アドビシステムズはPDF作成ソフトの新バージョン「Acrobat 8」シリーズを投入する。最大の特徴は,パンフレットや広報文,あるいは見積書など,複数人がかかわる文書作成の支援機能を盛り込んだこと。11月下旬から順次出荷する予定だ。
目玉となる新機能の一つが,PDFフォーマットの文書を使ったアンケート機能である。自動認識機能を使いながら,PDF文書に入力フォーム欄を指定し,そのフォームのデータ項目名を設定。そのPDF文書を関係者に配布する。返送されてきたPDF文書を収集すると,各関係者がフォームに入力したデータを,表の形で一覧できる。Excelファイルなどに出力することも可能だ。
同社は小規模なグループ内で手早くデータを集めたいときや,PDFフォーマットで作成した見積書の記入内容を集計するときに適しているとアピールする。米澤香マーケティング本部ナレッジワーカー部長は「Webアプリケーションなどでアンケート作成機能をわざわざ作り込まなくてもデータを収集できるので,社内外の関係者を含めた共同作業に向く」と説明する。
また「共有レビュー」機能を強化した。これはPDF文書にコメントを付与するもので,共有サーバーに保存したPDF文書にコメント管理用の別ファイルをひも付けて格納。これにより,文書のレビューに参加するメンバーは,過去のコメントを確認しながら自分のコメントを入力できるようにした。
併せて「レビュートラッカー」機能も改善した。レビューの期限を設定し,レビュー参加者の誰がコメントを入れたかを一覧できるようにした。これにより,「レビューの進捗管理を効率的に実施できる」(マーケティング本部の小圷義之氏)という。
Flashによる会議システムと連携
もう一つの目玉は,動画や音声を使った会議機能との連携だ。アドビが別途販売するコミュニケーション支援ソフト「Acrobat Connect Professional」と組み合わせることで,複数人が同じPDF文書を参照しながら,動画,IPによる音声,チャットなどを使って議論できる(図)。Connectは旧マクロメディアのWeb会議ソフト「Breeze」の後継に当たる製品。Flash技術を使い,動画や音声などの機能を実現している。「専用のテレビ会議システムを必要としないのが売り」(マーケティング本部の長部謙司氏)という。
複数人で文書を作成していると,文書に対するコメントについてその意味を確認したり,異なるコメントが出てきた際に互いの意見を調整したりと,電話などで会話をする必要性が出てくる。「Connectを使うと,文書の作成と共有,コメントの付与,会話による確認や調整といった流れを切れ目なく形成できる。実際にアドビ社内でも使っており,その効果は確認済み」(長部氏)。
ユーザー企業内にサーバーを置くパッケージ・ソフト版と,アドビ側のサーバー・ソフトを利用するASPサービス版の2つを用意する。別途,企業内個人のユーザーを想定したサービス「Acrobat Connect」を用意する予定。
Acrobat 8はProfessionalとStandardの2種類を用意する。フォーム関連の機能はProfessionalが備える。Acrobat 8 ProfessionalとStandardの出荷は11月下旬から。価格はProfessionalが5万7540円(税込),Standardが3万6540円(税込)。稼働OSはProfessionalがWindowsおよびMacintosh,StandardはWindowsのみ。
Acrobat Connect Professionalの出荷およびサービスの開始は12月中旬から。最小構成の価格は約320万円。システム構築を含むことが多いため,主にシステム・インテグレーターから提供する。稼働させるサーバーのOSはWindows 2000 ServerもしくはWindows Server 2003。なお,企業内個人向けであるAcrobat Connectの日本語版の提供開始は2007年になる見込み。
【修正履歴】当初,最小構成価格を「約370万円」と記述していましたが,アドビ システムズ社の発表文が訂正されたのに合わせて,本文中も「約320万円」に修正しました。(2006年9月19日) |