてくることでしょう。それはもちろん、こちらを心配してのことです。

でも、相談した数か月前から進展がなかったとしたら、再度ネガティブな話をすることになってしまいます。逆に、乗り越えて前に進もうとしているならば、忘れようとしていたことをまた思い出して、この場合もネガティブな気持ちになってしまいます。

相談した当時は精神的に思い詰められていたけれど、今はなるべく考えないようにしていた――。自分勝手であることは自覚していますが、筆者はそんな時、相手から「あの話は、あの後どうなった?」と聞かれるのが嫌なのです。それに、「共通の知人に言わないでね」といちいち口止めするのも面倒です。これもまた、勝手な言い分ですが……。

カウンセラーに相談するメリット

身も蓋もないことを言うようですが、カウンセラーなど専門家に相談をすることのメリットの一つに「話が(共通の知人など)外部に漏れないという安心感」が挙げられます。

筆者は、実は日本でも専門家に話を聞いてもらったことがあります。ある時、パートナーと問題を抱えて、精神的に具合が悪くなってしまい、「どうしても誰かに話を聞いてもらいたい」と強く思うように。ネットで「カウンセリングもやっているメンタルクリニック」を探しました。精神的に不調だったとはいえ、仕事には通えていたし、夜はよく眠れていました。生活に「目に見える支障」をきたしているわけではないので、「薬を処方してもらいたいとは考えていない。話を聞いてほしいのでカウンセリングをお願いしたい」とあらかじめ伝えておきました。

ラッキーだったのは、カウンセラーの先生と相性が良かったことです。竹を割ったような性格の明るい女性で、直球でバシッと言うタイプだったのですが、そのおかげで自分の状況を客観視することができました。ちなみに、カウンセリングを受けた後、ネットで評判(口コミ)を見てみたところ、「先生の性格がキツく、相談したことでかえってメンタルが (へこ) んだ」といった旨の意見も書かれていました。でも、私は元気になれたのですから、やはり「相性」が大事なのでしょう。

結局、薬を服用しないまま何回かカウンセリングに通って状況は改善したのですが、これから長い人生、何が起きるか分かりません。もしも、また精神的に大変だと感じることがあったら、迷わずそこに通おうと決めています。

自信につながっているもの

「人生には三つの坂がある。上り坂と下り坂。そして『まさか』」という言葉があるように、生きていると何があるか分かりません。想定外のことだってあるでしょう。「将来起こりうること」を想像すると、不安になることがあるものの、筆者の心の支えになっているのは「今まで大丈夫だったから、これからもきっと同じ」という気持ちです。

具体的にいうと、「大人になってから日本に来て、人間関係も仕事も全部ゼロからスタートした。その後、今に至るまでの25年間、色んな環境の変化はあったものの、生きてこられた」ということ。それが自信につながっているのです。

もちろん、将来何があるかは分からないわけですが、必要以上に悲観的になることもないと思うのです。不安な気持ちに駆られたら、「今までだってそこそこ幸せに生きてこられたのだから、これからも幸せに見放されることはないはず」と、「根拠のない自信」を持つのがある意味、心のよりどころになっています。

最近、筆者は「思い出」からエネルギーをもらえることに気づきました。元気のない時は、「過去に楽しい時間を過ごした場所」に行ってみると、当時を思い出し元気が出るのです。一方で、ちょっと「へそ曲がり」ではあるけれど、「嫌な思い出のある場所」を訪れるのもマイブームです。

たとえば、こっぴどくフラれた場所を訪れると、「あ、でも今はこんなに元気だもんね!」と、過去の自分を見返した気分になれますし、「今の元気な自分」を改めてかみしめることができます。いずれも「今の自分が過去の自分から元気をもらっている」わけです。しかし、このようなやり方では乗り越えられないトラウマを抱えてしまった場合、そして、それが原因で日常生活がままならなくなった場合は……一人で頑張ろうとしないで、早めにメンタルクリニックを訪れるとよいでしょう。

一昔前の日本には、「心の病」について語るのは「タブー」だという雰囲気がありました。それが、ここ数年、著名人を含め心の病を比較的オープンに語るようになりました。せっかく良い流れができたのですから、自分で自分をいたわるチャンスを逃さずに生きていきたいものです。(コラムニスト サンドラ・ヘフェリン)

プロフィル

サンドラ・ヘフェリン
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト
ドイツ・ミュンヘン出身。日本在住20年以上。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「多文化共生」をテーマに執筆活動中。ホームページ「ハーフを考えよう!」。著書に「なぜ外国人女性は前髪を作らないのか」(中央公論新社)、「体育会系 日本を蝕む病」(光文社新書)など。新著は「ドイツの女性はヒールを履かない――無理しない、ストレスから自由になる生き方」(自由国民社)。
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5009305 0 大手小町 2024/02/09 06:00:00 2024/02/09 06:00:00 /media/2024/02/20240202-OYT8I50074-T.jpg?type=thumbnail

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