「電子書籍を、1分で世界に配信できます」──Androidをターゲットとした電子書籍アプリ作成サービス「Androbook」は、“衝撃的”なサービスだ。機能は最小限だが、無償で利用でき、既存の出版の枠組みに縛られておらず、多くの人々を巻き込む力を備えている。そして今も成長を続けている。
Androbookが巻き込んだ人々の立場はさまざまだ。Androidアプリ開発者らは、自発的に「Androbookアプリをカイゼンする会」を開き、バージョンアップに協力した。デザイナは無償で協力してWebサイトをブラッシュアップした。
Androbookの登場直後に起きた“事件”は、マンガ家の佐藤秀峰氏が、代表作『ブラックジャックによろしく』を電子書籍アプリとして全巻公開したことだ。プロのマンガ家が、単行本の累計発行部数1000万部以上というベストセラーをAndrobookを使い公開したのだ。
2011年1月の段階で、作成された電子書籍は累計1万3000冊近いという。その中には、電子書籍を公開するのではなく自分専用に使う、いわゆる「自炊」も含まれている。
このようなAndrobookの成長は、計画したものではなく、人々を巻き込んだ勢いによるものだ。Twitterでのやりとりが広がりを支えた。
“衝撃的”だったAndrobook
「最初は思いつきです」。作者の村上福之氏は、Androbookを作った当時のことをこう振り返る。数日で作り上げ、2010年10月に公開した。その「衝撃的」な内容は多くの人々の関心を集めた。なにしろ無償で、しかも分かりやすかった。
Androbookは、電子書籍のAndroidアプリ(以下、電子書籍アプリ)を作るサービスだ。電子書籍用のコンテンツをWebから投入するだけで、アプリを生成してくれる。料金は発生せず、登録などの手続きも不要だ。
できあがった電子書籍アプリは、米Googleが運営するAndroid Marketで公開することで、直ちに世界中に配布できる。有料で販売することも可能だ。このように、常識外れの手軽さで、電子出版が可能になった。