ラベル 愛着品紹介 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 愛着品紹介 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

愛着品紹介015-世界で一番タフな傘『SENZ Umbrellas』

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
個人的に傘はイギリス製か日本製に限ると思っています。理由は単純なことで、どちらの国も雨の日が多いので、嫌でも雨具に対する目が厳しいでしょう。故に丈夫で良質なものが揃っているだろうと思うからです。イギリスの人は傘は差さないって聞きますけどね(^^;)。
イギリス製だったらFOXやBRIGG。日本だったら福井洋傘さんのものがオススメです。とくに福井洋傘さんは個人的にイチオシ。雨傘の生地に大島紬や久留米絣を使おうだなんて大胆なことを考え付くのはココしかありません。スーパー撥水傘「ヌレンザ」で有名な会社でもあります。ちなみに家内はココの傘を愛用中です。家紋入りの傘もオーダーできるので、いずれ発注してみようかと企んでいます(^^)/

しかし、今私が愛用している傘はFOXでもBRIGGでも、福井洋傘でもない傘です。それはオランダ発『SENZ Umbrellas』。傘と言ってイメージするフォルムを完全に裏切ってくれる、まるでステルス戦闘機のような非対称な形。空気力学の専門家により作り出されたこの傘は、風に対してベストな位置に傘が動き、100km/h(秒速約27.8m)の風を受けても、お猪口になることが無いという頼もしい傘なのです。

さらにこのデザインは前部が短くなっているので視界が良好!後部は逆に長めのスポークが背中を十分覆うので、傘の水滴が背中に落ちる不快感から解放されます。普通の傘を破壊するほどの(実際に1本やられました)ビル風が吹き荒れる、私の勤め先のビルの前の道ですが、コイツだったら問題なし!とにかくやたらめっぽう風に強い傘です。さすがに風車の国からやってきただけのことはあります。風が強ければ強いほど、コイツの性能限界を試す良いチャンスなので、風が強い雨の日を嫌がらずに済むという思わぬ効能もあります(笑)

しかし、ちょっと難点も。傘って差したときの姿ももちろん重要ですが、実は畳んでいる時の方が多い代物なので、巻き取った後の姿がとても重要です。望ましいのは細くスラッと巻き取れて、重心が気持ち内側にあること。しかし非対称なデザインのこの傘は、巻き取った後の姿が全く美しくないのです・・・。付属のスリーブに入れて対応するしかないのが誠に惜しい。更に留紐がベルクロというのもちょっと残念ポイントです。蛇足ながらその点、福井洋傘さんの特に女性向けの傘は巻いた後でもふわっと花が開いたかのような立ち姿になり、まるでアクセサリー感覚で傘を持って歩けるよう工夫されています。この点は日本に一日の長がありそうです。

ともあれ、恐らく世界で一番風に強い傘です。それが7,140円で手に入るのだからコストパフォーマンスも悪くないと思います。去年は暴風を伴ったゲリラ豪雨に閉口した人も多いと思います。とにかく強風に負けない傘を!と思っていらっしゃる方には是非オススメしたい一品です。


※ものすごく注目されることだけはお約束します(笑)

愛着品紹介014ー"今"を纏う『MARGARET HOWELLのジャケット』

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
ONの日はスーツなので、服選びに困ることはありません。埃と格闘する必要もある仕事ゆえ、ビスポークのスーツなんてもったいないので、吊しのスーツばかりですが、それでも友人のスタイリストに教えてもらった私に似合う柄や素材、シルエットのスーツを着ているので、貧相に見られることもなく、大抵のお店に躊躇することなく出入りできる程度の格好をしています。多分。

問題はOFFの日の装いです。20代まではTシャツとジーンズというカジュアルの王道一本槍で何とかなりましたが、齢30を超えるとそうも言っていられなくなりました。30歳を超えたところで自分のカジュアル姿に違和感を覚えたのです。何というかチンチクリンなんですね。要するに格好悪いわけです。


ネクタイは忘れても、ジャケットだけは、忘れずにいつも持っていろ

と白洲次郎は言ったそうですが、ジャケットを着ていないことにその格好悪さの原因があるのだと思いました。かといって、ユニクロや無印良品のモノではどうも品が無いというかピンと来なくて困っていたところに、MARGARET HOWELLのジャケットと出会いました。

イギリスらしいトラディショナルな印象、数量よりも高品質であることが何よりも重要だという理念を感じ取ることができる素材選びと縫製の丁寧さ。上質でシンプルでありながらも、デザイナーMARGARET HOWELLさんの優しい新鮮な空気が織り込まれているかのようなデザインです。ブランドの服を着るということは、そのブランドの切り取った"時と風景"に共感したということです。私の愛用しているジャケットの素材は「コットンリネン混」。人も物も情報も幾重にも複雑に混ざり合う"今"を切り取った素材選びだと思っています。

このジャケットの下に着るシャツもここの製品と決めています。1970年に発表したメンズシャツがブランドのスタートであり土台ですから、当然シャツも高品質です。新品のシャツなのにヴィンテージシャツを着ているような気持ち良さ。ここのシャツは、アイロンをかけずシワのまま着てOK。そのシワはだらしなさではなく、粋な表情となってくれるからです。そして着心地は言うまでもなく『最高』です。

MARGARET HOWELLの服はどれも数シーズン経ったら時代遅れになるような流行を追ったデザインではありません。そのデザインはどこかルーシー・リーのそれに近いような印象を受けます。決して多弁ではないけれど主張することはキッチリ主張する気骨がありながら、何故か全体的に柔らかく優しい雰囲気があるという不思議なバランスがそう感じさせるのかもしれません。

何とか手が届く値段で、長く着ることができる上質な良い服を着たいという、私のようなワガママな人には最適な服だろうと思います。もちろんブランドの切り取った“時と風景”に共感すればの話しですが。最早このブランドの切り取った“時と風景”に魅了されてしまった私のクローゼットは、徐々にしかし確実にMARGARET HOWELL一色になっていくだろうと思っています。

愛着品紹介013ー長い友だちでいたいから。『薩摩柘植のヘアブラシ』

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
「髪」という漢字の正確な字源は知りませんが、この漢字を覚える時、私は「髪は長い友だち」と覚えました。髟(かみづくり・かみかんむり)は「かみのけのたれた様を表す」と『漢字源』改訂新版に載っていますので、あながち間違いでもなさそうです。ともあれ、髪の毛とは一日も長く良好な関係を保っておきたいと思うことには男女問わず多くの方に同意いただけると思います(^^;)

さて、写真のヘアブラシのお値段、幾らくらいだと思われますか?
・・・・・
・・・・
・・・
・・

正解は、28,350円です!

「高っけー!」と思われたと思います。しかし価格に見合うだけの価値と理由がちゃんとこのブラシにはあるのです。

薩摩柘植で作られた櫛は江戸時代から「櫛になりたや薩摩の櫛に諸国娘の手に渡ろ」とうたわれ全国にその名を知られるほどに有名です。柘植は緻密で固い木なので櫛の歯が折れにくく、色の艶が美しいことが魅力です。黄色くてなめらかなその肌は黒髪に染まるごとに渋みを増し、年を重ねるに従って見事な光沢が出てくると言います。櫛の場合、日本女性の長い黒髪に艶のある黄色の櫛がスーッと通っていく様は実に美しい一瞬だと思います。

というわけで、柘植の"櫛"は結構見かけると思うのですが、これは"ブラシ"です。櫛とブラシは何が違うのか?それは「櫛は髪を美しくするもの。ブラシは髪を育てるもの」と言い、このブラシは最初こそあたりが強いものの、地肌を優しくマッサージしてくれ、頭皮の汚れを掻き出してくれます。また、柘植素材の最大の特徴として、静電気が殆ど生じないので、頭皮にほどよい刺激を与え、枝毛や抜け毛、切れ毛が少なくなるのです!つまりこのブラシは立派なヘアケア用品なのです!!

