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業務委託契約と派遣契約と偽装請負
まずはおさらいをしておきたい。
世の中には会社間での契約に業務委託契約と派遣契約というものがある。
業務委託契約
業務委託契約は更に以下に分けられる。 労働問題とは本来は関係ない。
- 請負契約
- 準委任契約
請負契約
請負契約はソフトウェアで言えばある製品一式の開発を受託する会社に任せて完成品を受け取る契約。 作業場所、人員、間接経費などは一切発注側はあずかり知らない。 自社の技術力やソフトウェア資産を生かして新たな「原価」、「経費」の額に関係なくある程度の金額で受託することができ、技術力が高ければかなり儲かる。
しかし、技術力が低ければほとんど原価や経費に取られて儲けが出ない。 その会社が雇用してい担当社員の残業時間が多くなれば残業手当の支払いも多くなってどんどん設けも少なくなる。 「残業手当」などを含む人件費と技術的な難易度なども含めて見積時に検討が必要でかなりの経験と見通し、技術的課題の広範な判断能力が問われる。 技術力が低い会社はほとんどやりたがらない契約だ。 当然、自社の社員の残業代がかさんでも客には請求できない。 最初の見積額で注文してもらった金額しかもらえないのだ。
それどころか、「瑕疵担保責任」というものがあり、納品後の一定期間の不具合などは「無償で」改修責任がある。その対応をする場合の人件費も客には請求できない。
準委任契約
開発規模が分からないが手先となって開発業務の代行を行う契約。「原価」や「経費」はほとんどかからない。 「準」が付かない「委任契約」は法律関係業務だけが対象。
開発に必要な道具は発注元がそろえてくれる。 開発に1ヶ月かかろうが1年かかろうがその「時間分」の単価で請求額を支払ってくれる。 会社としてはリスクの少ない契約だ。 しかし、慣習としては無条件に「時間分」の請求はしない。 ソフトウェア開発の場合は140H~200Hの時間の場合は固定額で契約することが多い。 実時間が140Hに近ければ受託会社の儲けは多いが200Hに近ければ受託会社の儲けは減る。 これは以下の考え方がベースにある。
- 受託会社の技術力が高ければ予定通り終わってWin-Win
- 時間かかっても200Hまでは追加金額は払わないよ
- 200H超え、え?そんなに難しかったの?そんなに作業量多かった?が超過判断
- 200H超え、新人などの役に立たない人員だったんなら払わないよ。次回からその人がやるなら契約しない
なお、「瑕疵担保責任」条項も除外してもらう必要がある。
本来は自社に持ち帰って開発すれば済むような「ざっくり」な依頼と提案型の開発スタイルもとれるし、客先の指示通り「作業」を行うために自社ではなく「客先常駐」することもある。 しかし、現実的には「客先常駐」のケースが圧倒的に多いはずだ。そもそもこのような「はたらき方」は日本独特のものだと考えられる。
会社員に指示するのはその会社だけなので常駐先の組織の人間からは本来は「指示」されてはいけないのだが、それがまかり通っていることが多い。
派遣契約
昔は届け出制の特定派遣という怪しいものがあったが、現在は派遣のみとなっている。 派遣法に基づいてお国に許可をもらわないといけない「許可制」の会社の資格だ。 許可をもらっていない会社は人材派遣はできない。 労働関連法令の管轄となる。
人材派遣をする許可をもらっている会社に雇用されている社員を他の会社の現場の社員と一緒に働かせる契約だ。 大抵時給いくらで会社間では契約する。
派遣先の会社の人間が派遣されてきた自社以外の社員に対して「指示できる」のはこの契約形態だけだ。
準委任契約では「時間単価」と書いた。ここでは「時給」だ。後で問題になってくる。
客先常駐
ソフトウェアなどの開発エンジニアは所属する会社の事業場で働く以外に「客先常駐」という形で「現場」で働くことが多い。
日本では常態化しており、「ぼーっと」して「何も考えない」輩も多い。こんなの当り前だと思っている。
「客先常駐」というのは契約内容や自分の置かれている立場とは無関係な状態を表す言葉であるので、本来はその立場に置かれている本人たちが自分はどのような契約がされてこの場にいるのかを気にしなければいけないはずだ。
しかし、「ぼーっと」生きている彼らはそんなことを気にしていない。 準委任契約だろうが派遣契約だろうが関係ないのだ。 しかし、どのような契約でその場にいるのかによって、やるべきこと、やってはいけないことは変わってくるのだ。
- 準委任契約なので客に意図を汲み取ってどんどん仕事を進める:〇
- 準委任契約なのに客の下っ端担当者にこまごまと命令された:×
- 派遣契約なのに月の残業時間が100時間を超えた:×
