シルヴァンテイル
【しるゔぁんている】
ジャンル
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アクションRPG
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対応機種
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ゲームギア
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メディア
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4MbitROMカートリッジ
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発売元
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セガ・エンタープライゼス
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開発元
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ネクステック
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発売日
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1995年1月27日
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定価
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5,500円(税抜)
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:A(全年齢対象) ※ゲームギアミクロ収録版
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備考
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ゲームギアミクロブルーに収録
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判定
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良作
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ポイント
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獣人への転身能力を駆使して冒険に挑め
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概要
ゲームギア後期に発売された、トップビュー形式のオリジナルアクションRPG。
魔の手に堕ちた異世界「シルヴァラント」を救うため、秘宝「シード」を携えた少年ゼッツの冒険が始まる。
特徴
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「シード」を駆使したアクションシステム
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主人公ゼッツの持つ「シード」は、冒険を進める過程で様々な能力を得ることが出来る。
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シードの能力一覧
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通常形態…通常時のシードは剣の形を取る。この形態では剣を振って攻撃を行う他、特定のオブジェクトを押す、引くことが可能。
「雫」の力を得ると、剣を使った新しいアクションが増える。
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タートル…「タートルの石板」によってシードが堅牢な甲羅に変化。鈍重なため移動能力が半減するが、甲羅による防御中はほぼ全ての攻撃を受け付けなくなる。
「橙の雫」の力で、防御態勢のまま前方に体当たり攻撃を行う「スーパーダッシュ」が使えるようになる。
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モール…「モールの石板」によってシードが鋭い爪に変化。爪攻撃によって特定の障害物を破壊する事が出来る。
「黄色の雫」により、その場で回転して地面を掘り進む「スピンドリル」が使えるようになる。
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マウス…「マウスの石板」によって身体が縮み、移動能力が大幅に上昇する他、狭い場所を通れるなどの恩恵を得られる。
「緑の雫」の力で、金属の物体を引き寄せたり、逆に自身が物体に吸い付くことが出来る「マグネットパワー」が使えるようになる。
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マーマン…「マーマンの石板」によって人魚の姿になり、水面を泳ぐことが出来るようになる。
「青の雫」を得ることで、特定の場所から水中深くに潜ることが出来るようになる。
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バード…「バードの石板」で転身できる形態。攻撃手段を持たない代わりに、空中を飛んでモンスターを回避することが出来る。
唯一ストーリー進行に絡まない能力で、取得方法もシークレット扱いとなっている。
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冒険の舞台「シルヴァラント」
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シルヴァラントは3つの国(ステージ)で構成されており、いくつものダンジョンが点在している。
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謎の声の導きに従い、ダンジョンに眠る6つの「雫」を集めることが、主人公ゼッツの目下の目的となる。
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フィールドやダンジョンには様々な仕掛けがあり、シードに宿る能力やイベントアイテムを活用して乗り越えて行く。
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ステージの大ボスにあたる敵勢力の幹部を撃退すると、国を渡るためのアイテム「カギ」が手に入り、次のステージに進めるようになる。
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各地に散らばるアイテムを集めて主人公を強化
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アクションRPGと銘打っているが、本作に経験値や通貨の要素は無く、主人公の強化は全て道中で手に入れるアイテムで行う。
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モンスターを倒すと、回復アイテムである「木の実」が手に入ることがある(その場で効果が現れるタイプと、アイテムにストックされ、任意のタイミングで使用するタイプが存在)。
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「石板」と「雫」を集めることで、シードに新たな形態やアクションが加わる。詳細は上述。
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各地に散らばる「黄色い木の実」を取るとライフの上限がほんの少し増加する。
特定の宝箱から発見する他、とあるギミックで得られることが出来、一種のコレクター要素の一面を持つ。
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その他、冒険を手助けする様々なイベントアイテムが存在。本作のアイテムはメニューから「装備」することで効果を発揮する。
装備したアイテムはゲーム画面のUI枠で確認可能。
評価点
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新たなアクションやアイテムで道を切り開くカタルシス
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様々なアクションやアイテムを使い分けながら仕掛けや障害物を攻略し、行動範囲を広げていくという、アクションRPGならではの達成感が味わえる。
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『ゼルダの伝説』と似たタイプのゲームではあるが、シードの転身能力をストーリーに絡めることで、独自色を打ち出すことに成功している。
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シナリオ面だけでなく、通常形態一辺倒では苦戦するようなボスに対して、他の形態による意外な打開策を見出すといった、戦術的な遊びも存在する。
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3つの国に点在するダンジョンは、単純なスイッチ操作から頭を使うパズル要素まで、仕掛けのバリエーションが豊富。
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新たな障害物が登場する場所には、ほぼ必ずヒントがちりばめられており、謎解きそのものの難易度は高くはない(一部を除く、以下問題点に記載)。
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中盤以降は上記に加え、ストーリー進行に応じたヒントを教えてくれるNPCも登場する。