残念ながら長い友だちになれず、カツラ君とか発毛君いう友だちを作ると、ん百万円というお金が必要だと言います。となれば、カツラ君と友だちにならないで済むようにしてくれる道具が28,350円で手に入ると思えば安いものだと思います。

私が所有しているのは、歯はもちろん柄の部分も薩摩柘植の品です。柄を他の材質にしたものもあり、それであればもっとお安くなるのですが、やはり銘木薩摩柘植の木目の美しさ、手触り、質感、重さの魅力には抗えずこれを買い求めました。もちろん天然物ですので、同じモノは二つとありません。柄の長さ、厚さ、重み、歯の数によってお値段は変わってきますし、柄の部分人それぞれ使いやすいと感じる形が違うというのも選ぶ楽しみが味わえる製品です。

使い心地が良いことは言うまでもありません。コレ本当に気持ち良いんです。耳の上の当たりを、顔から首にかけて少し力を込めて梳くと、嘘か誠か停滞したリンパが流れると言います。実際、何度か梳くだけで頭が軽くなり、軽い頭痛程度であればこれで治ってしまうくらいですから、本当なんだろうと私は思っています。

手入れも椿油を月1回くらいのペースで綿棒に染みこませて拭くだけですし、普段の手入れは、たこ糸を束ねた専用のブラシクリーナーゴシゴシこすりつけるだけでOKという手間いらずなところも嬉しいところです。歯が取れたり折れたりした場合はちゃんと修理してくれますから将に一生モノです。そして、なんとこのブラシ実用新案登録されているので、こういう製品にありがちな「本当に〜?」という疑念を払拭してくれ、安心して購入できます。

そんな素敵なブラシを作られているのは「喜多つげ製作所」さん。ネット通販もしていらっしゃいますが、全国のデパートで催される物産展にも積極的に出展されていらっしゃいますので、是非ホームページでチェックして、実際に手にとってご覧になられることをオススメします。

最近髪が細くなったような・・・最近枕に抜け毛が・・・とか寂しいことを言う前に、悪いことは言いません。是非このブラシを一度お手に取られてはいかがでしょうか?(別に喜多つげ製作所さんの回し者ではありませんヨ(^^;))

愛着品紹介012ー楓と染井吉野の『封書開封刃』-

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
ペーパーナイフというものがどうも苦手です。理由はペーパーナイフの材質にあります。普通ペーパーナイフと言われるものはステンレスだったり、プラスチックだったり、真鍮やガラス等、どれも冷たく硬質なものだからです。請求書の封筒は別として(^^;) 「暖かい手紙の封を切る」のに、冷たく硬質なものを使うのはどうしても合点がいかず、無論カッターナイフを使うなんて以ての外だと思うので、誠に不本意ながら指でビリビリと開封していました。

ところが、先日「我が意を得たり!」というペーパーナイフと出会いました。千葉県鴨川市の「古工房」さんの作品です。材質は木製。木製のモノはお土産屋さんなどでたまに見かけるものの、大体作りが甘くて手に取る気にもならなかったのですが、「古工房」さんのは思わず、釘付けになりました。家内曰く「瞬間移動した」と言わしめるくらいのスピードで駆け寄っていたそうですww

まず刃から続く土台の木は楓、グリップの部分は染井吉野という贅沢な材質。鋭利な刃からグリップへなだらかに膨らんでいく意匠。二つの異なる木がまるで一本の木から削り出されたかのように見事に一体化している卓越した技。そして一体どうしたら木がこうも気持ち良くなるのかというくらいツルツルで艶やかな触感。どの角度から見てもとても綺麗。使用感は何とも官能的。これぞ暖かな手紙の封を切るのにふさわしい逸品だと思います。

何より素敵だと思ったのは「ペーパーナイフですか?」と聞いた時、「いいえ、封書開封刃と呼んでます」と答えられたこと。「封書開封刃!そうか、ナイフなんて言葉を使うから違和感を感じるのか!」と思わず膝を打ちました。木だと切れ味が心配だと思われるかもしれませんが、全く問題ありません。サクッサクッと気持ち良く切ってくれます。使い込んでいって、切れ味が鈍ったら何度でも研ぎ直してくれる(木でも研ぐで良いのかな?)とのことですから、酷使しても安心です。しかも「これでも立派な刃物ですから」と織物のシースに入れてくれました。このシースも暖かみがあるもので、我が家のリビングテーブルの文具トレイに彩りを与えてくれています。

昨日、記事にした友人からの手紙や恩師からの手紙。デジタル全盛のこの時代に届く「手紙」は、大抵素敵なものでしょう。(請求書や督促状は除くww)届く数はとても少ないかもしれませんが、だからこそ大事にしたいし、大事に扱いたいものだと私は思います。そして大事に扱うには、この封書開封刃以上の開封用の道具はないだろうとツルツルのグリップ部分を撫でながら、一人悦に入っています。

愛着品紹介011-食器3種-

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

日々の食卓で絶対欠かせないのが、ご飯茶碗、汁椀、箸です。おかずのお皿は家内と共用で使いますが、この3つは共用することはないので、自分が心底気に入ったものを使うと決めています。毎日使うものなので、My基準を3つ決めてあります。まず見て美しいこと、次に実用性が高いこと、最後に作った人の顔が見えるものであること。要は100均やスーパーで売られている物は買わないよってことですね(^^;)


今は写真の3種を溺愛しています。


○ご飯茶碗

陶芸家、鈴木りょうこさんの作品。イタリアの陶芸家GIOIA SULASさんに師事し、現在埼玉県内で陶芸活動をされていらっしゃいます。


GIOIA SULASさんはイタリアの陶芸家ですが、日本の陶器に魅せられ、イタリアで独自のオリエンタルな作品を作られています。そこへ日本人である鈴木さんが飛び込み修行を願い出たというのですから、実に興味深い話しです。


鈴木さんの作品とは、昨年末の鬼子母神神社「手作り市」で出会いました。もうね、遠目から作品のオーラが違うんですよ。女性らしい繊細さ、でもがっしりとした力強さ、土の美を引き出した、優しいセンスとでも言うのかなぁ。とにかく本当に美しくて魅力的な茶碗です。


しかもとっても実用的な工夫が施されています。口をつける部分が返し(外側に反ってる)になっているので、とても持ちやすく、また口当たりがとても良いのです。これでお茶漬け食べたら2割増しの旨さは保証できます(笑) ご飯をよそうと、何というか、ふわっとしてる感じがするんですよね。お米が。これがホントに嬉しい!


もうぶっちぎりでオススメな陶芸家さんです!


○汁椀

槐(えんじゅ)の木で作られたお椀です。山形県の幸林工芸さんというお店のもの。槐の木は「延寿」と呼ばれることもある縁起の良い木なのですが、材質が堅く刃物がすぐ切れなくなり、加工するのに大変高度な技術と手間がかかる木です。


そんな槐の木目の美しさを見て楽しめ、使えば丁寧に塗られた漆の何とも心地よいこと!