- 準委任契約なのに現場の責任者から仕様書が提示されるまでぼーっとしていた:×
- 準委任契約なのに若手の客先業務とは関係ない自社の若手の育成に時間を割いた:×
- 派遣契約なのに自社の若手の育成に時間を割いた:×
- 派遣契約なのに自社の若手に命令した:×
準委任契約の不適切な運用は「契約違反」、派遣契約の不適切な運用は「労働関連法令違反」。
特に「自社の若手の育成」とか「自社業務」を客先でやるのはどっちもNG。その現場の退勤後にやる話だ。
偽装請負
この用語の解釈は非常に広範囲にわたる。
ケースA:狭義の偽装請負
- 会社Aがある人物と雇用契約を結ばずに業務委託・請負契約を締結
- 会社Aの事業場で仕事をしてもらう
- 「請負」契約なので1ヶ月いくらの固定金額
- 実際の「勤務」時間が100時間でも200時間でも300時間でも同じ金額
- 社会保険未加入
- 労働問題で会社Aは罪に問われる
- そもそも「実態」が雇用関係にあったとみなされる
ケースB:広義の偽装請負
- 会社Aが個人事業主Xと業務委託・請負契約を締結
- Xは社会保険未加入、月額固定
- 会社Bを介して会社Cの現場に常駐して仕事をする
- 会社Aと会社Bの間は準委任契約
- 会社Bと会社Cの間は準委任契約
- 会社Bから会社Cには複数の人員が入っていた
- 会社Cの担当者はXに指示を出す
- 会社Cは会社Bに対して時間に応じた金額を支払う
- 会社Bは会社Aに対して時間に応じた金額を支払う
- 労働問題で会社Aは罪に問われる
ケースC:変則的な偽装請負
- 会社Aは社員Yと雇用契約
- 社会保険加入、残業手当も支払われる
- 会社Aは会社Dで客先常駐作業をしてもらう
- 会社Aは「業務委託契約」というタイトルで時給ベースで見積
- 会社Aは「準委任契約」という知識がないのだ
- 会社AはY以外にも技術力の伴わない社員を技術力が高いと偽ってDと契約
- 会社Aは請求時に実際のYなどの作業時間数に応じた金額を請求
- 技術力が低い社員を客先常駐させているので時間がかかるのは当然
- もしかしたら開発そのものが終わらない
- でも時給ベースで請求して良いという契約なのでかかった分だけDはAの請求通りに支払う
- 時給ベースの請求と支払いにより会社Dは派遣法違反とみなされる可能性がある
- 会社Aは逃げることは可能
構内請負
もう訳が分からないだろう。 これは受託側、つまり、常駐させる会社側の「偽装請負」ごまかし対策だ。 自社内で自社の社員とは明確に区画分けをして常駐させている他社社員を分けて、気軽には「指示ができない」ようにする行為のその会社での合法だと思っているコンプライス担当者の対策名称。
なので、この契約の場合は確実に「業務委託・請負」契約である必要がある。しかし実際には「業務委託・準委任契約」である場合が多い。
愛知ルール
やっと本題だ。 最近まで知らなかったことだが、愛知と関東でルールが異なるらしい。 というか、「関東」は日本国の法律に基づいた行動をおこなっているが愛知はそれを行っていないというのが正確。
それは以下だ。
- 業務委託に請負契約と準委任契約があることを知らない
- 業務委託というタイトルの契約書なら何をやっても構わない
- 業務委託なのに「時給」で見積計算する
- 業務委託なのに請求時に実際の作業時間を「時給」で行う
- 瑕疵担保?なにそれ
- 技術力?なにそれ
- 140H-200H?なにそれ
- 実態が派遣契約と同じになってるよ?知らないよそんなこと
まあ、上記の「偽装請負:ケースC」のことだが、あまりにもひどいと思ったので本来の用語の説明と一緒に紹介した。
この愛知の会社は「偽装請負」とは別の罪もある。 それは「詐欺」だ。
- 愛知の大手メーカでの豊富な開発実績がある
- 経験年数の長い人材を最初に現場に送り込む
- 「そこそこ」はできる
- その後人員を追加「派遣」
- 出来る人間もできない人間も一律時給請求
- これが大手のメーカが認めた契約で問題ありません
しかし、実態は以下だ。
- 愛知ルールでメーカに「人材派遣」していただけ
- 経験年数が長いのはその現場にただ長くいただけ
- 大手愛知メーカの品質管理は厳しいのでそこそこは対応できる
- しかし、指示されたことをやっていただけで、提案力、設計力は新人のまま
- デバッグ手順位は分かってる
- 追加人員はほとんど素人
- 3年ナビの開発やってました。OS?って何ですか?関係ないっす
- 組込み経験のない人間を20年以上の組込み経験者とか騙す
- 大手メーカが認めていたのは過去の話
- 実力がばれて愛知で仕事なくなったので関東に進出
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