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 最近、プログラミング言語「Python」に関して残念な出来事があった。2023年10月に開催されたPython関連イベント「PyCon APAC 2023」のプロポーザル選考過程において不正行為があったという匿名の告発がインターネットで公開されたのだ。プロポーザルを審査する査読者の1人として、不正を目の当たりにしたという。この告発に対し、同イベントの開催者側である一般社団法人の「PyCon JP Association」も意見を公開している。

 告発の内容を読んでみたが、私は当事者ではないので、この選考過程を「不正」と呼ぶのが適切かどうかは判断できなかった。はっきりしているのは、査読者の間で意見の相違があったということだけだ。部外者としては、こうした決定的な対立に至る前に話し合いでどうにかならなかったのかという月並みな感想を抱いた。

 この騒動で私が気になったのは、Python自体が皆にどのように思われているかがあぶり出されたように見える点だ。

 現在のPythonは言わずと知れた大人気言語である。日経クロステックが実施した「プログラミング言語利用実態調査2023」では、「現在使っている言語(3つまで)」「メインに使っている言語」「今後、スキルアップしたいと思う言語」のすべてでPythonが第1位だった。圧倒的な人気だ。

 Pythonは初心者がプログラミングを始めるときにも選ばれることが多い。際立った特徴、すなわち「変な癖」が比較的少ないからだ。特徴といえば「インデントによるブロックの表現」や、リストを簡潔に作成できる「リスト内包表記」くらい。しかも、インデントが文法的な意味を持つ言語やリスト内包表記を備える言語は他にもある。

 Pythonのコードは基本的には素直で読みやすいことが多い。プログラミングを始める初心者にはうってつけだ。

 私は以前、Pythonの癖の少なさを「いい意味で没個性」と表現したことがある。ソフトウエアのロジックを説明する際に、様々な言語の最大公約数的なプログラムである「疑似コード」を使うことがあるが、Pythonのプログラムはまるで疑似コードのようだと感じることもある。