この椀は足の部分に一仕事施してあって、単に足が丸くなっているのではなく、凹ませてあります。(う~ん伝えづらい)その為、引っかかることなく、スッと椀を持ち上げることができます。この工夫のおかげで、お味噌汁を飲むときなど、軽く安定して持ち上げられ、槐の口当たりと相まって、実に美味しくいただけます。お味噌汁が1.5割増しで旨くなりますww


○箸

お箸は3膳ほど持っていますが、今一番のお気に入りはコイツです。岩手県の込山裕司さんの作品です。


まず材質ですが、北上山系の標高500m以上の山肌にまばらに自生しているオノオレカンバ(斧折:別名アズサミネバリ)というかばのき科の木です。この木もまた、その名の通り、斧が折れてしまうくらい堅い木で、目の詰まった部分は水に沈む程重く、ずっしりしっかりした木だそうです。1mm太くなるのに3年くらいかかると言われる木ゆえ、とても希少性の高い木でもあります。ちなみに別名の梓(アズサ)という木は皇太子殿下のお印でもあります。


お箸の形は五角形。五角形は指と指の間のおさまりが良い形で、とても使いやすい。これきっとお子さんのお箸の持ち方練習用にも打って付けだと思います。5つの角があるので、お豆も滑りにくく、麺類は切れにくく、普通の丸箸などと比べると格段の使いやすさがあります。しかも、名入れをしてもらったので愛着もひとしお。


やはり毎日使うものは(値段の多寡ではなく)見て美しく、使って気持ちの良いものに限ると思います。

ちなみに写真にある箸置きですが、我が家では必ず季節にあった箸置きを使うようにしています(たまたま雪だるまの箸置きが洗ったばかりだったので、紅葉で代用しました)「こんなもん!」って思うでしょ?でも、箸置き一つ使うか使わないかで、食卓の彩りがガラッと変わりますから、決して高い物でもないので一つ使ってみてはいかがでしょうか?

愛着品紹介010-「痒いのは指一本分だ!」〜八重桜の銘木、孫の指〜-

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

昨日の手帳オフでこの製品について話したら妙にウケが良かったので急遽エントリーします!


高齢の頑固職人がおっしゃるには、

「痒いのは指一本分!ピンポイントで掻ければそれで良いんだ。手じゃなくて指なんだよなぁ。欲しいのはさ。」


銘木とは、全国銘木連合会の専務理事を務められた春永剛聖氏によると、「貴重な木材の総称で、具体的には高品質木、大径木をはじめ、奇木、変木、老木、社寺木、由緒木、枯損木、稀木などであって、一般材とは品位を著しく異にし、優美な色彩、光沢を持ち、かつ美麗な木目などを備え、趣のある用材を採材できる原木およびその加工品をいう」と定義しています。僕は、非常に美しい木を何年~数十年も寝かせた良質の木材のことだと思っています。家具や茶道具や丸盆などに使われることが多いものです。実は木というのは切り倒したら即使えるものではありません。切ったあとでも呼吸をしているので、反ったり歪んだり、形が変わるものなのです。ですので、十分に寝かせて乾かして、十分丈夫になってから、加工して初めて製品になるのです。


そんな貴重な銘木(の端材)を使って作られたのが一風変わったこの孫の手です。背中が痒いとき、痒い場所は爪楊枝の先くらいの範囲で感じていることなのに、その周りも掻くから痒みが他にも移って、結局背中全体を掻かねばならなくなるというのが、この職人さんの主張です。なので、この孫の手の先端は約1センチ。孫の手ならぬ『孫の指』なのです!「うそだ~?」って思うでしょ?でもホント。騙されたと思って買って帰ったのですが、確かに痒いところってほんの少しなんですよ。痒みが他に移動することもないので、もんのすごく気持ちいいのです!!





さくらの木です。







コレが先端!







グリップも秀逸!





これ本当に職人さんの遊び心が作らせただけあって絶妙な一品でして、長さといい、形といい、本当に痒いところをピンポイントで掻ける優れもの。先端の丸みも上手いことよ~く削ってあるので、直に皮膚を掻いても痛くないし、手を背中に回した時に無理なく自然に握れるグリップも秀逸です。銘木ですから、木目の表情も実に美しい。美を感じる孫の手なんてそうは無いと思います。ウッチャン・ナンチャンの、ウッチャンが司会している時には必ず何か棒を持っているでしょう?あんな感じでTVを見るときとか、別にどこも痒くないのに、必ずこの孫の指をいじくり回しています。持っていてもさすっていてもな~んか落ち着く不思議な逸品です。


我が家にある孫の指はサクラの木を使ったもの。他にもケヤキとかクリとかもありますが、このサクラはなんと八重桜の銘木というからもう私のツボに入りまくり。また銘木はこれで木が死んでしまったわけでは決してなく、これからもさらに反ったり伸びたり成長していきます。しかも、毎日触っていると手の油分がワックスとなり、艶が出てきて、今以上に丈夫になっていってくれます。まさに一生物です。早く艶が出ないかなぁと毎日撫でているわけですww


しかし、この逸品も、この職人さんがいらっしゃらなくなったら、もう二度と手に入らないものになってしまうと言います。全くもって惜しい!実はこの商品はネットからも買えます。しかし、在庫数に限りがあり、且つ、完全ハンドメイドですし作れる銘木も数に限りがあることから、絶対に大量生産できないものなので、あまりおおっぴらにリンクを張るのはどうかと思うので、欲しい!と思った方がいらっしゃったらTwitterの@kazumotoをフォローしていただいて、DMかメッセージを送ってください。URLをご連絡いたします!ちなみにこの商品これだけの逸品にも関わらず¥1,800です!!安い!(と思いません?)

愛着品紹介009-現代のガンマンへ捧ぐ。TADY&seeds製iPhoneケース"然"-

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
今回はいつもとちょっと違って、つい先日仲間入りした愛着品。激オススメの一品です。

iPhoneを買って一番頭を悩ませたのは「どうやって持ち運ぶか」でした。以前使っていたauの携帯電話はとても小さかったし、ぶっちゃけ無くても困るものではなかったのですが、iPhoneはビジネスシーンでも、プライベートでも常に傍にあって欲しい機器なので、持ち運びをどうするか困りました。

特に問題なのはビジネスシーン。スーツにはあれこれ決まりごとがあります。少なくともシルエットを崩さないようにジャケットのポケットにものを入れないのは基本。パンツも尻ポケットに入れるのはダメ。かといってテーラードのスーツは手が出ないので、ジャケットの内ポケットに工夫をするのも難しい。とまぁ、入れるところはあれど、ほぼ飾りに近いスーツのポケットに収納するには難ありなわけです。しかも私は手ぶら派ですし。

また、会社では(スーツのルール違反ですが)ジャケットを脱ぎ、Yシャツのままのことが多いので、ますます入れておくスペースがなくなります。しかも私のYシャツの多くは胸ポケットはありません。これはちょっとしたこだわりなので。パンツの尻ポケットに入れて、自分のケツ圧でオシャカにするという事例も耳にします(^^;)

残された方法は、ベルトにぶら下げるという方法です。が、これが何故かスーツに合うようなクオリティのものがない!!みんなオヤジ臭いデザインだったり、合皮だったりで安物臭がプンプン。オヤジ臭さ満点なものばかり。何かこう、スーツにも合う、ナイフのシースのような感じの粋なケースはないものかと散々探していた時、yh01さんからTADY&seedsというWebショップを教えていただきました。

