LINEが2020年度中の開業を目指す新銀行の勘定系システムについて、富士通が開発を受注する見通しになった。地方銀行向けの勘定系ビジネスで苦杯をなめてきた富士通にとって、LINE新銀行から受注を勝ち取る意義は大きい。今後、LINE新銀行のようなモバイル専業銀行の設立が相次ぐ可能性が高いからだ。富士通はLINE新銀行からの受注を反転攻勢の一手にできるか。
静岡銀行、東邦銀行、みなと銀行――。富士通がここ数年で勘定系システムの開発・運用の受注が途絶えた主な既存顧客だ。一時は地銀の勘定系市場で日本IBMと首位を争った富士通だが、この15年ほどは競合他社のリプレース攻勢に押されている。それだけに、LINE新銀行の受注は久しぶりの朗報。銀行の勘定系システムの新規受注は大和ネクスト銀行以来、およそ10年ぶりとみられる。
みずほの意向が影響か
LINEはみずほフィナンシャルグループ(FG)と組んで銀行業に参入すると2018年11月に発表した。2019年5月に準備会社を設立し、関係当局の許認可などを前提に、2020年度中の新銀行開業を目指している。これに向け、勘定系システムの開発委託先の選定を進めていた。
商談は接戦だったもようだ。LINEの親会社が韓国IT大手のNAVERであることから、安価な韓国製の勘定系システムを採用するのでは、という見方もあった。富士通と競合する国内IT大手も受注に向けて意欲を示していた。
富士通が選ばれた背景には、みずほFGの意向が少なからずあったようだ。富士通は長年、みずほ銀行の勘定系システムを担当してきた。2002年と2011年にみずほ銀行が起こした大規模システム障害でも同行を支え、2019年に全面稼働した勘定系の全面再構築、もしくは新勘定系の構築でも中心的な役割を果たした。
富士通はLINEやみずほFGに対し、ソニー銀行などで実績がある既存システムをベースにLINE新銀行の勘定系システムを構築し、将来的にパブリッククラウドで動作する開発中の新システム「FUJITSU Banking as a Service(FBaaS)」に移行するという「2段階」の提案をしたとみられる。LINE新銀行サイドは早期開業と安定稼働という当面の目標をクリアしつつ、新技術を取り込める点を評価したようだ。