和やかだった米ウクライナ首脳会談、40分後に一変…ゼレンスキー氏「悪いことしたと思わない」
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
【ワシントン=池田慶太、淵上隆悠】米国のトランプ大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2月28日、ホワイトハウスで会談した。記者団を前に激しい批判の応酬を繰り広げ、鉱物資源に関する協定署名や共同記者会見が中止となった。会談の決裂でウクライナと最大の後ろ盾だった米国の亀裂が深まり、ロシアの侵略終結に向けて米国が進める交渉にも影響が及びそうだ。
トランプ氏の大統領就任後、対面での首脳会談は初めて。トランプ氏がウクライナの鉱物資源を共同開発する協定の合意を「素晴らしい結果だ」と歓迎し、昼食後に署名すると述べるなど和やかなムードで始まった。ゼレンスキー氏も「真の安全への第一歩になることを願っている」と応じた。
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しかし約40分後、一気に緊迫化した。同席したバンス副大統領が「平和と繁栄への道は外交に関与することだ」と述べたのに対し、ゼレンスキー氏はプーチン露大統領が過去の合意を次々とほごにした経緯を振り返り、「J・D(バンス氏)、外交とは一体どういう意味か」とかみついた。
バンス氏は「大統領執務室にやってきて米国のメディアの前でそのような訴えをするのは失礼だ」と反発した。両者の応酬にトランプ氏が割って入り、ゼレンスキー氏に対して「あなたは我々に指図する立場にない」「あなたは数百万人の命と第3次世界大戦を賭けたギャンブルをしている。やっていることは米国に対して非常に失礼だ」と一方的に批判した。
トランプ氏は顔を紅潮させながら、「米国がいなければ、あなたにカード(切り札)は一切ない。我々に感謝するべきだ」「我々の軍事装備品がなければこの戦争は2週間で終わっていただろう」とまくし立てた。米国との取引に応じなければ「手を引く」と語り、「きれい事では済まない」と脅しをかけた。
ゼレンスキー氏は通訳を交えず英語での釈明を試みた。「カード遊びをしていない。戦争だ」などと反論しようとしたが、かえって怒りをあおり、トランプ氏の勢いに圧倒された。

会談後に予定された昼食会や協定署名式は中止となった。CNNによると、ウクライナ側は会談継続を求めたが米側が拒否した。
トランプ氏はSNSへの投稿で「米国が大切にする大統領執務室で米国を侮辱した。平和の準備ができたら戻って来ればいい」とゼレンスキー氏を突き放した。その後、記者団には「彼はとても強く出すぎたと思う。平和を望んでいる男ではない」と批判した。
米紙ニューヨーク・タイムズは28日、バイデン前政権が承認した武器支援を含め米国の全てのウクライナ支援が間もなく中止される可能性があると報じた。
一方、ゼレンスキー氏は米FOXニュースの番組で「双方にとって良くなかった」と会談を振り返った。司会者からトランプ氏に謝罪をするか問われたが、「何か悪いことをしたとは思わない」と拒否した。