ここんちの製品の特徴をまとめると大体以下の通り。
  1. 牛本皮を使っている(断じて合皮ではない)
  2. 熟練の革職人TADYさんが完全受注生産で手作業で製作
  3. 匠の技により仕上げられた製品の堅牢さは折り紙付き
  4. ガンマンの早撃ちに最も適した25度の傾斜のおかげで抜き差しが快適
  5. 特にシリーズ"然"は革そのものの質感を楽しめるシンプルなデザイン
  6. 1個売れるとサハラ砂漠に1本苗木が植えられるという環境面への配慮
  7. 熟練の匠の技を若手クリエーターがWebでPR・販売するという斬新さ
全項目、私のツボに入りまくりです!普段なら実際にモノを見ないとこういうものは買わない私ですが、Webをさっと読んだだけで速攻、注文してました。

そして、1週間ほどして届いたものは「感動を覚える素晴らしい出来栄えの品」でした。ちょっと前にSoftbankがアルマーニデザインのiPhoneカバーを売り出しましたが、あれはきっと使っている内に縫い目がボロってくると思います。理由は角や凸面に縫い目がきてるから。

しかしその点TADYさん作のこのケースは違います。凸面に縫い目はありません。理由は「絞り加工」と呼ばれる特殊な加工で作られているからとのこと(TADYさん談)。この加工方法は非常に手間のかかる加工で且つ非常に高度な加工技術のようです。この絞り加工により柔らかな凸面を楽しめるだけでなく、堅牢さも遥かに向上するわけです。最低でも、iPhoneのバッテリー劣化より先にケースに不具合がでることはないと断言できます!

最初はちょっと硬いんです。でも使った分だけ、日々使い勝手が良くなっていきます。「革が馴染む」とはこのことか!と思わず唸ってしまいました。かといって肝心のiPhoneをホールドする力が弱まることは無く、走ろうがそれこそ逆にしようが、iPhoneをガッチリホールドしてくれます。25度という角度もホントに取り出しやすい。どこにつけていてもスッと取れます。これはちょっとしたマジックだと思います。銃の抜き差しに適した25度は、現代という荒野を生き抜く我々にとっての銃、iPhoneを抜き差しするのにもうってつけというわけです。

さて、肝心のスーツへの相性はどうなのか。正直に言います。"ほぼ"大丈夫です。(一人で着けた姿を取るのは難しいので割愛)私は毎日左斜め後方、パンツの左前ポケットと左尻ポケットの中間あたりに着けています。この辺であればパンツの前ポケットへ手を突っ込むのに邪魔にはなりません。またジャケットのウエストからの広がりに当たる部分なので、トムフォードのスーツのように極端にウエストがシェイプされたスーツでない限り、シルエットへの影響は最小限で済みます。特にサイドベンツのスーツとの相性はなかなか良好。ベントごしにチラッと見えたとしても、この本皮のケースなら「お!」と思われることでしょう。

また、ジャケットを脱いだ姿であってもオッサン臭くなりません!むしろ私の勤め先で一番若い女の子(27歳)は「なんですかそれ!カッコイイ!!」と言ってくれましたし(お兄さんは君の意見を純真な気持ちで素直に聞き入れるよ~。)パートの女性たちにも「随分キレイなケースだねぇ」と言われるくらいなので、女性受けが悪いという男に取って最悪の事態はなさそうです。

また、seeds社の応対にも感動しました。
入金確認が取れた後、届いたメールの文面にはこう有ります。
TADY&seeds立ち上げの背景には、日本社会が中国生産を機軸とする"安さ重視"の流れに向かっている中で、一流の腕を持つ日本の職人が流通上、疎かになっているという、日本のものづくりの根底が揺らいでいる現状に対する問題意識がございます。
seedsでは、本物の腕を持つ職人をWEBコミュニケーションを軸としてPRすることで、日本のものづくりの良さを社会に識ってもらうことを目指しています。
seedsは23歳と24歳の若輩者のチームですが、そんな若いチームだからこそ僕達が日本文化を見つめなおし、日本のものづくりの良さを社会に問う使命に価値があるのではないかと考えております。日本の職人の良さを知っていただくことで、社会が少しでも幸せで心豊かになるよう、今後も努力していく所存です。
素晴らしい!!日本の職人の技術を若いチームがPRするなんて!しかも"知って"欲しいんじゃなくて、"識って"欲しいだなんて!本当に素敵なことだとは思いませんか!?

本当に素敵なチームとTADYさんの確かな腕前。これは激オススメです。

ちなみにこのケースのお手入れ方法をTADYさんにお聞きしたところ、SEIWA社の「保革クリーム」を教えていただき、毎日の手入れは軽くから拭き。週に1回くらい、から拭きの後、このクリームを「薄く」塗ってから、から拭きすればOKとのこと。このメンテを続けることで、革がさらに味わい深く変化していくそうです。将来iPhoneの寸法が変わったり、他に魅力的な端末が出てきたとしても、何かしら用途を探して、愛用し続けたい一品です。

愛着品紹介008-定番三種「鉛筆」「消しゴム」「ナイフ」-

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
※数名の方へ。愛着品のメーカー名を間違えるというあり得ないミスしてごめんなさい。

手を使って考えるときには必ず使う3つの道具があります。
「鉛筆」・「消しゴム」・「ナイフ」です。

鉛筆は三菱鉛筆社のuniシリーズの末弟(一番安い)「uni star」を。消しゴムはトンボ鉛筆社の「MONO消しゴム」を。ナイフは会社では「肥後守」、家では「OPINEL No.8」を使っています。

鉛筆の究極は「6Bの黒さで9Hの硬さで滑らか」なものだそうです。つまり、深みのあるしっかりとした黒色と折れにくい硬い芯を両立させ、且つ滑らかな書き心地のものが究極。言うのは簡単ですが、これが非常に難しいのことなのだそうです。三菱鉛筆社はこの究極を追求し、究極に限りなく近い製品を生み出した数少ない会社の1つです。

また、三菱鉛筆の鉛筆は、どことなく日本の伝統を感じさせつつ高級感を醸し出す、茶色とも臙脂色ともつかない不思議な塗り色をしています。(あれは何色というんだろう?)あの独特の色は、ステッドラーのブルー、ファーバー・カステルのグリーンと並んでも全く遜色ありません。

また、商品名の「uni」というネーミング。英語の“unique”に由来し、フランス語では「滑らかな」という意味も合わせ持つ言葉を選択するというこだわり。少し丸みを帯びた優しい印象のロゴデザインも秀逸です。

黒芯の開発以外は日本屈指の工業デザイナー秋岡芳夫氏が手がけた仕事なのだそうです。工業デザイナーでありながら大量生産、大量消費社会に疑問を呈し続け「暮らしのためのデザイン」を信条とした秋岡氏の作品の中でも、渾身の作品のひとつと言って良いだろうと私は勝手ながら思っています。ファーバー・カステルやステッドラーは雑誌などに良く取り上げられますが、暮らしに完全に溶け込んでいるuniが取り上げられることはあまりありません。これぞ「暮らしのためのデザイン」たる証しだと思います。

uniシリーズと双璧をなす製品としてトンボ鉛筆社のMONOシリーズがあります。甲乙付けがたいのですが、単純に秋岡氏が手がけたという一点に於いて、どちらかと言えば私は三菱鉛筆社を支持しています。