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ユーザーフレンドリーなインターフェイス
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メニュー画面はシンプルなアイコンでまとめられており、直感的で分かりやすい。
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イベント中やボス戦を除けば、いつでもどこでもセーブが可能。またこのタイプで懸念される「詰み」が発生するシチュエーションは基本的に存在しない。
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マップ画面には目的となる「雫」の位置がおおよその形で示されており、目標を認識しやすくなっている。
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シンプルな操作で主人公の多彩なアクションが楽しめる
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「2ボタン=攻撃、1ボタン=各形態の特有アクション」が基本的な操作内容となっている。
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プレイヤーの操作に対して、軽快なアクションとコミカルなアニメーションで応えてくれるので、操作していて心地よい。
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通常形態で操作せず一定時間放置していると、待機アニメーションを取るなど、携帯機ながら芸が細かい作りとなっている。
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幻想的な世界観と、それらを彩る高品質なグラフィック・サウンド
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森を基調としたフィールドを始め、ダンジョン、砂漠、果ては水中などの多彩に渡る舞台は、ファンタジー世界を冒険する高揚感を与えてくれる。
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バリエーション豊かなロケーションを適度にデフォルメしつつも、色鮮やかに細部まで描ききったグラフィックは、ゲームギアソフトの中でも屈指のクオリティである。
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オープニングで流れるメインテーマをはじめとした、美しいフレーズから成るBGMの数々は、いずれもゲームの雰囲気に沿った良曲揃いとの呼び声が高い。
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ダンジョンのほぼ全てに専用BGMが用意されているなど、バリエーションも豊かで聴く者を飽きさせない作り。
賛否両論点
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主人公の攻撃性能の低さ
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主人公は近接攻撃のリーチが短い上に、遠隔攻撃の手段を一切持っておらず、攻撃するには敵と接触する(=ダメージを受ける)ギリギリまで接近する必要がある。
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中盤からは耐久力や攻撃力の高い敵が増える一方、主人公の攻撃力を上げる手段が一切ないことから、戦闘をすること自体のリスクが増大する傾向にある。
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とは言え、敵の攻撃が必要以上に苛烈などといった理不尽な要素はなく、また経験値や通貨などのいわゆる「稼ぎ」の概念が存在しないため、意図的なゲームデザインと言えるかも知れない。
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半ば隠し要素として、敵からのダメージを半減させることの出来るアイテムが存在する。
敵の行動をある程度把握すれば、取らなくてもクリアに支障は無い程度の難易度なので、救済措置に近い立ち位置ではあるが。
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使用個所が限定的な能力の存在
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シードの力はバード形態を除いた全ての能力がゲーム攻略に不可欠なものだが、実際の出番が少ない不遇な能力がいくつか存在する。
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多くの獣人形態が持つ攻撃手段も、通常形態の剣攻撃の性能には及ばないため、ギミック対処以上の用を為さないことが多い。
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特にマーマンの水中に潜る能力は、実質2つ目の国の最後のダンジョンに向かうという、ごく限定的な場面でしか使用する機会がない。
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移動手段が徒歩のみ
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一度行った場所に瞬時に移動できるような、いわゆるファストトラベル要素は存在しない。
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ショートカットもないため、寄り道要素の目的で序盤のステージに戻りたい時などは、少々移動が面倒なことになる。
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順当にストーリーを追うだけならば、前のステージに戻る用事は原則ないので、問題点としては挙げられにくい。
問題点
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終盤のとあるダンジョンの攻略方法がノーヒントかつ難解
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ゲーム終盤のネタバレ
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終盤のダンジョン「封印された洞窟」に巣食うボスの一体「ゴル」の部屋へ行く手段が、そこまで普通にプレイしているだけでは、到底思い至らない方法となっている。
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その方法とは、ボス部屋の真上に位置する飛び降り地点からタートルの形態で落下することにより、その重量と衝撃で天井にあたる床が抜け、部屋に入ることが出来るというもの。
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他の場面で使用出来るような有用なアクションではない上、ステージ上にヒントとなる目印が一切存在しないため、多くのプレイヤーがあらゆる手段を総当たりする羽目になったと思われる。
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先述のヒントを教えてくれるNPCも、この箇所のヒントについては一切言及しない。
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終盤シナリオのボリューム不足感
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ゲーム終盤からクライマックスに向けて、いよいよストーリーが急展開を見せるが、その見せ方や演出があっさりとしている。
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明かされる主人公の秘密、ライバルとの協力など、王道のストーリー展開なのだが、敵、味方ともにキャラクター描写の掘り下げが浅く、設定についても説明不足な点が目立つ。
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残された疑問の一部
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主人公をライバル視する少年「ガルシア」について。取扱説明書では簡単に紹介されているものの、ゲーム中では彼の素性について一切明かされない。加えて終盤で主人公を手助けした後は一言もセリフを発しないまま、物語からフェードアウトしてしまう。
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敵勢力がシルヴァラントを襲った理由。プリズムを奪い、シルヴァラントを破滅に導くのが目的ということは判明しているが、彼らの由来や動機は最後まで謎のままである。
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最後の国に存在するダンジョンがたったの2つ、かつ比較的シンプルな構造である点も、物足りなさに拍車を掛けている。
総評
スケールこそ大作ゲームには及ばないかも知れないが、独自のシステムでアクセントを加えつつも、堅実な作りのアクションパズル要素。
それらを取り巻く良質な素材の数々との相乗効果もあいまって、高い完成度から多くのプレイヤーを魅了した。
アクションRPGの醍醐味を携帯機のスペックに上手く落としこんだ快作であり、ゲームギア後期を代表する名作として本作を推す声は多い。
余談
根強い人気を持ちながら、長らく移植の機会に恵まれなかった本作だったが、2020年10月発売のゲームギアミクロブルーに収録されるという異色の形で、再び日の目を見ることとなった。
最終更新:2020年12月01日 17:34