2021年の正月、初詣の参拝者を昨年の約130倍も集めた寺院がある。四国八十八カ所の第22番札所として知られる平等寺(徳島県阿南市)だ。
同寺院は2021年1月1日にオンライン上のイベント「リモート初詣」を始めた。本堂や護摩祈祷(きとう)の様子をYouTubeなどでライブ配信し、オンラインでの参拝を呼びかけた。元日には約13万人が同寺院の配信を視聴。視聴者数を参拝者数と見れば、昨年の約130倍の参拝者を集めた計算になるという。
取り組みを取材すると、リモート初詣を充実させるための住職の様々なこだわりに驚いた。
例えば動画の映像は4Kで配信、音声はステレオで配信している。オンラインでも視聴者に臨場感が伝わるように、映像と音声の質に「徹底的にこだわった」(谷口真梁住職)。動画を視聴してみると、映像は畳の目が見えそうなほど鮮明で、音声は住職の息づかいや境内の鳥の鳴き声まで聞こえるほどクリアだ。
「祈りの価値は再現できない点にこそある」(谷口住職)として、護摩祈祷などの過去の配信映像を再生できないようにしている。本堂の様子を24時間配信し、常にリアルタイムの映像と音声で参拝してもらっている。
1月1日には「リモート除夜の鐘」というイベントも開催した。YouTubeのチャット欄に専用のコマンドを書き込むと、鐘の脇に設置したロボットアームが動いて鐘を打つ仕組みだ。誰のコマンドで鳴った鐘か分かるように、チャット欄にコマンドの発行者を書き込むボットも用意した。
祈祷で読み上げる祈願は寺院の公式ウェブサイト上で受け付け、固有の番号を発行した。護摩祈祷の配信時には今どの札を読んでいるか番号を配信画面に表示。視聴者が自分の祈願が読み上げられている瞬間を楽しめるようにした。