鉛筆では私に選ばれなかったトンボ鉛筆社ですが、消しゴムはトンボ鉛筆社の「MONO消しゴム」が最高だと私は思っています。欧米の消しゴムはたとえ有名メーカーのものであっても、とにかく「消えない」のですが、MONO消しゴムであれば「消える」からです。これは、塩化ビニール製のプラスチック消しゴムというのは日本発の技術であり、欧米では今も昔ながらの天然ゴムを主な素材とする消しゴムが作られているからでしょう。日本製の消しゴムと比べて欧米製の消しゴムが驚くほど消えない(日本語の用法正しいですよね?)のは、素材そのものも製造方法も根本的に違うということです。だから消しゴムは日本のものに限ります。MONO消しゴムはその代表格。何よりMONOというロゴを見た瞬間、消しゴムを連想するまでに「暮らしに溶け込んだデザイン」となっていることはスゴイことです。

最後にナイフ。鉛筆削りでゴリゴリ削るのもラクだし好きなのですが、亡き祖父から私が小学校に入学したときに「鉛筆はこれで削りなさい。刃物が正しく使えない男は男じゃない」と肥後守をもらった影響です。鉛筆はナイフで削るものだと結構長い間思い込んでいました。「クラスのみんなの鉛筆はすっごい綺麗に削れてる。みんなナイフの使い方が上手いんだなぁ。練習しなきゃ!」と思ったものです(^^;)

バタフライナイフの事件が起こるまでは、別に持ち込み禁止でも問題でもなく普通に学校でもナイフで削っていました。メンドクサイなァとも思った頃もあるのですが、シャッシャッっと無心で削っている時間を豊かな時間だといつの頃からか思い始めました。あの削られた木と黒芯の、ほのかな香りも好きで何かホッとするのです。まぁカッコイイこと言っても、鉛筆削りの腕前が特別に良いわけでもないことは写真の通りですけどね(^^;)

祖父からもらった肥後守はもう手元にはありませんが、今は少し大振りなものを会社では使っています。オピネルNo.8は元々はアウトドア用に買ったのですが、「フランスの肥後守」と言われるだけあって、安価なのに使い勝手が良いし、デザインもグリップが木製で、日本の肥後守よりずっと家庭的な印象なので、自宅用にしています。ただし刃の付き方が日本の肥後守とは違うので削るのにコツを要するのが難点です。

文具に関する本は良く見かけますが、パッと見はカッコ良くてもいざとなると使えないものも中にはあるのが残念ながら事実でしょう。その点、ロングセラー製品、定番製品というのは一見地味でも、確実に使えるものしか残らないはずですから、実戦で必ず使える信用のおける製品と言い換えることもできると思います。

どうやら私は「お主、地味だが、なかなかちゃんとやりおるの~」という感じの生活に溶け込んだ製品が大好きのようです(笑)

愛着品紹介007-伊豆の貝殻-

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
人生で初めて、親族以外の人からもらったプレゼントというのを覚えていますか?もしくはいまだに持っていますか?

幸運なことに私の手元には、生まれて初めて女の子からもらったプレゼントがあります。

それが写真の『貝殻』です。

綺麗な小箱の蓋の裏には几帳面に母がこう書いてくれています。

S55.8.20 早川陽子ちゃんからプレゼント
-伊豆の海でひろう。初めて女の子からもらったプレゼント-

昭和55年の誕生日前なので、わずか4歳で女の子からプレゼントをもらったことになります。マセガキですね(笑)父の仕事の関係で引っ越しばかりしていたので、こう書いてくれていても、どこに住んでいた時のことなのかわかりませんし、プレゼントしてくれた早川陽子さんの顔も声も記憶にありません。

しかし、29年経った今も、貝殻はちゃんと貝殻の形のまま、貝殻が割れないようにと敷いてくれたティッシュペーパーも色染みはありますがそのまま、母の書いた鉛筆の文字もそのまま、私の手元に在ります。

幾度となく引っ越しをしているにも関わらず、不思議と無くさず、今も私の手元にあり、小箱の中にちょこんと入っているこの貝殻は私の宝物です。

たまにパカッと箱を開けてみて「どんな子だったんだろうなぁ?」とか「伊豆のどの海でどういう風にプレゼントされたんだろう?」とか、一人であれこれ空想(妄想?)してしまいます。そしてひとしきりそういう空想をした後は、何とも心がぽかぽかしてあったかい気持ちになれます。肩の力が抜けて、ホッとしたなぁと実感できるのです。

子どもの頃の持ち物が手元に残っている人は少ないかもしれませんが、もしランドセルや、上履きや、体操着。道草ついでに拾った石や葉っぱ、少し大きくなってからの交換日記、ラブレター等がもし手元にあれば、たまにで良いので触れてあげることをオススメします。ちょっと触れるだけで、心は過去へフッと旅に出ます。ひとしきりして今に戻ってきた時には、天気の良い日に干した布団を嗅いだときのような、ほんのりあたたかいパワーに満ちた心になっていると思います。

持ち物を大切に。持ち物が帯びている物語を大切に。自分だけのアンティークを持っているというのはとても贅沢で幸せなことだと思います。

愛着品紹介006-家宝、砧窯茶碗と恩師のこと-

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
『恩師』と呼べる人は何人かいらっしゃいますが、私の人生で一番大きな影響を与えたのは中学1年の時の担任の先生です。中学の頃の記憶はもう朧気なものですが、この先生の一言一言は良く覚えています。私たちが先生の最後の教え子だったということも関係しているのかもしれません。私たちを1年間教えたら先生は定年退職されることになっていました。

一番最初の出会いはこうです。入学式が終わり、教室で緊張している私たちに向かい、身長180cmを超える背の高い先生が、教壇からにっこり微笑んでおっしゃったのは「小学生と中学生の違いはなんだと思う?」でした。皆戸惑っていると、笑って「電車の切符が大人料金になるんだよ。つまりもう君たちは大人だということだ」とおっしゃいました。大人への扉がギギっと開いたような気がしたのを良く覚えています。

先生の授業はいつも脱線の連続でした。不思議なことに脱線の内容の方が記憶に残るものです。事実、今思い出してもかなり際どい男女の関係について、怒りや暴力について、音楽や絵画、芸術の大切さについて、正しい行いとは何か。正しい事と悪事の境目はどこか。そして環境問題。あらゆる時代の先生の友人、教え子を例に取り、面白おかしく軽妙洒脱に本当に授業の時間が永遠に続けばいいとさえ思うくらいに楽しく教えて下さいました。理科の先生だったのですが事ある毎におっしゃっていたのは「理科は実用の学問である」でした。これは真実だと今になってようやく理解できるようになりました。しかし、とてもとても不思議なのですが、テスト前にノートを見ると、そこには教科書の内容が綺麗にまとめられているのです。あれだけ脱線して皆を笑わせておいて、どうしてノートができていたのかは今も謎です(笑)

テストも独特でした。「次の惑星直列が起こる日付を記せ」これが中1の1学期の期末テストの問題です。教科書に答えは書いていない、明らかに教育指導要領の枠組みを超えた問題です。さらに夏休みの宿題は「シダ植物を1ヶ月理科室に置いておいて世話しなくても育てられる仕組みを考えること。夏休み前にその仕組みを作り上げて理科室に設置すること」教職の単位を取る過程で(私は中学と高校の教員免許を一応持っています)シダ植物の教育が中学1年に盛り込まれているのは、性教育の側面があることを知りました。ですが、先生はそこから一歩踏み込んで、生命をどうしたら維持できるのか考えさせる問題としたのです。土、光、水、空気など、植物に必要なもの、生命を維持することの大変さ、命の尊さを学びました。そして先生の教師生活最後のテスト問題は「私の顔はどれでしょう?」と書いてあって音楽の先生、現代文の先生、数学の先生、体育の先生、校長先生らの顔写真がズラッと印刷してある中から、先生の顔を選んで丸を付けるという問題でした。テスト中に大笑いしたのはこれが最初で最後です。何たる粋で見事なフィナーレ!

