「次世代の電力メーターで無線LANの活用を検討されているみたいですよ」。
通信機器の業界関係者を2021年11月に取材したときにこんな話を聞いた。無線LANといっても2.4GHz帯や5GHz帯の電波を使用する「IEEE 802.11a/b/g/n/ac」ではなく、920MHz帯の電波を使用する「IEEE 802.11ah」という通信規格だ。無線LAN製品の業界団体であるWi-Fi Allianceで「Wi-Fi HaLow(ヘイロー)」と呼ばれている。2021年11月にWi-Fi Allianceが認証プログラムを始めたことで、IEEE 802.11ah対応の製品が近く一般向けに販売されるようになる。
筆者はこの話を聞いて、次世代の電力メーターの仕様策定が進められていることを遅ればせながら知った。資源エネルギー庁は2020年9月から「次世代スマートメーター制度検討会」を開催し、有識者や業界関係者などを集めて検討している。
日本の多くの家庭や企業には「スマートメーター」と呼ばれる電子式の電力メーターが設置されている。通信機能によってメーターの検針値、つまり各家庭や企業が消費する電力量を遠隔監視できる機器だ。国内最大の契約者を抱える東京電力が2014年に導入を始めたことをきっかけに、従来のアナログ方式からの置き換えが一気に進んだ。設置済みの台数は東京電力を含む国内大手電力会社10社を合わせて6100万台(2020年3月時点)に達する。現在もアナログ方式からの置き換えが進行中だ。
筆者は2012年ごろに「日経エレクトロニクス」に所属していたとき、この分野を取材していた。その後に電力メーターとは縁遠い部署に異動になったこともあって、しばらくウオッチしていなかった。だが、「日経クロステック」に配属になってからIT関連分野を幅広く書けるようになったので、次世代の電力メーターにがぜん興味が湧いてきた。
「アナログ方式からの置き換えが終わっていないのにもう次世代なの?」と思う読者もいるかもしれない。しかし、電力メーターの使用期限は最長10年と法律(計量法)で定められている。つまり、東京電力が2014年に導入した現行機の置き換えが2024年に始まるのだ。この置き換えに向けて、次世代に求められる機能などが検討されている。