2021年(上半期、下半期)、2022年(上半期、下半期)とやった企画の2023年上半期版ですね。
しかし、この半年、あまり Netflix で映画観なかったな。
西部戦線異状なし(Netflix)
1930年版の『西部戦線異状なし』はワタシの父親が好きだった映画で、ラストシーンについて何度も語っていたのを記憶している。よほど印象的だったのだろう。これが Netflix でリメイクされると知り、これは観なければならないなと思った。
『プライベート・ライアン』や『1917 命をかけた伝令』を連想させる戦闘場面のリアルさ、というかシビアさが実によくできている。
戦闘そのもの以外でも、観ていて本当に絶句するしかない酷薄な場面がいくつもあるのだけど、最後になってお偉いさんのメンツのために命じられる攻撃命令とその顛末、そしてエンディングにおける字幕の徒労感がつくづくとんでもない。これは今年観ておくべき映画ですよ、ホントに。
本作では最後が休戦協定の話になるため、タイトルの意味が分かるラストがないのに賛否があるかも。そういうのは現代的ではないという判断だろうが、父親が生きていて本作を観たら、これは『西部戦線異状なし』じゃないと怒り出すかもな、とか思ったりした。
ホワイト・ノイズ(公式サイト、Netflix)
原作は未読だが、これってアメリカ的ポストモダン小説の映画化という意味で、いわゆる「映画化不可能と言われる小説の映画化」のひとつなんだろうか。
主人公が大学教授だが、大学の戯画もそうだし、それに死の恐怖、薬物への依存、信仰の意味といったテーマがアメリカ的ポストモダンっすなという感じだった……と書くとけなしているようだがそうではなく、こういうのもワタシの好物なのである。
それにしてもアダム・ドライバーの主役としての安定感は異常だ。一方で、グレタ・ガーウィグが意外に活きてない感じがした。
エンドクレジットでの LCD サウンドシステムが最高だったので、それでよしという気分にさせられる映画である。
ラッカ(Netflix)
これも短編映画ということで。『第9地区』や『チャッピー』のニール・ブロムカンプ率いる Oats Studios の短編作品。
うーん、この人の特色である悪趣味は十分味わえるし、それを見どころと考えるなら悪くはないです。でも、それだけ。
クーリエ:最高機密の運び屋(公式サイト、Netflix)
この映画をなんで観る気になったのか……確かデビット・ライスさんが誉めてるのを見かけたからかな。
よくできたスパイもので、前半のコミカルだったりしてテンポ良い感じと後半の一転してシビアな感じの対比がうまかった。
ベネディクト・カンバーバッチが年齢相応の中年男を演じているが、彼とジェシー・バックリーの夫婦が良い組み合わせだった。
あと、レイチェル・ブロズナハンが演じる CIA 職員が良いのだけど、CIA や MI6 のお偉方の男性と違い、彼女の役ってフィクションだと思うのよね(違っていたらすいません)。冷戦下の史実に基づく作品で重要な役割を果たす登場人物の女性がそうだというのは『チェルノブイリ』とも共通すると思ったりした(だから良いとか悪いとか言いたいのではない)。
キューバ危機の裏にこんな話があったとは。しかし、収容所で二人のスパイが対面する機会って本当にあったのだろうか?
トップガン マーヴェリック(公式サイト、Netflix)
本作についてはマヌケな感慨しかない。言っておくが、ここでのマヌケはワタシのことだ。
もちろん本作公開時に映画館で、それも IMAX で観たいと思ったのだが、そもそもワタシは『トップガン』を観たことがなかった! 公開時は確か Netflix に旧作はなかったんじゃなかったっけ? しかも、今では近所にレンタル屋もないので、手軽に DVD を借りることもままならない。
やっぱ『トップガン』観ずにマーヴェリックは失礼でしょ? とこだわっているうちに上映期間を終えてしまい、そして、結局 Netflix で、やはり『トップガン』を観ずに本作を観ることになってしまった。マヌケとはこのことだ。
というわけで、ワタシは本作を堪能できたとは思わないが、それはワタシが悪いのだ。
本作の作品世界自体ツッコミの対象になるのだけど、それを直線的に盛り上げてねじふせるトム・クルーズはスゴいよな。まさに宇野惟正氏が書くように、「最後の映画スターによる最後のスター映画」であった。
ギレルモ・デル・トロのピノッキオ(公式サイト、Netflix)
ギレルモ・デル・トロというと、やはり Netflix で観た『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』も良くてですね……という話はまた少し先で書く。
本作はギレルモ・デル・トロが長年熱望していた企画らしいが、元々予想していたよりもがっつりファシズムに染まる国を舞台にしたダークファンタジーである点で『パンズ・ラビリンス』をどうしても連想するし、主人公が見せ物小屋にいくあたり『ナイトメア・アリー』を思い出したりもした。
もちろん本作はピノキオそのものなのだけど、それを実に彼らしい作品に仕上げている。ストップモーションアニメとしての見事さは言うまでもない。そして前述の通り、ファシズムに染まる国という舞台設定が結構重くて、『西部戦線異状なし』とは違った意味で、おそらくは意図せずこちらも今観るべき教育的効果を持つ映画になってしまっている。
2023年下半期最初に Netflix で観る映画は、これまで避けてきた『プロミシング・ヤング・ウーマン』になる見込みである。