一番私に影響を与えた一言は家庭訪問の時でした。当時1歳なるかならないかの弟がいたのですが、私の話はな〜んにもしないで、弟とばかり遊んでいるのです。母とは弟の育児について何やら話されていました。そして幾つか私の事に対する母からの質問に答えた後、先生はこうおっしゃいました「なぁ、kazumoto。君は将来嫁さんをもらいたいか?」「???ハイ。一応。」「じゃぁ、もっともっと勉強しないとダメだな」「何でですか?」「女性はね、良い遺伝子を持つ相手を伴侶に選ぶ。いいか男が選ぶんじゃない。女性が選ぶんだ。じゃぁ、良い遺伝子って何だ?見た目も重要かもしれない。腕力も一つの魅力だろう。でも、人間の最大の能力は『知力』だ。これが無ければ子孫を守り育てることができないからね。だからモテる為には、伸ばせる能力の中で一番有効な『知力』を伸ばすことが大切だ。つまり勉強することが重要なんだ。モテたいだろ?可愛い彼女が欲しいだろ?可愛い嫁さん欲しいだろ?だったらもっと勉強しなきゃダメだ」そう、私はモテたいが為に、この一言から勉強するようになったのです。なんと不謹慎なアドバイスだと思われるかもしれませんが、今思えば、反抗期で異性を意識し出すこの時期の子どもを勉強するようにさせるにはコレしかないと思えるアドバイスだと思います。この一言が、私の人生を変えた一言です。

先生が退職される時、私が生徒を代表して作文を朗読しました。もうその文章は記憶していませんし残ってもいませんが、当時の私は1ヶ月ほど、どういう言葉で恩師を送り出したら良いか、全力で考え、七転八倒して書き上げました。朗読が終わると、先生はマイクを通して全生徒に、「どうもありがとう」とおっしゃってから、私をぎゅっと抱きしめて「素晴らしい言葉たちだった。どんな境遇にあっても学び続けなさい。本を読み続けなさい」と耳元でおっしゃいました。思えば本を一生の友とするように導いていただいたのも先生でした。

卒業後も先生には節目節目で導いていただきました。

高校時代、先生に呼び出されたことがありました。後で知ったのですが、私のあまりの奇行・悪行ぶりに悩んだ母が、先生の言葉なら耳を貸すだろうとヘルプを求めたのだそうです。多摩川の川縁で、爆発しそうな思いを全て先生にぶつけ、先生には私の若く稚拙な思いに全力で応えていただきました。

大学時代には、論文を書くため、画集を借りに行き、芸術・音楽・美術と文学の関係性などについて語り合ったこともあります。理科の先生なのに、芸術に対して非常に造形の深い先生との話しは本当に知的好奇心を駆り立てる楽しいものでした。この時は「勉強しているじゃないか。前に会った時よりも大きく成長しているのが良く分かって安心した。」とおっしゃっていただきました。

最後に先生とお会いしたのは、家内と結婚する時。結婚前に挨拶・報告をしに行った時です。突然の訪問にも関わらず、最初にお会いしたのと全く変わらない朗らかな笑顔で「おめでとう。な、勉強はしておくモノだろ?良かったなぁ!」とおっしゃっていただきました。

先生から唯一をもらった「モノ」があります。先生が退職金で自宅に作られた窯で焼かれた『砧窯茶碗』という銘の茶椀です。我が家には家宝が2つありますが、その内の一つがこの茶椀です。平成9年のことです。いつもの笑顔で「形見分けだ」と笑って託してくださったこのお椀。このお椀は見る度に教師人生最後の1年を懸けて何を私たちに伝えたかったのか?卒業後、事ある毎に、先生はどういう思いで未熟な私に相対し、言葉をかけてくれたのか?いつでも胸を張って先生にお会いできるような生き方をしているか?と言ったことを無言で問いかけてきます。

私は非常に筆無精ですし、何よりとても先生にお会いできる生き方ができていないことから、結婚の報告後、全く連絡をしていません。が、昨晩、茶碗を見ていたら、何だか『会いに行け』と言われている気がしました。魂を込めて作られたモノには何かしらの力があると言います。「命に関わる問題が起こったら、起こらなくても、いつでもおいで」とおっしゃっていただいた先生。もう80歳を超えられていらっしゃいます。嫌な予感もしなかったわけではありませんが、勇気を振り絞って先ほどお電話をしたところ何ともお元気そうでした。来週お会いしてくる予定です。

報告すること相談すること話したいことが山ほどありますが、純粋にお元気な先生のお顔を拝見できるということにワクワク・ドキドキしています。私の人生の節目に必ず居合わせてくれた先生。最後の教え子が私のような不肖な者で本当に申し訳ないという気持ちの一方で、人と出会うという奇蹟の中でも、心の底から尊敬できる師に出会えたことは特別な奇蹟だと改めて思いました。さて、あと1週間、家宝の茶碗とにらめっこしながら、お会いして何を話そうか良く考えておくことにしようと思います。

愛着品紹介005ー時を柔らかくしてくれる砂時計ー

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
GTDで提唱されているワークフローに「2分ルール」というものがあります。Inboxに入ってきたタスクが行動を起こすべきもので、且つ次に取るべき行動は1つであり、2分以内でできるものなら今やろうというルールです。

基本的に先延ばしをすることに奇妙な罪悪感を感じてしまう性格なので、入ってきたタスクの見極めをせず、「すぐ」取りかかっていたのですが、このルールを学んでからは、「これは何か?」という質問をする時間、段取りを考える時間を設けるようになってきました。

しかし、「これは何か?」を自問し、段取る時間についてGTDでは時間制限を特に設けていません。そのためヘタをすると延々と考えてしまい、「なんでこれは私がやらないといけないのかなぁ?」とか「これ意味のある作業なのかなぁ?」とか妙な方向に思考が行ってしまうことが間々あることに気がつきました。

これはマズイと思い「段取りは最大3分以内」という自分ルールを課して、タイマーを使ってみたのですが、タイマーのデジタル表示がピッピッと減っていくの様子に、すごく急かされている気がしてしまい、そっちがどうしても気になって、考えが上手くまとまらないという欠点があることがわかりました。

「DavidAllenさんはどうやっているのだろう?」と彼のオフィスを撮影した動画を繰り返し見ていて、彼のデスクに砂時計があることを発見しました。「これだ!」と思い、デスクに置いておいてもカッコ良くて、重厚なものではなく、見ていても焦らない愛らしいデザインの砂時計を探したところ、新宿のFrancfrancでこの砂時計を発見しました。計れる時間は丁度3分。カジュアルスタイリッシュをコンセプトとするFrancfrancらしく、この砂時計もスタイリッシュな仕掛けがあります。単に青い砂だけが入っているのではなく、ラメのような砂も入っているので落ちていく砂が時折キラキラと煌めき、見ていてとても綺麗なのです。

次から次へ押し潰さんばかりに降り注ぐタスク。まるでタスクが主人であるかのようです。それを管理する時間も、タイマーも、何というか”鋭利な時間”に感じます。しかし、この煌めく砂の落ちている間は違います。私が主人で、タスクを良く見て吟味する時間。謂わば”柔軟な時間”です。

時間に追い立てられているような気がしたとき、タイマーのカウントダウンが苦痛に思える時、是非、砂時計を使ってみて下さい。この古くからあるアナログな道具ひとつで、ぐっと時間が柔らかく感じられるようになると思います。落ちていく砂に見とれてしまう時があるのが玉に傷ですが(^^;)

財布再考 - 憧れのHENRY BEGUELINがやってきた!

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

あまりにも嬉しいのでエントリー(笑)誕生日プレゼントとして、悩みに悩んだ結果、「財布」をもらいました。

意外にも一部の方には好評をいただいている私のつたない愛着品紹介ですが、そのきっかけを与えてくれた@haTshさんに紹介していただいた松浦弥太郎氏著『日々の100』を読んで、一番ビックリしたのは、イタリアのハンドクラフトレザーメーカー「エンリーベグリン-HENRY BEGUELIN-」の財布が紹介されていたことです。実はエンリーベグリンは、ず〜っと前からいつか手にしたいと思っていた憧れのメーカーだったのです。人型のオミノという刺繍が施されている非常に美しい製品を完全手作業で職人さんが作るメーカーです。

『日々の100』で紹介されている良い財布の条件を少し長くなりますが引用します。
シンプルで、大きくて、上質で、しっかりとしていて、一歩下がったところから眺めてきれいと思うものがいい、と教えてくれた。(中略)お札の向きは必ず揃えること。できれば小銭入れは別に持つこと。ひとつの財布を二年以上使わないこと。(中略)最後に、これこそお金に不自由しない秘訣だ、とつぶやいた。
正直言って財布に頓着しなかった私なのですが、この文章を読んで、「そろそろ良い財布、一歩下がったところから眺めてきれいと思うもの、を持っていても良いのかもしれない。しかも紹介されているのは憧れのエンリーベグリン。偶然にも丁度、今の財布を使い始めて二年経つ。これは「持って良いよ」と時が教えてくれているのではないか?」と超勝手に自分に理由付けすることに成功しちゃいました。

今使っているCOMME ÇA DU MODE MENの財布は私が目指すウルトラライトな装備たる条件を全て満たしているナイスな財布だとは思います。(写真はコチラの記事にあります)しかし良い財布の条件は全く満たしていません。何しろ紙幣は三つ折りにしないと入りませんので、お金を大事にしているとは言えない感じがするのは否めません。そこで、『日々の100』の良い財布の条件を参考に理想の財布像を考え始めました。

長財布や二つ折り財布はウルトラライトを標榜する私としてはNGです。それ以外の選択肢として、要はカード入れに紙幣が入ればOKだよなぁと思いました。電子マネーが浸透しつつある中、今後は電子マネーとクレジットカードとお札で生活できるようになるはず。だったら、小さい小銭入れに鍵をドッキングさせておいてしばらく様子を見ることもできるなぁ。そんなことを考えて色々調べていると、何と!全く同じことを考えている人がいました!!ASCII.jp「T教授の「戦略的衝動買い」」というコーナーでエンリーベグリンのカード財布を紹介しているのです。そうそう、その通り!という内容!これぞ正に天恵!!

そして、今日、ついに辿り着いた結論がコレ。














メインはもちろん「エンリーベグリンのカード財布」これに紙幣数枚+カード5枚(PASMO・運転免許証・クレジットカード・T-CARD・病院のカード)を収納。

小銭入れは探しに探した結果、L.E.D BITESのB-9086に決定!










写真の通り、究極的に小さな小銭入れです。コイン10枚が限界(笑)でも生意気にコードバン革で作られてます。お見事!これにセキュリティーキーと家の鍵をぶら下げました。









エンリーベグリンは言うに及ばず、L.E.D BITESの小銭入れも一歩下がったところから見ても、コードバンが綺麗で小さいくせになかなか味があって可愛い。毎日が今までより少し気分良く過ごせそうです!

愛着品紹介004-家具のようなオーディオ Tivoli Audio / Model One Radio-

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
ラジオを聞くようになったのはいつ頃だろう?ずっと考えているのですが、いつも何かしら音楽が流れている家だったので、だいぶ小さい頃であることは間違いないと思います。

小学校5年生あたりで、随分ませた音楽を聴いていました。同級生が当時のアイドルについて、どうのこうのという話しをしているのを横目に、エレクトーンを習っていたこともあり、クラシック音楽を始め、Michael Jackson、THE BEATLES、RollingStones、Prince、YMO、Ryuichi Sakamoto、等々を聞いて、一人悦に入っていたことを覚えていますし、当時は洋楽(って今も言うのかな?)をラジオで聞くことがカッコイイことだと思っていました。

当然、オーディオ機器にもハマりました。振り返ってみると、SONY、ONKYO、DENONあたりを持っていました。JBLのスピーカーとマークレビンソンのアンプなんて組み合わせに(今も)憧れはしたものの、まぁ、当然手が出ませんよね(笑)

結婚したときに持っていたのはSONYのオーディオセットでした。結構良い音をさせていたのですが、いかんせんインテリアにあわないのです。ステレオの臨場感をじっくり味わうことも少なくなりました。家内と二人で居るときの旋律のメインは「家内との会話」であって、その他の音は所詮BGMでしかないのです。となれば、部屋に合うスタイルで、そこそこ良い音が鳴り、気分良く手軽に使えるものを探そうということになりました。

これまたあれこれ探しに歩いたのですが、最終的に行き着いたのが、このTivoli Audio/Model One Radioでした。この何とも言えないレトロなスタイリング。ハンド・メイドの木製キャビネットの温もり。バスレフ型3インチスピーカーを1発搭載しているだけ(当然モノラル)大小2つのダイヤルと、スイッチが1つだけの簡素な作り。でも、ちゃちなステレオスピーカーよりも断然綺麗な音を流してくれます。スピーカー、アンプ、チューナーを1つにまとめただけの妙な主張をしないコンパクトなデザインなので、家の何処でも置けます。 「これだ!」と気に入って即決しました。

使ってみると、このオーディオは長時間聴いていても疲れないんです。これは驚きでした。iPodをつないで(AUX端子はあります)聞いていても、人の声がとっても聞き取りやすい。おそらく響きのバランスが良いのでしょう。さらに受信感度が超高性能。こんな波長で放送してたんだ!?と驚くようなものも拾ってくれます。(まぁPerfumeのようなサウンドは全く向いていませんけどね(^^;))

つまみをクイっとひねるだけですぐ豊かな音を聞かせてくれる、この小さな名器は、毎日我が家の会話のうしろで心地よい癒しの音を鳴らし続けてくれています。

愛着品紹介003-"初心"のモンブランー

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク

新品のモンブランを携え、上司に報告すると、にやっと笑ってお客様へ電話をし、即時同行訪問することになりました。お客様の元へ着くと、挨拶もそこそこに上司はこう言いました「いただいた宿題の答えをお持ちしました。彼なりに真剣になって探した回答です」上司に促されるまま、真新しいモンブランをお客様の前に置くと、お客様は、にっこりと実に嬉しそうな笑顔をして、「契約書を持ってきているかい?」と言い、その場でそのモンブランでサインをしてくれました。そしてこう続けました。

「うん。実に気持ちの良い買い物ができたよ。どうもありがとう。」

きっと狐につままれたような顔をしていたであろう私をじっと見据えて、お客様はこう言いました。

「仕事のクライマックスである契約の時に使われる道具は今も昔も筆記具だ。ココが疎かでは画竜点晴を欠くことになる。特に大きな仕事ではね。最後のサインをする道具はお客の背中を押してくれる良い物でないといけないんだ。このペンはとても良い選択だと思う。何処に出しても恥ずかしくないペンだ。きっと今の君には高価な買い物だったろう。けれど一所懸命に探して辿り着いた本物というのは凄くてね、自信にもなるし、いざというとき自分を支えてくれる。そして本物は手入れを怠らなければ何年でも使える。君の仕事の大事な大事なパートナーを最初に使えたことは光栄だし、本当に嬉しいよ。」

帰り道に上司にたまらず聞きました。

「何故、ボールペンだったんですか?」
「万年筆が良いと思ったか?ボールペンを出してダメと言われたんだ。その敵はボールペンで取らないとなぁ(笑)何より万年筆というのは扱いがとても難しい。若い身で持てる道具じゃない。お前の歳で持っていたらそれは逆に野暮というものだ。だからボールペンという条件にしたんだ。万年筆を持つにふさわしい歳になったら、きっと持って良いよと時が教えてくれる。」

続けて、上司はこう言いました。

「ありがたいだろう?お客様というのは。買ってくれるだけでもありがたいのに、お礼まで言ってくれて、しかも自分を成長させてくれるんだ。そのペンは大切にしなさい。仕事で困難にあたったとき、そのペンを出して、今のお客様とのやり取りをよ〜く思い出しなさい。今の場面が、やり取りが、そのペンのデビュー戦が、お前の”初心”だ。そこに立ち会えて俺も嬉しかったよ。」

以来、このモンブランは私の中では特別な筆記具です。普段使いにはしていません。「さぁここからだ!」という仕事の始まりの時、「ここぞ!」というクライマックスの時に使う特別なパートナーとして、そして仕事で迷ったとき”初心”を思い出すタイムマシーンとして、今も全力で私を支えてくれています。時はまだ万年筆を持って良いとは言いません。しかし時が良いと言ったとしてもこのモンブランは私の特別なパートナーであり続けるでしょう。

愛着品紹介002-桜の靴べら-

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
両親に感謝していることは何?と問われたら、私はこう答えます。「子供の時分にとても良いお店に連れて行ってもらえたことです。」と。

デパートのレストランとかではありません。ホテルの最上階にあるお店だったり、赤坂や神楽坂の裏道をちょいと入ったところにある料亭だったり、市ヶ谷あたりの裏道に慎ましやかにある小料理屋さんだったり、カウンターにネタが並んでいない料金表もないお寿司屋さんといった、所謂一流のお店です。

子供であってもちゃんとジャケットを羽織り、革紐靴を履き、よそ行きの格好でお店に行くというのがとても好きでした。またそういった一流のお店は子供だからといってサービスの質や品を落とすようなことは絶対にせず、一人前の大人の男として扱ってもらえるので毎回、何とも誇らしい気持ちになったことを覚えています。

私は特に小料理屋さんや、料亭が好きで、なかでもお店を失礼する時のやり取りが大好きでした。上がり框に腰を下ろし、革の紐靴に足を入れようとすると、女将さんや女中さん、下足番の方が絶妙なタイミングで「どうぞ」と靴べらを渡してくれるのです。歴史のあるお店の靴べらは決まって長くてガッシリしていて、黒光りした木製で、とても滑らかにスルっと靴に足を納めてくれます。長年使い込まれた靴べらのもたらす、この官能的と言っても良い感触は筆舌に尽くしがたいと今でも私は思っています。

そんな経験があったので、「自分の家の玄関には素敵な靴べらを置きたい」と密かに決めていました。現在の住まいを購入した際、家内にその旨を話すと、「どうせなら絵になる靴べらを探しましょう」と言ってくれ、靴べら探しが始まりました。

方々を探し回った結果、茗荷谷にある木工屋さんでこの靴べらと出会いました。ひとりの職人さんの手作りであり、台座の球が愛らしく見た目に美しいこと、持ち手部分の作りも最小限で美しく艶めいていること、何より靴べらとしての滑らかな使い心地。使っている木は何ですか?と聞いたところ「桜」だと言います。毎朝・毎晩、自宅の玄関で見送ってくれ、お帰りと言ってくれるものが「桜」というのは、とっても贅沢なことに思えて即決しました。

以来、あくまでも控えめにいつもそこに居てくれて、特に帰宅した際は、毎回「ああ、いい景色だな」と日々の生活の中で一服の安らぎを味わわせてくれる、殺風景な我が家の玄関の"華”として毎日活躍してくれています。写真の通り、ウチの愛犬も結構好きみたいです(笑)

愛着品紹介001-OMEGA Seamaster PROFESSIONAL-

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
11月5日は34歳(まだギリギリ四捨五入しても30歳代!)の誕生日だったのですが、@haTsh さんからとても素敵な本を紹介してもらいました。
この本に掲載されている品物は全て松浦氏の私物で、その私物のフォトに随筆が添えられています。品物に対する愛情、愛着がひしひしと伝わってくる名著でした。@haTshさん、素敵な誕生日プレゼント(?)をありがとうございます。

この本に触発されて、お粗末ながらも私の日々の愛着品を(不定期で)綴ってみるのも面白いかもしれないと思い、そんなものにも手を伸ばしてみることにしました。身の回りのモノを見直す契機になるかもしれませんしね。

【OMEGA Seamaster PROFESSIONAL】
最初に紹介するのは、ONの日のマストアイテム腕時計です。新卒で採用された会社で最初のボーナスをいただいた時に、祖父・祖母へちょっとしたプレゼントを持っていきました。そこの際、今は亡き祖父にこう聞かれました。
「Kazumotoはどういう人生を歩みたいんだい?お金持ちの人生を過ごしたいのか?それとも豊かな人生を過ごしたいのか?」
「うーん、どっちも捨てがたいよねぇ」
「どちらを選ぶかによって決まるけれど、お金持ちになりたいなら、とても良い財布を買いなさい。豊かな人生を選ぶのであれば、とても良い腕時計を買いなさい。」

何でかなぁと思いつつ尊敬する祖父の助言だったので、財布売り場、腕時計売り場を歩き、どっちにしようかしばらく迷っていました。後年、ひょんなことから、私の中の理想の男性像のひとつであるJames Bond(当時はピアーズ・ブロズナン)が映画の中で身につけている時計がOMEGA社のSeamasterであることを知り、ミーハーな私は、当時では明らかに背伸びしすぎで、とても高価なこの時計を大奮発して買うことに決めました。

その後、ペーペーの身でありながらも、この腕時計を見た年長のお客様は一様にこの時計に興味を示され、「祖父からアドバイスを受けたので」と答えると、皆さん大きく頷かれました。色々時計に関する蘊蓄を聞くことができたのも良い経験です。

その中でも、一人忘れられないお言葉をいただいた方がいらっしゃいます。某企業の社長さんなのですが。「非常に含蓄のある助言だと思うね。それはね、豊かな人生を送る秘訣は時間を大切にすることが肝要だからなんだよ。逆に真のお金持ちというものは、財布を大事にするというのもまた本当だよ。お金は大事に扱われたがるからね。でも財布ではなく時計を選んだということは君の今後の重要な指針になるはずだから、その時計を見るたびお祖父様がおっしゃられた意味を思い出して良く考えるようにしなさい。」

最初の選択を誤ったからか、お金持ちにはなれていませんが、時間を大切にした結果、若干谷はありましたが、夫婦円満で、たくさん笑っていられる豊かな人生を過ごせているのは、この時計を選択したおかげなのかなと思います。代替わりしたJames Bond(ダニエル・クレイグ)も、OMEGAのSeamaster−デザインは少し変わりましたが−を愛用していることからも、この時計はどんな場で身につけていても恥ずかしくない、私が所有している中では数少ない"本物"のひとつだと、祖父の助言に感謝しつつ、密かに誇りに思っています。